物語の始まり……?
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「勇者を探すため……だって?」
「ええ。あたしの故意じゃないけどね」
故意じゃない? どういうことなんだ? 勇者なんて探す必要がある奴ほど、なにかを企んでいるにちがいない。
もしくは、本当に必要な時がある、かだ。
「勇者がなぜ必要なんだ」
「そう言うと思ったわ」
「…………」
冷酷な目。アルファの深い赤の目が、俺を取り込むのではないか。そう思えるほど、冷酷な目が俺を縛り上げる。
「あたしがそこまで‘素性’をあなたに伝える必要はないはずよ」
……たしかに。たとえ、『容姿』『天空界』『創造人』などのワードが、アルファの口から出たとしても、そのすべてを語る・説明する義務なんてない。
むしろ、アルファからしたら隠すべき情報だったかもしれない。
すこし、入り込みすぎたようだ……
「それに、マナーも守ってないじゃない」
「……マナー?」
「‘自己紹介’よ。あなたの事、まだ何もしらないわ。あたしがしたんだから、あなたもしなさいよね」
「そ、そうだったな」
少しも俺らしくない態度だった。いきなり「私をかくまってくれない……?」なんて言われたんだ、無理がないのは分かってる。だけど、自分を見失っていたことに変わりないんだ。
少し反省を込めるつもりで、俺は自己紹介を始める。
「俺の名前は、筑波色。この学校の一年C組だ」
「シキ……いい名前ね!」
アルファは、なぜか辛そうな目をした。一瞬だけ。
「ところで、アルファ。最初に言ってた『私をかくまってくれない……?』ってのは一体どういう意味ーー」
「ーーやっぱりいいわ。その件については、もうあんたに頼らない」
……さっきまでのお調子者キャラはどこにいった? と、疑いたくなるほど、今のアルファは十分前のアルファではなかった。
なんていうか……、‘何かを諦めた’感じが伝わってくる。
「……そうか」
「ということで、シキ。またどこかで会いましょう」
そう言って、アルファは身を包み込んでいたやや派手なコートを翻し、俺の後ろーー出口に向かって歩き始めた。
「どこに行くんだ?」
「……勇者を探しに行くの」
……王道のファンタジー漫画なら、ここで主人公が摩訶不思議な世界へと、ヒロインの手によって誘われるはず。
なのに、俺は勇者に抜擢されなかった……
ーーという事は。
始まっていなかったのかーー
俺が主人公に選ばれ、とんだ世界へと連れていかれ、変なものと戦ったり、様々なヒロインと出会ったり。
ーーそれは、
ーー始まっていなかったのか?
「なんだよ……それ……」
「……?」
「全部、俺には関係なかったのか……」
自分でも思う。俺は幻想を見ていたーーいや、幻想に‘魅されていた’
この次はどうしようか……