物語の始まり……? 完
るんるんりる☆
「なんだ……よ」
「ううん。なんでもない」
アルファは首を左右にふり、風でなびいた髪を左手で抑えた。
ーーふと。すこし女性の魅力というものが分かったような気がした……
「…………」
「…………」
しばしの沈黙。静かになった公園は、すっかり夜を迎えていた。
俺はその静けさに、なにかを思い出したようなーー昔の自分が居た場所を、思い出したような気がした。
その沈黙が、懐かしく思えた。
「あの、さ……アルファ」
気がつけば、俺はアルファに話かけていた。
「ん? どうしたの?」
少し驚いたような顔でこっちを向くアルファは、俺の『何か』と一致した。その何か、が分からない以上、俺がその正体を知るのは先のことだが。
「俺、さ……お前が言ったことのほとんどを、理解できないんだ」
「ええ。それは承知していたわ。本当は、シキに言っても意味ないんだけどね」
「でもーーそれでも、俺は……」
光ったーー
頭の中で、光った。光を感じた。熱さでも冷たさでもない、ただの光を感じた。
俺はその光に、背中を押された。「言ってやれ」という言葉とともに。
「俺はーーお前をこれ以上心配したくない……!!」
自分でも分かるほどの剣幕で、アルファに言い放った。
それを聞いたアルファは、目を見開き口を開けたままで硬直した。
少し間をあけてから、俺は言葉を続けた。
「お前を心配するくらいなら、俺が……なってやるよ……!!」
ーーーーやっぱりそうだ。俺は望んでいた。
俺が主人公に選ばれ、物語が始まるんだ、と。望んでいた。
ーー前に観たアニメの作中で、俺とほぼ一緒の立場の主人公が居た。
その主人公は、自らの生活を変えたくて、異世界へ行くことを決めたんだ。
ただし、それはあくまで画面上の世界。ストーリーというものがある。
ストーリーに沿って、主人公やヒロインは動き、物語を進めていく。
それがそのアニメだった。
だけど、俺は違う。俺は一度、その物語を諦めた。ストーリーに沿っていくこともなかった。俺は、主人公じゃなかった……!
だがそれらは、ただ怖かっただけ。俺が物語の主人公に選ばれ、アニメのような世界が拡がりそうで怖かっただけ。
ーーーー今は違う。
そんなことはどうでもいい。
ーーーーーーーーーーただ俺は……! 俺は生きたい道を選べばいい!!
「俺が…………!!」
まだ信じていなかった。アルファの言ったことのほとんどを。だが、そんなことはどうだっていい。
ーーとある物語の主人公は、なんの力も持っていないただの高校生だった。
その高校生は、ある日、謎の美少女と出会ったーー
ーーとある物語の主人公は、何も考えず、ただ生きたい道を選んだ。
その高校生は、ある日の夜、近所の公園で謎の美少女にこう叫んだーー
「俺が、『勇者』になってやる」
第二幕 物語の始まり……?
はこれで完結です!




