物語の始まり……?
そろそろ冬休みに入る時期ですね~
「天空界が創られたとき、地上人は自由に行き来できたわ。それこそ、同じ人間としてとうぜんの行動だったからね」
天空界は地上人でも行けたのか。俺には見えない異界の地なのに。
「だったらどうして今、俺は天空界へ行けなーーいや、それどころか、どうして見えない?」
「……イヴの決断よ。あなた達が、いまこうして生きているのはそのイヴの決断のおかげなの。限りなく、ね」
「イヴの決断……?」
イヴが、天空界と地上界の調和を担っていて……
でも、今の俺たちは天空界へ行けない……それが、イヴの決断で決まったことなのか……
「イヴの調和は、少しづつ乱れていったの。その乱れに気づいたあたしたち‘創造人’は、なんとかしてイヴの調和を手伝おうとした……」
そこでアルファは立ち上がり、金色に輝く月の光を手で遮るようにして、手のひらを頭上に挙げた。
「だけど。それはできなかった」
「…………」
俺は。俺は、その話を聞くことしかできなかった。ただでさえ、この状況が主観を狂わせているのに、その話を理解することなんて到底できなかった。
「イヴの調和には、不思議な力が必要だった。あたしたちには、その力がなかったの」
「……力?」
「ええ。筋肉とか権力とかの類じゃないわ。不思議な‘チカラ’なの」
「不思議な……力……」
「……その力は、『月』が深く関係していて、あたしたちのような『人』である以上、その力は絶対に手に入らないーーそれが、‘月桂力’」
月桂力。 月桂、という言葉は聞いたことがある。中国に伝わる伝説で、月に生える木があるというものがあった。それを『月桂』と、呼んだそうだ。
その力……ともなれば、不思議な力があってもおかしくはないだろうな。
「月桂力……それはすごそうだな……」
一度でもそんな力を持ってみたいと思った。
「すごい、とかのレベルじゃないわ。月桂力は、無限の力・可能性を秘めてる。イヴは、その力で天空界と地上界の対立を調和してきた」
「共存の対立か……」
「そう。天空界は地上界を支配しようとして、地上界は天空界を失くそうとした。それが対立という形となって、今もそれが続いているの」
今もーー続いている……?
俺の不安をより煽るかのようにアルファは言葉を続けた
「天空界は、自分たちの領土を拡げ、天空界に住むさまざまな種類の種族の繁栄をたくらんで地上界を支配しようとしている。地上界はーー‘今’の地上界は、なんの抵抗もなくて、その分イヴが調和しようとしているの。それが負担となってーー」
「ーーちょっ! 待て! なんでそんな大事な話が後から出てくるんだ!?」
「……あなたの理解力にかけて、見込んだ判断よ」
俺の理解力を……見込んだ……? ということは……
「俺に……何を見込んだ……?」
アルファは黙った。大きな胸の下で腕をくみ、ひたすら黙った。
「あたしはーー」
そこでアルファは、クルッとこちらに向き直り。俺の目を見る。
「…………」
………………何も、言わなかった。
まっまだだぁぁああああああああああああああああ!!!




