物語の始まり……?
珍しく、お昼の投稿です。
「あんたどうしたの? そんな哀しそうな顔して」
「哀しそうな顔……?」
俺はそんな顔をしているのか? だとしても、なぜそんな顔を……する必要が……
「なにかあたし、した?」
「……いや、そういうわけじゃない……と思う」
そう信じたい。限りなく、俺が悪いんだ。
「だったら自分で解決してちょうだいね。これ以上、仕事を増やしたくないの」
「ああ……」
俺は、文句ありげな態度でアルファをあしらった。その態度に気づいたのか、アルファはさっそうと、美術室から出て行く。
……ってか、あの格好じゃこの学校から抜け出せないぞ。
「……俺は」
裏切られたような気がした。 急に現れた美少女に「かくまってくれない?」と言われ、誰も信じなかった説を事実に変えるような衝撃発言もあった。
そのほか、『地上界』『天空界』『勇者を探す』なんて意味深なことばっか言われた。
それらを、俺は信じた。俺が選ばれたと思ったからだ。物語の主人公ーー『勇者』に。
「そういえば……『責任』ってなんだったんだ……」
アルファが俺に倒れこんできて、思わず胸を触っちまったけど……
あの時言ってた、「責任とってもらうからね……!」は、なんだったんだ?
ーーまさか。
ーー俺を勇者にするつもりだったんじゃ……
「それは……ない……か」
もしそうだったら、アルファはどこかへ行ったりしない。
俺に責任をとってもらうことが、アルファの言っていたことだ。
本当の目的が、あるんだ……アルファには……
「…………」
何も聞こえない静かな空間。かすかなアクリル絵の具の匂いが俺の鼻をくすぐる。
俺は焦燥感にひたっていた。『俺』という人間を、アルファの言っていた『勇者』と照らし合わせて、自分を主人公に見立てていた。それが、焦燥感を生み出した。
俺はいつもそうだった。自分の不利なところを認めなかった。どうしても、それを受け入れられなかったから……
俺の右腕はーー幼い頃の報い。俺が『あんな』ことをしたんだ、神はそれを見逃していなかったんだろう。
「…………」
あせる。あせる。あせる。俺は…… 俺は……
ーー俺は、還さなければならないのか?
「……還す……のか?」
ーーアルファにもらった何かを、還さなければならないような気がした。
何かを押し付けられたような気がした。
アルファは、俺になにかを押し付けていったような気がした。
「……要らない」
こんな『変な気持ち』は、要らない。必要ない。
「……還しにいくぞ。この……」
俺は、冬の寒さじゃない何か、で固まっていた足をゆっくり前へ踏み出す。
「要らない……要らない‘心配’なんて、還しにいく……!」
ーー俺は走り出した
一心不乱にーー
どうしよっかな。このまま進めるには、環境が整ってないなあ……




