理系少年と不思議な少女
「いい加減にしないと塩酸浴びせるからね?」
そういう少年の手には、なんだかよく分からないビンが握られていた。
とたんにその場の空気が凍りつく。
『ごめんなさい』
とりあえず3人で謝った。竜だけは納得いかなそうな顔だったが。
それにしても、と真は思う。
この人何者なんだ?
かなり怖いことを言ったが、とても怖くは見えない童顔気味の顔だ。そしてなぜかメガネを額にかけている。ファッションのつもりだろうか?
するとその少年が真を見て口を開いた。
「・・・この子誰?魅月がつれてきたの?」
「はーい、そうでーす。」
魅月は間の抜けた返事をした。
ああ自己紹介するしかないのか。真は正直言って自己紹介が苦手だった。
「あの、僕は森守真です。みなさんのお仲間に・・・えーと」
言葉に詰まってきたところで、魅月がすかさずフォローする。
「真君は私達の仲間だからね。あんまり脅したりしないでね?・・・できればわたしのことも」
最後にボソッと自分のお願いを言ったが。
メガネ少年はふいに真に話しかけた。
「真君、だね?僕は青桐透也。よろしく」
「あ、はい。よろしくお願いします・・・」
真もあわててそれにこたえる。なんだか近づかないほうがいい人かも知れない、と思った。
魅月は真に耳打ちした。
「透也君は薬品ばっかりあつかっててね。普段は優しいけどさ。昔、私達にケンカふっかけた不良に、ホウ素を口の中につっこもうとしたことがあるんだよ。・・・気をつけてね?」
背筋に冷たいものが伝うのを感じた。
そこで真ははたと気づいた。透也の後ろに人がいたのだ。
その人をみて息を飲んだ。
あまりにも美しい少女だった。雪のように白い肌に、腰まである長い黒髪。
だが黒い瞳にはなんの感情もなくて、まるで人形のようだと思った。
「あ、瑠璃っち!学校休むんじゃなかったの?」
その少女を見たとたん、魅月の表情がパァっと明るくなった。どうやら魅月とこの少女は仲がいいらしい。
「・・・魅月ちゃん。こんにちわ」
真は少女の声を初めて聞いた。すごく透き通っていて、なんというか、風のようだと思った。
この少女には絶対惚れるわ、どんな男子であろうと。
「・・・あの、あなたは・・・」
真は少女に話しかけられて、顔に血が集まっていくのを感じた。
沸騰寸前である。
―――わわ、こんなとき何を言えばいいんだろう?まずは名前だよね、えっと
「は、はははじめまして!も、まままりす、まことです」
言ってしまってから後悔した。
待て、慌てすぎだろ僕。
誰だよ、「まりすまこと」って。
「・・・まりすさんですか?初めまして。私は星野瑠璃です。・・・瑠璃って呼んでください」
瑠璃さんも瑠璃さんで「まりす」という苗字に違和感を覚えていないようだ。
「瑠璃っち、この人はもりす、まこと君だよ~」
魅月がすかさずフォロー!
さすが魅月、やっぱりいろんなところで気が利く!
真が魅月を心の中で褒め称える。
もりす、という指摘を受けた瑠璃はやはり淡々とした調子で言う。
「・・・すいません。もりすまことさんですよね」
このとき、真は気づいた。
瑠璃は感情を表に出さないタイプなのだと。
正直に言うとこの作品、いわゆる「駄作」なんだなぁと思います。
でも途中で書くのをやめることはしたくないんです・・・。
完結させないと、物語として成り立ちませんから。
それに、あきらめ癖がつくとやっかいなんで・・・。
だから完結するまで、できればお付き合い願います。