普通の転校生
稲美学園。
最近造られた学校であり、学力はそんなに高くない学校だが、校舎の外見や設備などで人気があり、転入を希望する生徒まで出てくるほどだ。
そんな稲美学園に今日、転校生がやってきた。
それは朝のうちから学校内で噂になっていた。
普通なら、「今日転校生が来るんだって」「へー」ぐらいな会話で、あまり話のネタになる噂とは思えないが、今回は違っていた。
「転校生は不良校からの転入生らしい」
あくまでも噂のレベルで真偽はわからないが、この噂は学園中に広まって生徒達の警戒レベルを5まで引き上げた。
不良と言うからには何をしでかすか分からない。
暴力でこの学校を全支配してしまう可能性も0ではない。教師の方もこれに対し、対策を練っていた。
そして問題の転校生はやって来た。
どんな奴なんだろう?
不良ならやっぱり・・・顔に傷とか・・・? 特攻服だったりして・・・。
各自、まだ見ぬ転校生の姿を想像して震え上がる。そして、
「今日は転校生を紹介しよう。森守くん入ってきなさい」
「はい」
教室の戸がガラリと開けられる。
キターーーーーーーー!!!
織田裕二ではないが、みな心中ではその言葉を思い、生唾を飲み込んだ。
・・・が。
「えと・・・森守真です。よろしくお願いします」
入ってきた転校生はあまりにも「普通」だった。
まじめで優しげな顔つき、少し色素が抜けたように茶髪気味の髪、きっちり着込んだ制服。
どれをとっても「普通」。いやそれ以上に「美少年」だ。
先ほどから女子は小さく歓声をあげている。
男子は女子の反応を見て、真という男を睨みつける。
でもなんにしたって怖い人じゃないことは確かだ。
内心みんなホッとしている。
「では森守君。あの席につきたまえ」
「はい」
クラスの視線を一直線に受けて、席へと向かう真。
不思議と彼の周りには花が浮かんでるように見えるのは気のせいか。
森守真という男を新しくクラスにむかえ、またいつも通りの授業が始まった。
そんな中、授業中だというのに、真から少しも視線をずらさない女がいた。
彼のかっこよさに惚れ惚れしている・・・というわけではないようだ。
ただじーっと真を見つめ、その後何かを思案するように頬杖をつく。
ふいにその女は小さく呟いた。
「なんにせよ、この男は普通じゃないよね・・・。みんなに後で知らせなきゃ」
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午前中の授業が終わり、昼食の時間帯となった。
真も購買部でパンでも買ってこようかと思ったが、そのときいっせいに女子に囲まれてしまった。
「真君ってどこから転校してきたの?」
「真君って誕生日いつ?」
「真君の血液型は?」
「真君の髪って地毛?染めた?」
「真君本当はどこかのモデル?」「あ、それあるかも!ねぇどうなの真君?」
「ねぇ真君・・・」
完全に質問攻めだ。一人一人の質問に答えていられないので、真は上手く女子の間を抜けて教室を出た。
さぁパンを買ってこよう。そう思いやっと廊下を歩き出した。
――真は、その後一人の少女に出会い、そのままどこかへ連れ去られることになるのだが、それはもう少し後になる。
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「ねぇリューク!聞いて!」
「・・・あ?」
「今日来た転校生ね、ヤバイよ。なんかヤバイ。あいつはヤバイ」
「・・・なにがどうヤバイのか具体的に言え。イライラする」
「具体的って・・・。んー、女の勘?でもあえて言うなら・・・普通だったから」
「普通?」
「授業中にずっと観察してたんだけど、不良校から来たのにあの落ち着きようはありえないよ」
「・・・へー」
「反応薄いなぁ。で、その子真君って言うんだけど・・・私達の仲間にしない?」
「なんでだ?」
「おもしろそうだから」
「・・・」
「なんか言ってよ。何?もしかしてリューク人見知り?キャーかわいそう!」
「うぜぇ黙れ死ね」
「相変わらずひどいなぁ~。でもいいよね?仲間にしてもいいよね?」
「・・・好きにしたらいいだろ」
「やたー♪ でも他の二人の許可もらわないと。あ、まぁ後でいいか」
「・・・知らねぇぞ。二人に怒られても」
「大丈夫だよ!あの二人はリュークと違って社交的だから!」
「・・・黙れ殺すぞ」
「キャー怖ーい!じゃ、私、真君呼んでくるね!」
「早く出てけ。そして戻ってくるな」
「えー。ひどーい」
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この日真の運命は変わってしまうことを、本人もまだ知らないだろう。
読んでいただきありがとうございました!
まだ意味がわからない段階かと思いますが、その辺については2話で詳しく書いていきたいと思います。
感想もらえたら嬉しさで狂い死にます(*_*)