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きみへ。  作者: 玲香
2/2

Letter.2

きみのことを最初に知ったのは、そう……

5年前のこと。



「ねぇ聞いて! あたし彼氏が出来たぁ!」

「うっそ、誰々?」

「んーとね、バイトの先輩なんだけど、もう超カッコよくて!」

いつものノロケ話。

あたしたちのグループは大抵窓際の後ろにたまっていた。

夏の日差しが、話す彼女の横顔を焼き付ける。

あたしの定位置は決まって親友の右隣。

勢い込んで話す友達の話に耳を傾けながら、時折、微笑んだ。

あたしが飽きてきたのに気付いたのか、親友はあたしに笑顔を向けたんだ。


「ね、イイコト聞きたい?」


あたしだけに聞こえるように、小声で。

ずるい、と思った。

そんな言い方されたら、聞きたくなるに決まってる。

普段は嫌われないように努力してるあたしでも、親友になら素で話せた。

だからこそ、この時だって。


「なに? 教えて」


自称引っ込み思案なあたし。

いつも聞く側のあたしの精一杯の意思表示。


「ちょっとトイレ行ってくるね」


輪を作っていた友達に声をかけた親友。

え、焦らしといてそれ?

って思ったけど、親友はあたしの腕をにこやかに掴んだ。


「二人じゃないと話せないでしょ?」


例によって、あたしにしか届かない声。

親友は人の心にスッと入っていくのが得意だ。

あたしと違って。


トイレ……を過ぎ、屋上に続く階段を二人で上る。

確か屋上に行くのは禁止されていた筈なのに。

なんていう疑問はすぐに解決。

屋上に辿り着くまでもなく、階段の踊り場で立ち止まった。

埃っぽい空気が、秘密って感じを醸し出してる。

親友はあたしを振り返り、イタズラっぽい笑みを浮かべた。

あたしより小さい背を伸ばして、あたしの耳に顔を近づける。


「近いって」


「いいの。誰か聞いてるかもしれないし」


「そんなわけ……」


ないじゃん、といいかけたあたしの隣を、社会科教師が通り過ぎる。

ほらね、とでも言いたげに笑った親友は、再び背伸びをする。


「あのね……」


「うん、なに?」


「あたし、」


彼氏が出来たんだ。


って、聞こえた気がした。

あまりに響きが軽すぎて、耳を素通りしたらしい。


「……は?」


「だからぁ。彼氏が出来たの」


やっぱり、聞き間違いなんかじゃなかった。

羨望よりも何よりも、先を越された、って思った。

何でだろう。

あたしなんかより、親友の方がモテるってことは分かってる筈なのに。

何でも一緒にクリアしてきたから、なのかな。

産まれたときからずっと一緒だったのに。

僅かな違いのように見えるけど実はその奥に潜む大きすぎる違い。


「あ、信じてないでしょ。写メ見せてあげる」


目の前に親友のケータイの画面。

確かに親友が一目ぼれしそうな外見の男。

悔し紛れに、この男の顔でも覚えててあげよう。


「どこの人?」


「他校なんだけどね、ほら、あの南高校なんだって」


「ナンパってやつ?」


「違うよぉ、ちゃんと知り合ったの」


ちゃんとっていうのがどういうのか、あたしには想像もつかない。

別に羨ましいんじゃない。

不思議なだけ。

恋って、そんなに容易くしてもいいものなんだ。


って、この時はまだ他人事だったんだけど。

えーと。2話目。

読んでいただきありがとうございますっ!

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