09話 ヴァレンティーナ王国
陽とレオンは、フィオーナ草原を進んでいた。彼らの目的は、精霊族の国、ヴァレンティーナ王国に到達し、信仰を得ることだ。この王国は巨大な木の中に構築されており、その木は神秘的な雰囲気を醸し出していた。陽は、木の幹の奥深くにある国に驚きを隠せなかった。
「この木の中に本当に国があるのか?」と陽は尋ねた。
レオンは微笑みながら答えた。「そうだ。精霊族は自然と共存している。彼らの国は木の生命力を生かしているんだ。素晴らしい場所だってカイオスも言ってたぜ!」
やがて、陽とレオンは王国の入口に到達した。だが、警備兵が彼らの前に立ちはだかり、厳しい表情で言った。「ここはヴァレンティーナ王国の入り口だ。通行する者は王の許可が必要だ。」
陽は少し戸惑ったが、レオンが前に出て言った。「俺はアポロンより召喚された者、日向陽だ。国王に会いたいのですが、ここを通していただけないか?」
警備兵は冷たく応じた。「その申し出には理由が必要だ。国王の許可が得られるまで、入ることはできない。」
(ですよねぇ〜。)
陽は頑張って説明するも、徐々に警備が増えているのは明らかだった。ただし、余計な争いは避けたい、ここは抵抗せずに言うことを聞くことに決めた。「…わかりました。ここで待ちます。」
数分後、警備の団長が現れた。彼は堂々とした姿で、陽とレオンに目を向けた。「何の用だ?」と彼は問いかけた。
「俺たちは、ヘリオスの光を宿す者として国王に会いたいのです」とレオンが応じる。
団長は一瞬考え込み、陽をじっと見つめた。「ふむ、ヘリオスの光を感じ取れるか…」彼の目が光り、陽は何か特別な力を感じた。団長は続けた。「お前たち、私と共に来い。」
陽とレオンは、団長に導かれる形でヴァレンティーナ王国の内部に入った。道中、彼らは木の中の壮麗な造りに驚かされる。壁は緑色の葉で覆われ、光が差し込むと、美しい模様が床に映し出された。
「これが精霊族の力か」と陽は感心しながらつぶやいた。
やがて、彼らは王座の間に到着した。そこには国王が待っていた。国王の名はアルカディア。彼は威厳に満ちた姿で、優雅な衣装を身にまとい、強いオーラを放っていた。
「お前たちが外から来た者か。私の名前はアルカディアだ」と国王は静かに言った。陽とレオンは、彼の前で頭を下げた。
「単刀直入にお伝え致します。俺たちは信仰を得るために参りました」と陽は言い、今天界オリンポスで起きている事、これまでの経緯を話した。アルカディアは二人の目をじっと見つめ、思案するように静かに考えた。
「ヘリオスの力を宿す者が相応しいかどうか、私の団長が判断することになる。リオンよ、試練を与えよ」とアルカディアは命じた。
団長は頷き、陽に向かって言った。「私の名前はリオンだ。ヘリオスを宿す者よ、お前には模擬戦をしてもらう。私の力を相手にし、ヘリオスの力がどれほどのものか見せてみろ。」
リオンの言葉と同時に、彼の背中から精霊族特有の美しい翼が生えた。透き通った羽根は、光を反射しながら煌めき、彼の耳はエルフのように尖った耳へと変形し、神秘的な雰囲気を醸し出した。
模擬戦の舞台は、王座の間に隣接する広大な試練の間で、自然の光が差し込む荘厳な空間だ。緑豊かな草原が広がり、巨木の陰で柔らかな日差しが散りばめられ、精霊族の神秘を感じさせる風景が広がっている。周囲には精霊族の警備兵たちが集まり、戦いの様子を見守る。戦闘のために整えられた円形のエリアは、緑の葉で覆われた石の床が美しく、光と影のコントラストが幻想的な雰囲気を演出している。
リオンは戦闘の準備を整え、陽もそれに合わせた。場の空気が緊迫し、周囲にいた警備兵たちも緊張感を漂わせる。
「いくぞ、ヘリオスの光を宿す者よ!」
「来い!ヘリオス!!!」
陽とリオンが同時に叫び、模擬戦は始まった。
その場の隅にはーーー。
静かに佇む一人の女性の姿があった。彼女はヘリオスに関する古い書物を手に持ち、優雅な仕草でページをめくりながら、模擬戦の行方を静かに見守っている。時折、書物に目を落としながらも、戦う二人の動きに注目し、その様子をじっと観察しているようだった。