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06話 覚悟

 カイオスとガリウスが同時に振り返った。陽が、決意に満ちた表情で前に進み出る。


「――!? 陽……?」


カイオスは驚いた顔で陽を見るが、陽は真剣な目をカイオスに向けた。


「俺は部外者だから、他国のことに首を突っ込むのはどうかと思っていた。でも、あんたがいつも言ってくれたように、力を憎しみに使うなって。ずっと我慢していたんだ。でも……このままじゃだめだ。俺にも、できることがあるはずだ。」


陽はカイオスに感謝の眼差しを送りつつ、ヘリオスの力を使う決意を固めた。


「その力は誰かを守るために使え……。あんたが教えてくれたことを、俺も実践する時が来たんだ。」


その言葉と共に、陽はアポロンの授けた力――ヘリオスの召喚を試みた。空気が揺れ、眩い光が辺りを包み込む。そして、黄金に輝く巨大な獣――ヘリオスが陽の前に姿を現した。


「来い!!ヘリオス……!」


その姿を見て、ガリウスは一瞬驚きの表情を見せた。彼は興味深そうにヘリオスを眺め、低く笑った。


「ほう……あれがアポロンのヘリオスか。オリンポス十二神の召喚獣の一体とは、なかなか興味深い……。」


 ガリウスは冷静にヘリオスを観察し、その圧倒的な力に考え込むような素振りを見せた。だが、すぐに薄笑いを浮かべながら、両手を軽く打ち鳴らした。


「今日はここまでにしよう。あくまでも目的は偵察。アポロンの召喚獣相手に無謀な戦いをする気はないさ。」


ガリウスは手を振って後退しながら、次の言葉を投げかけた。


「だが、この次が楽しみだ。アポロンの選ばれし者よ、強くなれ。そしていずれ、また会おう。その時が真の決戦だ……。」


そう言うと、ガリウスは不気味な笑みを浮かべ、影の中へと消えていった。


「おい、待て!」


陽は剣を握り締め、追いかけようとしたが、カイオスが彼の肩を押さえて止めた。


「待て、陽。今は無駄だ。ヘリオスを持ってしても、勝てる保証はない。」


「……くそっ。」


陽は悔しそうに地面を蹴り、剣を収めた。そして、カイオスの方に向き直ると、決意を込めた眼差しで言った。


「俺は、何も守れなかった…。」


カイオスは疲れた顔で微笑んだ。片目からはまだ血が流れ続けているが、その目には陽への信頼が宿っていた。


「陽、お前はよくやった。俺たちを守るためにヘリオスを召喚した。そのおかげで皆助かったのだからな…。」


戦いの後、レオンは地面に崩れ落ち、顔を覆いながら涙を流していた。カイオスが自分を守り、傷ついてまで止めようとしていたことに、彼は深い後悔と絶望を感じていた。


「……カイオス、俺は……」


「レオン、立ち上がれ。お前はまだ若い。これから色んなことがある。お前の父親は国の争いで亡くなった。その事実はもう変えられない。だからこそ、これからは復讐ではなく、お前の大切な誰かを守るために、力を使えるようになるんだ。」


「だけど、俺が未熟なせいで、カイオス…の右目が…本当にすまない。」


「俺は俺の大事な家族を守っただけだ。レオン、お前が生きているなら、片目くらい、安いもんさ。」


「カイオス…」


カイオスの言葉に、レオンは顔を上げた。涙を拭い、力強く頷くと、彼はその場に立ち上がった。


「……分かった。俺、もっと強くなる。カイオスの教えを胸に、絶対に強くなる……!」


陽もその場に立ち、レオンに近づいた。


「俺もだ、レオン。俺たちはまだ道の途中だ。これから一緒に、強くなっていこう。」


「……ああ、そうだな。」


レオンは強く頷き、決意を新たにした。


 その時、カイオスが陽の方へ目を向け、少し思案するように黙った後、静かに言葉を紡ぎ出した。


「陽、お前はここで一人で戦ってきたが、これからの旅はさらに厳しいものになるだろう。そこで提案なんだが……レオンをお前の仲間にしてはどうだ?共に力を合わせて、この先の試練に挑むんだ。」


その言葉に、陽は驚きの表情を浮かべた。


「レオンが、俺の仲間に……?」


レオンもまた、驚いた様子でカイオスを見たが、すぐに真剣な表情に変わり、陽の方を見つめた。


「陽、俺はカイオスの弟子として、戦士の道を学んできたが、まだ道半ばだ。俺も外の世界でお前と一緒に強くなりたい。そして、ガリウスが悪事を企んでいるなら俺はそれを止めたいんだ。」


陽はしばらく黙って考えていたが、やがて顔に笑みを浮かべ、静かに頷いた。


「……わかった。レオン、お互いに強くなろう、約束だ。」


陽は手を差し出し、レオンもそれに応じて固い握手を交わした。


その瞬間――。


陽の胸の奥から、温かな光がふわりと現れた。それは優しい光であり、彼を包み込むように輝いていた。


「これは……」


陽はその光に驚きながらも、どこか心が満たされていく感覚を覚えた。


「これが……信仰か……」


陽は、仲間との絆が生まれた瞬間に感じたこの光こそが、自分がアポロンから言われていた「信仰」の一端だと何となく理解した。誰かの信頼や共に歩む決意――それが信仰という形で現れるものだと。


レオンもまた、信仰の光を見つめ、驚いた表情を浮かべながら陽に笑顔を向けた。


「陽、お前の信仰……俺にも感じられる。これから俺もその一部として、共に戦っていく。」


陽は深く頷き、改めてレオンと目を合わせた。


「ありがとう、レオン。これからも宜しく頼む。」


「これでいい。お前たちはこれから試練に挑むが、互いを信じ合い、支え合うことで、どんな困難も乗り越えられるだろう。」


カイオスもそんな二人を見守り、満足そうに頷いたと共にある提案をした。


 「陽、レオン、この先の旅にはさらなる試練が待っているはずだ。だからもう少しアレイオスに滞在し、旅の準備を整えるといい。」


陽とレオンは顔を見合わせ、頷いた。陽はアレイオスに来てからの3週間、カイオスの元で鍛錬に励んできたが、旅の準備を整えることなど考える暇もなかった。


「確かに、これまで鍛錬ばかりで準備は全然していなかったな。」


陽がそう呟くと、カイオスは軽く頷きながら言った。


「そうだ。旅は過酷だ。万全の状態で出発することが肝心だ。レオンもだ、お前も旅に備えて休息を取っておけ。」


 陽はその夜、アレイオスの酒場で陽、レオン、カイオスと一緒に宴を楽しんでいた。人々にガリウスを追い払ったという事で、陽はアレイオスで少しばかり有名になっていた。レオンが仲間に加わる事が決まり宿に戻る最中、とある店主から「にぃちゃん!今日は俺の店で飲んでいけ!アレイオスを守ってくれた礼だ!」と招かれ、酒場の雰囲気に包まれていた。


酒場ではみんなが陽達をもてなす。

「はい!ビール3つです。酔い過ぎないでね!」っと猫の獣人族の若い女が接客をした。


「ここ3週間鍛錬ばっかだったから、それどころじゃなかったけど、異世界最高すぎねぇか?猫耳お姉さんが接客なんて…もう俺エリシュアで生涯過ごすでもありか?ありなのか?」


「おい、陽、お前鼻の下伸びてるぞ」


レオンがツッコミをいれる。


「ガハハ!アレイオスの女性はみんな綺麗だろう!どうだ!一緒に連れて行くか?獣人族は女でも戦闘力は高いぞ!それとも魔法が使えるエルフのねーちゃんがいいか?」


「エルフ…!?なんて最高なんだ…。アポロン、いや、アポロン様。俺をエリシュアに連れてきてくれてありがとう」


(色んなことがあり過ぎて、余裕が無かったため皆さんにはお見せしてない一面になるかもしれないが、陽は二次元も三次元も女性が大好きなのだ。チャラいわけではない。自称一途なのだ。わかるよ陽くん。私もお姉さんたちが大好きだ。人も獣も関係ない。男の浪漫よな…。あ、みなさん初めまして。白蛇です。たまに登場します。)


「そーいえば、陽以外にもアレイオスに召喚者が来ていたな。」


カイオスが思い出したかのように言う。


「もしかして、リーナさんですか!?」


「そうそう、そんな名前の。なんだ、知り合いか?」


「はい、一応…。アレイオスに到着するまでずっと守ってくれた人で。俺はあの人にも追いつかないといけないっていうか…。」


「そうだなぁ、確かに俺も一度だけ会ったがあの嬢ちゃんはとてつも無く強いオーラを纏っていたな。しかもかなり賢い。アレイオスが近年抱えている問題を1週間でさらっと解決してアレイオスを去ったとか。俺は大会の運営側だから、そんなに関わってはいないが、陽にとってはかなりの強敵だろうな。」


(リーナさん1週間滞在してたんだ…。とてつもない信仰を集めたんだろうな…。)


「しかもよお、とんでもねえ美人だったしな!なぁ!陽!あーんな良い女に守られてばかりなんて男のプライドが傷つくよなぁ!」


「ブシュッ」ビールを吹き出す。


「るっせぇなあ!!」


「ガハハ」みんなの笑い声


みんなで沢山食べて飲んで、陽が異世界へ召喚されて久々に息抜きが出来た日になった。


次の日、陽は二日酔いでずっと寝込んでいた。


(日本じゃそこそこ酒は強いはずだったのに、情けない…おえっ。なんで、レオンとカイオスはピンピンなんだ…さすが外国人ってやつか?おえっ。)


その日、陽は昨日食べた物の8割くらいを自然に返したのであった。


おげぇぇぇぇぇ〜。

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