16話 色の意味
16話 色の意味
「ごめっ…!」
陽が謝ろうとした瞬間、セレーナは慌てて彼の口を手で押さえた。
「しっ!誰かが来ちゃう!リオンに見つかったら、私だって言い訳できな……」
「んんっ!!んーんんっ!!」
(息が…っ)
陽は苦しそうにもがいた。
セレーナは驚いて手を離し、小声で慌てて謝る。
「ご、ごめんなさい!」
「いやっ、俺こそ…」
一瞬の沈黙が流れた後、陽はセレーナに優しく声をかけた。
「なんでセレーナさんがここに?また俺の看病をしてくれたんですか…?あ!まさか!またからかいに…!」
「ち、ちがいます!!」
「陽が起きていたらお礼を伝えようかなと思って…。でもノックしても返事がなくて。また、力尽きてるかもしれないと思って様子を見に来たの。そしたら、ぐっすり眠っていて…起こしちゃ悪いと思って待っていたら、私もつい…うとうとしてしまって…驚かせてしまったわね、ごめんなさい…」
必死に説明するセレーナを見て、陽は思わずくすっと笑った。
「な、なんですか?」
「いや、セレーナさん、最初に会ったときは俺のことをからかって、俺ばっかりドキドキしてたのに、今は逆に俺がからかってる気分になっちゃって。慌ててるセレーナさん、すごく可愛いですよ。」
セレーナの顔は真っ赤になり、彼女は自分の髪の毛で顔を隠そうとした。
「あ、あなたは、私の加護を受けて恥ずかしくなかったのですか…」
陽はゆっくりとベッドから起き上がり、正座をしながらセレーナに向き直った。
「あの時は必死だったんで、正直あんまり考える余裕はなかったです。今思い出すと、たしかにちょっと恥ずかしいですけどね…」
陽は少し照れながら答えた。
セレーナも正座し、加護について説明を始めた。
「精霊の加護は、与えた相手のエネルギーに反応して、精霊の羽の色が決まるんです。」
「なるほど、だから俺のときには他とは違う銀色の羽になったんですね。他にも色があるんですか?」
セレーナは頷き、淡々と説明を続けた。
「はい、歴代で確認されているのは金色、虹色、水色、黒などがあります。金色は高貴さと繁栄、虹色は希望と調和、水色は平和と神秘、黒は力と闇。それぞれ、与えた者と与えられた者に一つずつ象徴があるんです。」
「へえ!じゃあ銀色は?」
セレーナは少し恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「それは…純粋さと素直さです。」
「純粋さと素直さか…。ま、俺たちっぽいですね!セレーナさんとは出会ってまだ日が浅いけど、こうやって異世界から来た俺を信じてくれたし、加護まで与えてくれて、本当に感謝してますよ。ありがとう、セレーナさん。」
陽は深々と頭を下げた。
「陽…やめてください。私の方こそ、陽に助けてもらったんですから…」
その時、廊下から誰かが走ってくる足音が聞こえ、次の瞬間、ドアが勢いよく開いた。
バンッ!!
「陽ー!目覚めたかー!飯食うぞー!今日はリオンとみっちり稽古したから腹が減って…って、ありゃ?まだ寝てんのか?」
レオンが部屋を見渡し、呟く。
「ヘリオスの力は体力を使うって言ってたしな〜。まあ、また後で来るぞ〜」
バタンッ!
レオンが部屋を出て行くと、部屋に再び静寂が訪れた。
レオンが部屋のドアを開ける直前、セレーナはとっさに陽に覆い被さり、二人とも毛布にくるまった。息を潜め、陽の顔はセレーナの胸元に埋まった。
「セレーナさん…ぐ、苦しいです。」
「ちょっ、どこ触ってるんですか。待って、陽、動かないで!」
「どこって…あっ!ごめんなさいっ!今すぐ離れますっ」
「ダメですっ、今顔を見られたら、明日から陽と話せません…」
セレーナは再び陽の顔を自分の胸元に引き寄せた。彼女の鼓動がどんどん速くなるのを、陽は感じていた。
しばらく沈黙が続き、セレーナの鼓動が少しずつ落ち着きを取り戻した。
陽はセレーナの手を振り解き、ようやく顔を毛布から出した。
「ぶはあっ、死ぬかと思った…。危なかったですね、セレーナさ……ん」
セレーナの顔や耳が真っ赤になっていた。
「セレーナさん…」
部屋には二人の吐息だけが響いていた。
「陽…」
二人の唇が重なりそうになった。
その瞬間ーー
パンッ!
「えっ…」
セレーナが驚いた。
陽は自分に向かってビンタをしていた。
陽はすぐに起き上がり、今度はベッドから降りて深呼吸をした。
「セレーナさん、ごめん。俺、今、流されそうになった。何が純粋だよな。本当にごめんなさい。」
「いえ、私の方こそ…ごめんなさい」
セレーナも少し体を起こし、恥ずかしそうに答えた。
お互いに気まずい空気が流れたが、陽はふと夢の中でヘリオスと交わした会話を思い出した。
「セレーナさん、そういえば、ヘリオスが夢の中に出てきて…!」
陽は夢で起きた出来事をすべてセレーナに話した。
「そうだったのですね。陽の力が安定していないのは、ラゼリアの大樹の前で、私が陽の魔法に合わせて感じました。」
「俺も、アレイオスで剣術や基礎体力は身につけたけど、魔法の勝手が全然わからなくて…」
「陽の故郷には、魔法はなかったのですか?」
「そうだな、俺たちの世界では魔法なんておとぎ話だよ。」
セレーナは目を丸くして驚いた。
「そうなのですか!?」
「そうだよ、俺の国は結構平和でさ。戦争もなくて、魔法なんてなくても、みんな楽しく暮らしていたし、なんだかんだで良いところだよ!」
セレーナは陽の話を聞いて優しく微笑んだ。
「陽の故郷は素敵な場所なのですね。分かりました、私が精霊の姫として、あなたに魔法を教えます。ちゃんと学んでくださいね!」
陽はセレーナの意志の強さに笑顔で応じた。
「ああ、よろしく頼みます!セレーナさん!」
二人はクスッと笑い合った。
「改めて、陽。今回の件は本当に助けていただきありがとうございました。また明日からも宜しくお願いしますね。」
「ああっ、こちらこそ!」
そう言って二人は夕食を食べに広間へ向かった。
広間へ向かう途中、陽はふと思い出した。
(そういえば、レオンはまたリオンさんと稽古してたって言ってたな…。昨日のあの大騒動の後に、もう稽古?あの体力バカ…。)
陽は思わず立ち止まり、疲れた顔を思い浮かべながらため息をついた。
(リオンさんもすごいけど、レオンは特に異常だよな…。どんだけエネルギー湧いてんだ。)
異世界の力や魔法は驚きだったけど、何よりこの世界の人たちの体力がすごすぎる――。陽は内心、少し引きながらも、夕日が差し込む廊下を歩き続けた。
(異世界ってやっぱすげえな。)




