表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/56

私、このまま死んじゃうの!?




『人生リセットしてやり直したい』


 人間誰しも生きていれば、一度くらいはそう思うことがあるんじゃないだろうか。


 たとえば、大きな失敗をしてしまったとき、悪いことが立て続けに起こったときなどに。


 でもそれは、あくまでも死ぬつもりがないから思うことだ。


 私だって、自分がもうすぐ死ぬと分かっていれば、そんなこと絶対に思わなかった。


 昨日クビになって、社員寮からも今月中には出るようにと言い渡された。


 途方に暮れて、ほんの一瞬、ほんの一瞬だけ、『人生リセットしたい』とは思ったけれど本気で死ぬつもりなんてなかったのだ。


 それが、ハローワークへと向かう道すがら、交差点で信号待ちしている私の目の前に、どういう訳か降って湧いたように儚げな女性の姿が突如現れて。何故か、ふと、子供の頃母と行った縁日でもらったミドリガメのことを思い出していた。


 ひどく懐かしかったせいか、思い出に引き込まれていた私の身体は、我に返った時には既に無意識に動いていた。


 そして驚くほど速い身のこなしで女性を抱きとめた私の眼前には、大きなトラックが迫っている。


 あたかもスローモーションのような、走馬灯のような、ゆっくりと流れゆく景色の中。


ーー私、このまま死んじゃうの?


 今まさに危険が迫っているというのに、案外冷静に、そんなことを思っていた。


 その瞬間、キキキキキキーッ!! というけたたましいブレーキ音と、ドンッ!! という鈍い音と共に何かが身体にぶつかってきた強い衝撃が全身を駆け巡った。


 どうやら私の二十ニ年という短い生涯はたった今終わりを迎えようとしているらしい。


 死に際になって……


 いくら失業したからって、『人生リセットしたい』なんて思うんじゃなかった。


 死ぬんだったら、結婚くらいしておきたかったなぁ。


 ……といっても、彼氏の一人もできた試しなんてなかったのだけれど。


 あれこれ後悔したってもう遅い。後の祭りだ。


 今際いまわきわ、後悔しまくりだった私の意識はそこでプツリとブラックアウトしてしまっていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ