痛いのは、如何なものかと思うよ
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
深夜にこんな夢を見たんですよ。
朝の目覚めは好調だった。夜の目覚めは不調だった。兎に角昨日の夢がチラついて、朝からとても不機嫌だった。私はとある輩に連絡を入れる。
「やぁ、お嬢ちゃん。今日、僕を誘ってくれて嬉しいよ」
「……美術品に関するものをチラつかせれば、来ると思ったよ……」
骨董品、美術品大好きな骨董品店の店主は、今日は一段とご機嫌だった。何せ誘い文句は『美術品のような、絢爛豪華な段々を見に行くけど、アンタも来る?』だったから。
此奴の容姿は中々整っている。ふわふわの鈍色髪に、大きめの丸眼鏡。悪戯っ子の様な口元に反し、はんなりしてる。何時もはその美貌に悔しく思いながらも、見惚れているが今日は別。苛立ちの方が強い。
私は眼鏡を叩き割って拳をめり込ませるのを我慢して、務めて冷静に切り込む事にした。
「昨日の夜、アンタが出てきた」
体感深夜一時、目を覚ますと書生服を着た男が私の上に覆いかぶさっていた。
鈍色のくせっ毛で、顔には大きな丸眼鏡。如何せん顔と顔が交差する位置に面があったので、よく見えなかった。けれども其の特徴から骨董品店の店主である事は容易に想像出来た。
彼は私の首元目掛けて顔を埋めた途端、チクリ、とした痛みを与えた。其れは段々と何かがめり込む鈍痛に変化する。
どれ程面が良い輩にされたって、痛いものは痛い。嫌なものは嫌だ。それでも奴はお構い無しに血を啜る。私の首筋に舌を這わせ続けた。
交感神経が活発になり、目覚めへと導くのを必死に抑える。瞼を瞑って頭を空にして、副交感神経を活性化させる。一夜の悪夢が終わった。
朝目覚めて首元を確認すると、就寝前間では止められていた釦が、一つだけ外れていた。平たい胸の谷間はほんのりと色付いていた。
「寝込みを襲うのは如何なものかと思うよ」
そう咎めると、彼はくるっと目を逸らした。それから数秒間私と目を合わせない。
「すみませんでした……」
「はい」
謝罪の言葉を聞けた以上、もう何も言うまい。
「本当の事を言うと昨日の事はよく覚えていないんだ。ただ突発的に何かに飢えて、気が付いたら満たされていた。その合間の記憶がない」
此奴に限らず書生もそうだが、吸血鬼は、定期的に血液を摂取しないとある日突然人を襲うらしい。其れは欲が満たされるまで落ち着くことは無い。何とも難儀だとは思うけれど。
でも此奴は彼奴に比べれば、まだマシな部類なのかも知れない。だって別に人間になりたいとか、戻りたいとか思ってる訳じゃないから。
「まぁいいや」
骨董品店の店主も吸血鬼ですよ。
寿命の長さを利用して、古美術の店主やってるんで。
でも古美術以外でも、お眼鏡に叶えば店で売ってそう。
書生も吸血鬼ですが、彼奴とは生い立ちが違うので、体質も少しばかり違います。
此奴の最初が罪悪感なしにご機嫌なのは、昨夜の記憶がなく、襲った相手が彼女だと気付いてないから。
そして本人的には証拠隠滅完璧だと思ってるから。
でも襲った相手は目の前にいるし、証拠隠滅も済んでないので、焦ってます。
昨日の夢から判明したのは、どれ程面が良くても痛いものは痛い。ですかね。
美人を殴りたいと思った事って恐らくないんですが、初めてそんな感情が沸きました。
顔の良さ<安眠 らしいです。