事情
「私はねぇー、ずっと女の子が欲しかったのよ。そんなものだからあの子がTSして本当に良かったと思うの。あの子を産んだ後にすぐ私の方は子宮頸がんに罹っちゃって……もう二人目は望めず、念願の女の子を産んであげられなかったから。あの子が女の子になってくれて本当に良かったのよ。ずぅーっと。待ち望んでいたから。ふふふっ、私が用意していた女の服とかをようやく着させてあげられるわ。もう本当にTS病様々よ」
「あはは、そうですか」
「それでもね?あの子ったら、まだ全然受け入れなくて体のお手入れとか全然しないのよ。全く困っちゃうわよねぇ?それでちゃんと結婚出来るのかしら?お母さんとしては心配なのよね」
「そうですね」
「あぁ、そうね。あの子の結婚相手があの輪廻くんだったら安心して任せてあげられるわ。あの子に相手が見つからなかったらもらってやってくれないかしら?元々男友達で気まずいかもしれないけど……人生は百年と続くのですから。今からそれを見据えていけばそこまでの抵抗と思うわ。それにほら、あの子は見た目が良いでしょう?」
「考えておきます」
「ありがとぉ」
なんとなく蓮夜の事情も、そしてあいつが一番女になってしまった自分を否定していた理由も察することが出来た。
その原因は間違いなくここにいる蓮夜の母親であろう。
つか、狂っているだろ、このババア。勝手に女の子産まなかったことを悔いて、自分の息子のことも考えずに自分の理想だけを押し付けるなや。
明らかに悪いのは子宮頸がんワクチンを打たなかった自分とその母親だろうに。
なんで子供にまで悪い影響を及ぼすのか。
子宮頸がんなんてワクチンを打てば罹ることはなくてもうイギリスとかでは根絶も見えて来ているというのに。
「それじゃあ、自分はこのあたりで失礼しますね。両親がそろそろ帰ってきますので、晩飯を作らなきゃいけませんので」
「あら、ごめんなさい。長引かせてしまって。偉いわね?いつも両親のために料理を作っていて」
「ありがとうございます。それでは失礼します」
「はーい。これかれも蓮ちゃんのことをよろしく頼むわね?」
「もちろんです」
……まずは自分が逃げていってしまった蓮夜を探せや。
そんなことを思いつつ蓮夜の母親から離れてレジの方へと向かっていく。
「……」
早く一人で逃げていった蓮夜を見つけてやらないとな。
こういうときにいつも蓮夜が行く場所は一つって決まっているのだ。
あそこに行けば会えるだろう。
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