合格と同期
今回ちょっと長くなってしまいました。
合格…。合格だよね何度見ても…。え?なんで?どうして?私面接でやらかさなかった?面接官の、陽向さんの前でガチ泣きしたよね?それで合格なの?そしてお母さん…。はしゃぐのはいいけどさ、部屋の中で暴れないで…、いい大人がベッドの上で飛び跳ねる姿はいくらお母さんでも堪える物があるよ・・・。というか母親だからこそもうちょっと大人らしくしてほしい…。
それにしても合格かぁ…?私が?え?まじで?これから推しと会う可能性もあるのに?コミュ障こじらせたクソ雑魚の私が?私の取り柄なんて小説を書いてそれが見初められただけだよ?それだけで面白い話もできないし、歌が上手いわけでもない、それにゲームも興味がなくて触ったこともないし、こんな私なんかがほんとにあのステラライブでやっていけるのかな?それ以前にまず配信できる気がしない。はぁ…今から憂鬱だ…。私はこれからどうなっていくんだろう。まぁどちらにしろ今の状況じゃ小説をかけなくなった時点で終わりだろうけれど。それを考えるのであればこれは人生の転機なんだからとりあえず頑張ってはみるけどさ。でもこれどうなるんだろう…、配信機材とか私持ってないけど…。まぁ何かしら事務所の方からアクションがあるか…。それまでは放置でいいや。
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数日後、ステラライブからメールが来た。内容は機材の配達を行う旨の連絡と明後日、同期との顔合わせ及び今後の予定を話し合う場を設けるとの連絡だった。顔合わせは声だけで行うため顔合わせじゃなく声合わせだろと思わなくもないけれど…。それはともかく、同期との顔合わせ(声合わせ)があるからラインコードのインストールとサーバーへの招待を受けるようにと書いてあった。うっこういうチャットアプリでグループに参加するの初めてなんだけど…。えっ?参加したら何か一言言わなきゃかな?もしそうならやだな・・・、そういうの苦手…、というかコミュ障こじらせてる私にそんなこと出来るわけがない。でももうお仕事として受かっちゃったから参加しないわけにはいかない…。はぁしょうがない…。参加するか。
ぽちっ…
そんな音が部屋の中に響いた気がした。いや他に物音が出ることは何もしていないから実際に響いたのだろう。だけど私の耳朶を打った音は確実にその音よりも大きく聞こえていただろう。
参加したから何もチャットしなくていいよね…。グループに参加するだけでこんなに心臓バクバク行ってるし、部屋の音が静かすぎてキーンて音が聞えてきて、自分の心臓の音もバクバク聞こえているのにこれ以上緊張することをしてたまるか。絶対に私はチャットに参加しないからな!
そんなことを考えていると参加したグループにチャットが書き込まれた。
『初めまして!私は茜って言います。皆さん同期として仲良くしてください!』
その後に続いて続々と同期から連絡が入る。
『は~いよろしくねぇ。私は蒼羽よ。お姉さんとも仲良くしてくれると嬉しいわ~』
『うむ、よろしく頼むぞ茜よ。我も仲良くしてほしいぞ。我の名前は星羅じゃ、よろしくの』
み、みんな簡単にチャット打ってる…。すごい…。絶対にこの中のコミュ障って私だけだよ…。そんなこと考えてる間にチャット欄止まっちゃってる…。え?これ次は私の番ってこと?…無理無理無理、絶対無理!だって私の名前って今もまだ流星って男の名前だし、だけど今回のステラライブの募集は女性限定なんだよね…。そんな私がここで本名言っちゃって大丈夫?というかこれ私身体が女性になったことの原因が分かっていないからもしかしたら配信中に身体が男に戻っちゃったりとかするかもしれないんだよね…。今考えると怖くなってきた。ちゃんと陽向さんに言ったっけ?私が元男だったってこと。…流石に面接で聞かれたよね。だって名前ががちがちの男なんだもん。…その時の記憶なんてないけれどね。まぁそんなことは今はどうでもいい…。だって明らかに目の前に光っているチャット欄は私を待っている気配を漂わせている。うぅ、明らかに私の自己紹介を待ってるよね…。どうしよう…。打った方がいいのは分かるんだけど、クソ雑魚コミュ障だよ?私。そんな私がどうして学校の登校初日にあるような考えるだけで恐ろしい悪魔の行事、自己紹介をしなければならなくなるとは…。
そうやって光る画面の前で40~50分ほど考えこんでいると、再びチャット欄に書き込みをする人が現れた。
『皆さんしっかりとグループに入れたようですね。私の名前は陽向 夜宵と申します。皆さんの面接官を務めていた人と言えばわかりやすいですかね。この度皆さんのマネージャーを務めることになりました。よろしくお願いします。今後皆さんが何か困ったことがあればいつでも相談に乗りますので、いつでも言ってきてください。それでは皆さんある程度自己紹介もできているようですし、簡単に皆さんのデビュー時のお名前と設定資料をお送りしますのでそれぞれで確認しておいて下さい。それと天海さんあなたも軽くでいいので自己紹介してみては?あなたが元男だったというのはすでに他ライバーの皆様にはお伝えしてあります。皆さんも天海さんの自己紹介を待たれているようですし…。では私はこれ以降も仕事がありますので一度失礼しますね』
陽向さんはそう言ってチャット欄から離れていった。いやまぁ姿は見えないから実際に離れたかどうかは分からないけどね。でもどうしよう…。陽向さん最後に爆弾落としていったよ…。私が元男だとばれてるの?またいじめられるの?ステラライブに入ったにも関わらずまたいじめにあうかもしれないなんて嫌だよ…。こんなの女性の中に一人紛れ込んだ男みたいじゃないか。私はもともと性同一性障害だったから女性として見られたかったのに…。どうしてこうも何もかもうまくいかないんだ…。人生なんて辛いだけじゃないか…。でもとりあえず今は陽向さんから渡されたバトンを何とかしないと…。とりあえずチャットを打たなきゃ…。
『は、初めまして…。えっと、えと、あ、天海 流星でしゅ』
『はぁ~い、よろしくね~流ちゃん。まぁさっき夜宵ちゃんからも言われてたけど流ちゃんが元男だってことは知ってたわよ~。だから無理にチャットさせるのは悪いと思ってたんだけど…、夜宵ちゃんも無茶するわよね~。あ、あとあなたが男だった時も性同一性障害…だっけ?てのも一緒に聞いてるから大丈夫よ~。私は最初から女の子のつもりで接するからよろしくね~』
あ、あれ?私いじめられないの?男なのに気持ち悪いって…、女みたいにふるまってんじゃないわよって…言わないの?いつもなら家族以外みんなそう言ってきたのに…。いやでもまだ蒼羽さんだけだ…。
『うむうむ我もそう思っておった。まぁ今まで性同一性障害という事でいじめられていただろうことは想像に難くない。我もまた社会でいじめられた質でのぉ。我はああいうことをされるのはもう御免じゃ…。されるのが嫌なことはするもんではない。そもそもその者の性格を否定するなど言語道断!人は十人十色!様々な人物がいるからこそこの世は回っているし、面白いのじゃ。それを否定することは何人たりとも許さん!』
せ、星羅さん!どうしよう…感動で泣きそう…、ここの人たちはみんな優しいんだね…。そっか…、僕が元男だとしてもここではいじめられることはないんだね…。そんな優しい世界があったんだ…。ここはユートピアかなぁ…。いやでもまだ茜さんが…。茜さんがどういうか分からないし…。
『流ちゃん大丈夫?緊張しなくても大丈夫だよ?私だってその人の性格を否定するつもりもないし、それに、チャットでもどもっちゃうくらい緊張してるんだよねきっと…。それくらいひどい目にあった人をこれ以上のひどい目に合わせるわけにはいかないもん!私が目指しているのは誰かを笑顔にできるヒーローさんなんだよ!いじめる人が居たら言ってね!どんなとこでも私が駆け付けちゃうからね!』
あ、茜さん…。ヒーローになりたいってのはこの年じゃちょっと痛い子に思ってしまうけどかなり心根が優しい人みたい…。そっかみんないい人たちなんだ…。こんな世界があったんだなぁ…。あれおかしいな目から塩水が垂れてきてる…。私いじめられても泣けなくなるくらいにいじめられたのに…、こんな簡単に涙って流れるんだ…。学校に行く勇気はないけれどこの優しいくて暖かい世界はずっと守っていかなくちゃ…。でも今はそんなことよりチャットを返さなきゃ…。
『み、皆さん…ありがとうございます。え、えっとコミュ障です。…あぅ、よ、よろしくお願いします…』
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