二回目の配信
「はぁ…」
私はまたもやパソコン画面を前にしてため息をついていた。
もう二回目の配信の日が来てしまった。まだ小説のプロット完成してないのに…。そうだ!いっそのこと配信しながら小説でも書くか?私これでもマルチタスクは得意だし…それに配信すると体力減るけど小説書いてたら体力増えるからプラマイゼロになるんじゃ?きっとそうだよね!そうしよう!
◇
「み、みなさんこんばんは…。天神 日葵です。…お、お久しぶりです」
:待ってた
:言うほど久しぶりか?
:初見です
:今来た
「えとえと、今日は来てたマシュマロに答えつつ、雑談をしていこうと思います」
:マシュマロか
:どんなクソマロが届いてるかなw
:俺の読まれないかな~
:ん?なんかタイピング音聞こえない?
「えとえと、最初のマシュマロはこれです」
や、やばっ気づかれたかな?い、いやそんなことはないはず…。と、とりあえずマシュマロ読まなきゃ…。
『日葵ちゃんこんにちは!日葵ちゃんは誰もが認めるコミュ障ですが、コミュ障になるきっかけとかってありますか?』
:初手でなぜこれを選んだwww
:一瞬タイピング止まったけどマシュマロ選んだあとまた音がし始めたぞ
:これもしや裏で何かしてるな?
『え、え~と…私がコミュ障になった理由ですね…。私昔から学校でいじめられてて…それこそ小学校より前の保育園とか幼稚園とか言ってた時から…。小学校も二年くらいいったけどそこからは私不登校になっちゃって…。私がコミュ障になった理由を強いてあげるならそれかなって…』
:いじめか~
:結構重い過去だな
:でもない話じゃないよね
:そんな重い話の裏でずっとタイピング音響いてるの草なんだ
:これは絶対裏でなんかやってるな
:それになんか初回配信より緊張してない感じが…
これはやはりばれてますね…お疲れさまでした。あ~マネージャーさんに怒られちゃうかな~。まぁバレたものはしょうがないしネタ晴らしと行きますか…。うっ小説書くのやめたら急に緊張してきた…。でも言わなきゃだよね…。
:お、タイピング音が止まったぞ
:一体ナニをしてたんだい?
:↑おまわりさんこいつです
「え、えっと…皆さん申し訳ございませんでした…。え、えっと…配信開始からずっと…小説を…書いてました。…心を落ち着かせるために。だって配信するの緊張するしうまく話せないし…」
:いや草
:なんで小説書くだけで心が落ち着くんだ?
:確かにタイピング音やんだ瞬間立ち絵とかおどおどし始めててほんとなんやなって
「えっと…、この配信まだ続けます?…私もう十分頑張りませんでした?」
:いやまだマシュマロ一個しか読んでませんが…
:これは草しか生えない
:というか小説ってあんなペースでかけるもんか?
:↑ちゃんとプロットとか書いてたら割といける人もいるぞ
「あ…、えと、そうですね…、プロットという小説を書く前の枠組みみたいなのをしっかりと書いておけばある程度のストーリーの流れとかは決めとけるので後は文字を繋げるパズルみたいな感じで書けますよ。パズルみたいに文字をつなげてイメージを文章化するのって楽しいんですよね!」
:いきなりオタクかしたぞこの娘
:急な早口オタクで草なんだ
:日葵ちゃん小説オタクなのか
:小説書いてるって言ってたけどどこで読める?
「え、えっと…、私の小説…えとえと…普通に書店で売られてたり…」
:え?!ま?!
:小説家としてデビューしてるんか
:日葵ちゃんのペンネームって何?
「わ、私のペンネーム…ですか…?え、えっと、く、紅 呉羽っていう名前で活動…してます」
:紅様?!
:うっそだろ?!
:今話題の名作の作者じゃないか!
:こんなとこでなにやってんの?!
星川 真珠:お、お主それまじか?!わし紅様の大ファンなのじゃ!
:↑真珠ちゃんwww
:いやまぁ紅様の小説読めば誰でもファンになるだろうな
:すまん俺小説には詳しくないから誰か教えてくれ
:今話題の名作「彼岸の景色」って小説を書いたのが日葵ちゃん。ちなみに彼岸の景色は既にアニメ映画化が決まってて、さらには映画からつながるようにアニメも放送される予定らしいぞ。内容としては友人を亡くした主人公が事件に巻き込まれながらも友人の生きた証を残そうと頑張る話でかなり感動するぞ。小説が苦手なら一度はアニメでもいいから一度は見てみるべき
「ちょ、長文兄貴…ほ、ほんとにいるんだ…。で、でもそこまでじゃないよ…私は私が好きなものを書いただけだから…、名作とは違う…と、おもう」
:うるせぇ!あれは誰がなんと言おうが名作だ!作者であろうと異論は許さん!
:↑いやタイピングくそ速くて草
:まぁ気持ちは分かるがw
「ひっひぅ、ご、ごめんなさい…」
:でも普通小説を書くのを配信中にやるか?www
:確かに普通じゃないなwww
:↑馬鹿野郎!普通な奴がVTuberになれるわけねぇだろ!!!
「…え?私普通じゃないの…?」
:めっちゃショック受けてて草
:そもそもほとんどの人がドン引くくらいのコミュ障が普通なわけwww
:まぁ…普通じゃないよね…ごめんだけどw
「そ、そんな…、私今まで普通だと…、い、いや普通じゃないところも確かにあったけど…それでも…」
:めちゃめちゃ気にしてるじゃんw
:これは草生えるw今まで自分が普通だと思ってたんやなってw
「ま、まぁ私が普通かどうかはともかく…つ、次のマシュマロ読んでいきます…はい」
わ、私、TSする前まではそこ以外女性になりたいと思ってたこと以外普通だと思ってたのに…。み、みんなの中では私は既に普通じゃないっぽい…。ちょっとだけショックだ…。と、とにかくこの話題から話をずらそう…。これ以上傷つくことはないよね…。
『こんにちは!今日葵ちゃんの配信を見てて質問したいことができたので送りました!いつか読まれる日が来ると信じてこうして送ってます!
それで質問なのですが、日葵ちゃんはあの有名な紅 呉羽さんとのことですが、小説を書く上でのコツなどがあれば教えてください!
PS.私も小説家になりたいと思っていて今自作の小説を書いているところなのでできるだけ詳しく教えてくれると嬉しいです!』
「あ、これ…今送られてきたやつだ…」
:これ!私のです!まさか送ってすぐに読んでいただけるとは!
:↑すごい確率で草
:こーれはいい質問ですね
:俺、誰にも内緒で小説書いてるからこれはかなり気になるところ
「あ、け、結構気になってる方多いんですね…。えとえと、小説を書くコツ…ですか…。私が小説を書くときは私が理想としている自分がこんな状況になったらどうしたいかとかを考えて、自分の理想を書くようにしてます…。えとえと、理想を書くと言ってもいいことだけを書くんじゃなくて現実であったいやなこととか、悲しいこと、嬉しいこと、怒ったこと、誰かを愛したこと、ほんとになんでもいいんです。その状況をまず思い描いてそこに理想の自分を当てはめるんです。そこで私がほんとはどうしたいのか、その行動を起こすことで、どういう風に状況が動くのかをまずイメージするんです。そしてそれを文章にしていくんです。ぶ、文章にするのは簡単で単語と単語を接続詞とかで接続していくパズルみたいな感じです。えとえと、慣れないとそこら辺は難しいと思うんですけどね…。で、でも結局本とか小説って言葉でできてるんです。普段自分が使っているような言葉でも全然書けるんです。みんなが小説を書くことを諦める理由に私語彙力がないから…なんて理由を言う人が結構いると思うんです…。でもほんとにそうかなって私思うんですよ…。だってだってみんなその文章を書くための言葉を普段から使ってるじゃないですか…。それでも語彙力が足りないって理由をつけて逃げてる人は単に自分の理想を言葉にすることを面倒くさがっているだけだと思うんです。だ、誰でも小説は書けるんです。後は自分のイメージを言葉にするだけ…。それが人に好かれるかどうかはわかりませんけど…。わ、私の場合はそれが結構な人に好かれてるみたいです…はい…」
:かなりの早口で語ってて草
:早口でもだいぶ長かったけどなw
:でも言いたいことは何となく分かる
:確かに小説書くのやめる人の大半は「私には語彙力がなかった」だからな
:確かに小説に書いてある言葉、俺らも今使ってるしな
:諦めずに突っ走った結果が今の日葵ちゃんか…
な、なんかめっちゃ語ってしまった…。だ、だって私小説読むのも書くのも好きだけどそれを語れる友達とかいなかったもん…。つい早口オタクになっちゃうのはしかたないよね…。で、でもあのマシュマロに関する答えはよかったんじゃない?!私、頑張った!もういい?もういいよね?配信閉じても…。もう…体力の…限界です…。バタッ
:え?日葵ちゃん?!
:もしかしなくても倒れた?!
:まさかそこまで体力ないの?!
「すぅすぅ…」
:な、なんだ寝てるだけか…
:よかったような…配信事故だと慌てた方がいいような…
:まさか紅様が日葵ちゃんのような人だったとは…これはギャップ萌えすぎる
:とりあえず日葵ちゃんが起きるまで見守ろうか
そうして私の二回目の配信は寝落ち配信という配信事故で幕を閉じたのだった。もちろん私の黒歴史入りが決定した瞬間でもある。




