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日常が一変すると日常になる  作者: 起臥黎明
7/7

更生の扉、ある日の暦

さて、また少し間が開きましたが投稿です

適当に考えて適当に書いてますが

書いてる側としては楽しい限りです

では、ご覧あれ

 目が覚めた

 見知った天井ではない

 足りない

 空な気持ち

 なにもない

 いや、ないことはない

 記憶が…

 「うぶっ」

 記憶より先に胃がぶり返した

 「おぇ、おぇえぇえええぇ」

 「櫛喰さん?!大丈夫ですか!誰か!櫛喰さんが起きたって先生に伝えて!」

 病床の上、自分の吐瀉物でびしゃびしゃになって俺は、有恵のことを思い出した

 いや、思い出してないはずがない

 ずっと覚えてるし、ずっと想ってる

 寝ている間も有恵が話しかけてた記憶がある

 どうして…

 「なんで、俺を置いてくんだ…なんで…」

 涙も、鼻水も、後悔の言葉も

 全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部

 出した

 


 「才貴ー?ご飯置いとくねー」

 退院するのに半月かかった

 そこそこの人数が見舞いに来た

 誰が来たかは…覚えてない

 母さんは、たぶん気づいてる

 というより有恵に関してはいろんなパイプで伝わってるだろう

 でも、俺は、俺ならなにかできた

 できたはずなんだ

 潮波がトドメを刺させないようにどうにかできたはずだ

 弱い

 力がない

 有恵が俺に伝えた言葉は、俺を、愛したって言葉だった

 俺も愛した

 恋しくもあった

 でも、愛しかった

 だから、だから…

 どうして、どぅして

 あんなに辛い

 こんなに苦しいのに

 冷たいのに

 忘れられない

 忘れたくない

 あいつへの想いを

 時間が、風化しないように

 誰でもいいじゃない

 誰かがいいじゃない

 あいつがいい

 あいつじゃないと

 あいつでなきゃ


 ダメだ



 「才貴…?大丈夫か?」

 声がした

 「芦上…よ、元気か」

 「俺はな、でもお前、やつれて…」

 芦上が、言う

 「あいや、ごめん、忘れてくれ」

 忘れる…

 「なにをだよ……」

 「その…」

 「知ってるのか」

 「…。」

 沈黙は、そのまま肯定を表す

 「謝るなよ、お前がすることじゃない」

 「でもお前…」

 「いいんだ、俺は…」

 芦上は、下がっていった

 どうして、こんなに暗いのか

 見える世界が全て黒くて

 重い

 

 「なあ、才貴やっと学校来たけどヤバそうだな」

 「だな、でも当たり前っちゃ当たり前だよな」

 「まあそうか、だってな…」

 「やめとけよ」

 「芦上…いや悪かったって」

 「謝るならあいつと…あの子だ。」

 なにもおもわない


 なにも

 なにも感じない

 授業も身が入らないし

 話しかけられても頭が回らない

 西宮と潮波はいない


 もう、なんでもいい

 

 そんな日々を過ごしていくと

 虚いた心はどんどん穴を広げて

 元からなかったかのように虚無感を募らせた

 

 この間、一度も西宮と潮波を見ることはなかった

 

 「………帰るか」

 ひとりだった

 たまに芦上が一緒にきたが、申し訳ない態度しか取れなかった

 有恵は…いたらこっちに来てくれた

 

 そこで


 ジリリリリリリリリリリリ


 「警報…」

 概物が出たってものだ

 しかも街に被害を出せそうな奴らってわけだ

 俺には、関係ない

 とは思いつつ、見たくなった

 有恵のあの姿が忘れられない

 膨張して破裂して

 黒いぐちゃぐちゃとした…

 「うっ」

 吐き気がした

 でも、この辛さを、有恵が、あんな醜い姿を

 払拭したかった

 あれ以上に酷い姿を

 見たかった

 それで、有恵が少しでも美しく、かわいく、キレイな状態にしたかった

 有恵を忘れたくないって思ったのに

 それでも辛い

 

 騒ぎがするほうに足が進んだ

 人が、走っていく

 喚きながら、俺とは逆に

 

 デカい…蜘蛛のやつほどデカくはないが

 山熊より二回り…いや、それよりも少し大きい

 見た目は…カラスだ

 足の爪が椅子よりも大きい

 羽は広げたら道路を覆い、影を作るほどだ

 真っ黒な肉体は

 そのまま影を表す

 

 なんだ

 これなら見なくてよかったな

 このままあいつに殺されても

 そこまで考えたとき


 落ちた

 光が

 そして

 カラスを殺した

 

 「みなさん、後処理をしますので、避難を急いでください。また、救護隊もまもなく到着するので、ご安心ください」

 西宮はまた、勧告する

 俺は、なにもなしに近づいた

 西宮は誰かが近づいていることに気づいたようで

 「すみません、避難を……」

 ハッとして

 俺でも西宮が足に力を入れたのがわかった

 「逃げるな」

 西宮は気圧されたようにその場にとどまった

 「西宮…」

 「なんだい」

 爽やか野郎はスカして言う

 「潮波に会わせろ」

 「…一応理由を聞こう」

 「わかるだろ、殴る為だ」

 「…それは、ぼくが聞きたかった言葉だが、同時に聞く必要がなかった言葉だ」

 「どうでもいい、会わせろ」

 「…君は、そこまで愛していたのか。恨みで誰かを殴りたいと思うほどに。」

 「だからなんだ、そんなことは知ってるだろ」

 「なんにしても不可能だ」

 「だろうな、でも」

 「なぜかを言っておこうか」

 西宮は真剣になって言う

 「潮波隊長は、ここ2週間、ここら地域、さらに市の単位で概物の駆除を行い続けている。休みなしだ。」

 「それが、俺が怒りを収める理由になるのか」

 「…それもそうだね」

 「じゃあ」

 「知ってるかい?詩条さんの遺品」

 「は」

 なんだそれ

 「なんだそれ」

 「潮波隊長が彼女…及び『愛』の概物を討伐したのち、彼女が所持していた物品を拾い、鑑定や記録のあと、家族に渡したそうだ。それには…君宛てのものがあったという」

 「ッ!!」

 「潮波隊長を殴るのは今度にしてくれないか」

 「わかった」

 そこまで言うと、走り出した

 有恵の家に。


 「才貴、君の怒りは尤もだ。ぼくでも怒る。しかし、それでも、君とまたともに闘いたい」

 そんな、西宮の声は空っぽだった才貴に響くはずもなかった



 「はぁ、はあ、はぁ、はぁ」

 走って、走って走って走って走った

 それで、せめて、せめて読みたかった

 あいつが、俺になにを思ったのか

 なにを想っていたのか

 知りたかった

 

 着いた

 大きめな一軒家

 有恵は父母と3人で暮らしてた

 何度か見たことある両親は

 有恵を大切に思っていたと思う

 着いたのは夕方だったけど

 明かりはまだついてなくて

 彼らが共働きだったのを思い出した

 いなかったら…邪魔かもだけど帰ってくるまで待とう

 詩条という表札の下についたインターホンを押した

 ピンポーンという音とともに、気持ちが先走った

 しばらくして

 扉が開き、母親が出てきた

 まだ落ち込んでいるんだろう

 俺よりも心傷が深いのは当たり前だと思う

 母親は俺を見ると見るとおどろいて

 「才貴くんね!ちょっと待っててね…」

 そういうとドタドタと家の中に入っていって

 1分もしないうちに

 「これ、才貴くん宛ての手紙。有恵の遺品だけど、あなたが1番に読むべきだって、私たち夫婦で話し合って決めたの。」

 「そうだったんですか…ありがとうございます…。それと、有恵のことは…その…」

 「私たちは大丈夫よ。まだ私は元の気持ちまでは戻れてないけどね。でも、あの子もあなたっていう友人…それ以上に大切な人ができて嬉しかったと思うの。」

 母親は、つづける

 「私たちはあの子のことを忘れたりしないけど、あの子は…あなたを好いていたようだから、あなたもたまにでいいからあの子のことを思い出してくれたら嬉しいわ」

 「任せてください。俺は、絶対に忘れません」

 「ありがとう、あの子の近くにいてくれて」

 それからしばらく話して、帰ることにした

 

 家に帰って、自室で手紙を開けることにした

 「才貴へ」

 と書かれたそれは、口が開けられておらず、多分遺品のままなんだろうと思う

 ビリビリと口を破り、中身を取り出す

 両面に書かれた…5枚か?

 丁寧な字で書かれてる

 そこで、少し怖くなった

 何が書いてあるのか

 あれだけ知りたかったのに、こんなに怖く思ってしまう

 それでも、読まないわけにはいかない

 そこまで考えて、読み始めた


 才貴へ

 私は、才貴のことが好きです。愛しています。この世の誰がどう言おうと、私だけは才貴の味方でありたいと思います。でも、これを読まれてる時点でもう味方ではあれないのかもね。ごめん。

 これを書こうと思ったのは、もしかしたら私が才貴に秘密にしてることを話す余裕がないかもと思ったから。

 まず、私と潮波永香さんとの出会いを書くね。

 私と潮波さんは私が才貴と会うちょっと前に会って、お友達になったの。彼女は奥手な私を気遣ってくれてたんだと思う。才貴と私が会ってからもある程度交流はあったんだけど、才貴にはあまり紹介してなかったのは、あの子があまり人目につきたくないって言ってたから。私に話しかけてくれたのは、多分私の異質さに勘づいたんだと思う。

 私の異質さってなんだろうと思うよね。

 私、昔は変な体だったの。幼稚園の頃はよく外で遊んでたんだけど、怪我をしたら、そこから血が出るよりも先に黒い炭みたいなので傷が覆われて、炭を剥がすと怪我が治ってるっていうのがよくあって、自分でも不思議だったんだ。

 多分、これのことだと思う。

 これを書いてるのは西宮くんが転校してきてからすぐだから、まだ確信とかはないけど、多分ね。


 ここまで読んで俺はあいつが西宮と俺との関わりからこんなことを書こうと思ってたのかなんて感心してた

 いや、続きを読もう


 それで、当時の私は才貴のことがどんどん好きになってたの。もちろん今もだけどね、少し恥ずかしいな。

 ある夜に、彗星群が空を覆ったんだ。幻想的だったのを覚えてる。そのころは今なんかよりずっとそういうことに神秘性を感じてたから、お願いを心の中でしたの。

 『才貴に起こるあらゆる悪いことから才貴を守ってください』って。本心からだったとはいえ、少しバカらしいよね。

 それで、また遊んでた時に怪我したんだけど、その傷に炭が貼られなかったの。なんでだろうって思って、才貴の足に擦り傷みたいなのがあるって思ってよく見たら、黒かったんだよね。傷で黒いのかと思ったけど、あったのは炭だった。

 もしかして星が叶えてくれたんじゃないかと思って興奮しちゃった。なんでそうなったのかは…もう少し先ね

 才貴がこのことを知らなかったなら、多分才貴が怪我したことに気付くより先に治ってたんだと思う。

 それで、それを潮波さんに話したら「そんなことがあるんだ…」って言われちゃって、不思議なことなんだなあって思ったり

 また時間が経つけど、私の目の前で概物が現れたんだ。

 どんな見た目だったかはしっかりと覚えてる

 灰色でクマみたいなデカさなのに、尻尾は長くて顔は小さい。焦点があってなくて四足歩行…多分ネズミの概物かな。

 大きすぎて腰が抜けちゃったよ。

 なんて、今だからこんなこと言えるけど、あの頃なんて何が起こってるかわからないで、どうすることもできなかったから、早く逃げようとすら思わなくて座り込んでると、概物がこっちを見て、走り出してきた

 食べられる!と思って目を瞑ったら来るはずの痛みは来なくて、目をゆっくり開けると

 目の前には潮波さんがいた

 右手には不釣り合いの片手剣を持って、それでネズミの歯に刃を当ててた

 左手から短剣を突然出して何度か刺す

 ネズミは驚いてたじろいて、逃げるけど、潮波さんは手に持った剣を投げてネズミに追い討ちをかけて、そのまま命を奪った

 私は、まだ何が起こったかわからなかった

 そしたら、潮波さんが

 「有恵ちゃん、大丈夫だった?」

 と、手を差し出して立てない私を起こそうとした

 私はそんな潮波さんが怖くて手を払ってしまったけど

 「もう大丈夫だよ、あの子は死んだ。なにもいないよ」

 なんて言われて、少しずつ落ち着けたんだ

 才貴に言わなかったのはあのネズミが怖くてトラウマだったから

 それで、潮波さんと話したの

 「なんであんなに強いの?」

 「ん、なんでだろう…お兄ちゃんが強いからかな」

 「お兄ちゃん?」

 「うん、お兄ちゃん。私、実は妹もいるんだけど、その、両親がいないんだよね。親戚もいないし。それでお兄ちゃんがお金を稼いでいるんだ。多分だけど普通の仕事じゃない。でも、それって私たちのことを考えてのことだろうから、やめてなんて言えない。だから、なにができるかな、て悩んでたら急に手から剣が出てきて、これをなにかに使えないかって思ってたら、少し前に化け物退治の人と話したのを思い出して、なんだかんだ今みたいにああいう化け物と戦ってるの」

 「なんだかんだってどんな感じ?」

 「少し長いんだよね、私もその人に助けられたし、それをいろんな人にしてあげられてお金も稼げる。だから頑張るの」

 「どんな人なんだろう…」

 「これから会うけど…仕事だからもしかしたらダメって言われるかもだけど会ってみる?」

 「いいの?気になるなあ」

 「そうだ、有恵ちゃんがもってた変な力についても聞いてみようよ。あの人だったらなにかわかるかも」

 そして、2人でその人に会いにいった


 「道元さん、こんにちわ」

 「ん、永香、お疲れ様。また概物を倒したそうじゃないか。偉いぞ」

 そういって道元さんは潮波さんの頭を撫でた

 道元さんは子供の私からしたら恐ろしく大きい男性で、スーツ姿で暑そうな見た目の上に強面で、怖い人っていうのが第一印象だった

 と、道元さんは私に気付いたようで

 「永香、その子は…?」

 「この子は詩条有恵ちゃんだよ。さっき倒した概物に襲われてた子。私の友達だよ」

 「そうか…失礼した。私は西宮道元と言います。ちょっとした怪物退治の偉い人をさせてもらっているんだ。永香をありがとうね」

 「こんにちは、詩条有恵です…」ちょっと勇気をもって言った

 「こんにちは、それで永香、今回は仕事の話をしたかったから、詩条さんには席を外してほしいんだが…」

 「道元さん、この子が炭の子だよ」

 「…!この子か…」

 少し態度が変わり、道元さんは私のことを見た

 「でも、もう使えないんでしょ?」

 「う、うん…」

 「む…詩条さん、それはいつだい?」

 「え、えっと、2週間くらい前かな」

 「そうか…そうか…」

 道元さんは苦しそうな顔でそう言った

 「なるほどね。それで、どうやって無くしたとか心当たりはあるかい」

 「えっと、その、言いたくないです…」

 「ふむ…詮索はいけないことだよな…わかった、ありがとう詩条さん。すまない、色々聞いてしまった」

 そう言って道元さんは頭を下げた

 「そして、こちらから聞いたのにすまないが、やはり席を外してほしい。この子の仕事にこれ以上巻き込むと君にもさらに被害が及ぶかもしれない」

 「道元さん…」潮波さんは落ち込んだ感じだったけど、当たり前といえばそこまでだ

 「わかりました。私は帰ります、永香ちゃん、また遊ぼうね」

 「…うん!」

 そうして、私は帰った

 

 それから、しばらく普通に過ごして、潮波さんが

 「ごめんね、有恵ちゃん、私引っ越すことになったの。だからもう遊べない」

 そんな感じで別れを悲しんだりした

 それで家に帰ると

 「有恵、ちょっとこっちに来て」

 怒られるんじゃないかと思ってリビングに行くと

 お父さんと道元さんと数人の黒スーツの男の人がいて

 「どうも、有恵さん」

 「ど、どうも…」

 「さて、ご両親、彼女に説明するのはどちらが…?私でもよろしいですが…」

 「いえ、それはこちらで」

 「わかりました」

 「有恵」お父さんは言った

 続けて

 「お前にはなにか不思議な力があったみたいだな。お父さんにもお母さんにも伝えてなかった」

 驚いた。そしてなんで道元さんはそれを教えたのか怒りもした

 すると

 「隠していたのはいいんだ、でも…有恵、落ち着いて聞いてくれ」

 「どうしたの」

 「本当ならこんな時期にこんなことを言うのは間違っているんだろうが、でもな」

 父と母は泣いていた

 道元さんもかなり暗い様子だ

 「お前は、爆弾になってしまったんだ。いつ爆発するかわからない爆弾に」

 「え」

 なにを言ってるのか

 わからなかった

 わかりもしない

 でも、悪いことだってのはわかった

 「それで、お前はこれから何をしたい…?」

 どうして父がこんなことを聞くのかわからなかった

 「何をって…」

 涙は、溢れていた

 「私はまだお父さんたちと一緒に…」

 これが伝えられたのは小3だった

 現実と夢がギリギリ交わっていた私に、非情な現実は殴りつけてきた

 「才貴と一緒にいたい」

 とは両親の前では言えなかったけど

 多分これが1番だと思う

 概略すると

 私に発言した「炭」の能力、名前を『博愛国の気温(ディビナー)』なんて言うみたい

 かなり昔からこの能力は確認されていて、どんな能力かというと

 傷を負うと黒い炭がどこからともなく現れ、傷を覆い、または塞ぎ、炭が崩れるとともに肉体が再生する

 能力は譲渡することができ、本人が心から信頼する者に託すことができる

 譲渡したのちに元の能力者は以上の能力が使用できなくなり、能力が変化する

 変化後の能力を『革命国の政治(クライシス)』と言い、自身ではいつ発動するかわからない能力となる

 クライシスは自身の能力をもつ概物に昇華する能力であり、発動したあとは意識を保てず、概物として生き続ける


 こんなところかな

 道元さんは私に選択肢をくれた

 いま、討ち倒されるか

 概物となったあとで討伐されるか

 幼くてもいつ起爆するかがわからない以上、このときに伝えられたんだと思う

 親は初め信じられないと言っていたけど、私の炭は潮波さんにたっぷり見せてたし、いろいろな話が過去の話と一致していたから、渋々納得したんだろうね

 もちろん私はまだ生きたかったから後者を選んだ

 すると道元さんは

 「わかりました。しかし、一応念の為にこちらを」

 といって、チョーカーみたいなのを渡して

 「それは、あなたが概物となったときにわれわれに位置情報を与えるものです。ご両親からは承認されていますが、そちらは普段は我々に発信しないため、あなたにも話しておきますね」

 私はわかったと言ってそれを付けた

 道元さんが帰ると私たちはただ泣いていた


 才貴に話してなかったのは、才貴が私のことを嫌うかもと思ってたから

 ごめんね

 それで、潮波さんとはこの学校の特学制の説明会で会った

 久しぶりの友人との再会でびっくりしたけど、そのときに

 「やっほー永香ちゃん、ひさしぶりだね」

 「…有恵ちゃん、大変だったね」

 「まあ、ね」

 「これ、能力発動を予測する装置」

 「ぇ?」

 「正確には能力が発動する前に見られる周波数を観測するんだ、これを付けていれば私たちに有恵ちゃんが変貌するまでの約14時間前に情報が送られる。そしたら私がこの教室に来るから、あなたはそれが発動する直前だってわかってね」

 「そうなんだ…ありがとう、また遊ぼうね」

 「また、ね…」

 潮波さんは変わってた

 昔みたいな粋はなくて、ただの仕事人だった


 そんなところかな、昔の話は

 私は死ぬまで才貴を愛してると思う

 いや、死んだ後も愛してる

 才貴に告白して、どんな返事をするかわからないけど

 私のことを愛してくれていたらどれほど嬉しいかって

 思っちゃうんだ


 詩条有恵より ありがとう、私といてくれて



 読み終わったら、俺は手紙を封筒に戻してベッドおきにある目覚まし時計のとなりに、封筒を置いた

 前を向かないといけない

 愛してくれたのに、愛したのに、俺が死んだらあいつが救われなさすぎる

 でも、ちょっとだけ浸らせてくれ

 それから、俺は泣いた



 次の日、学校に行くと、西宮がいた

 と、芦上がやってきて

 「よ、才貴?なんか元気そうだな」

 「まあな、ちょっと立ち直っただけだよ」

 「そうか…まあいいや課題しようぜ、どうせしてないんだろ?」

 「残念だが今日はしてきたぜ」

 「な!裏切ったな」

 「まあまあ、んなこと言うなってほれノート見せてやるから」

 「許す」

 そう言って芦上は自分の席に戻った

 さて…

 「おはよう西宮」

 西宮は本を読んでいた、なんの本かはどうでもいい

 「おはよう才貴、その顔は…なにやら読んだようだね」

 「まあな」

 「今だったら君からの拳を受けるだけの覚悟はあるよ」

 「んなことするやつはいねぇよ」

 「そうか…でもぼくは君にひどいことを」

 「まあ、なんだ、お前の立場がどうってのはわかってたし、あいつがああなったのは仕方のないことなんだろ?」

 「…そうだ」

 「それで、潮波に会わせてくれ」

 「…文脈の飛躍があるようだが…」

 「別になにかやろうって訳じゃない。もう一度雇って貰うんだよ」

 そのとき、西宮は驚いたようで

 「そうか…わかった。話をつけておこう。君の目的は伝えないよ、もしかしたら雇用目的ってわかると断られるかもしれないからね」

 「ああ、構わないぜ」

 そう言って、俺の友達は微笑んだ



 放課後、4階の渡り廊下に"絶対"は立っていた

 「夕方ってどういう挨拶が正しいんだろうな」

 「好きにすればいいんじゃないか」

 「じゃあこんにちは、潮波」

 「ああ、こんにちはだ」

 「さて、本題に入るか」

 「うむ、何を話しにきた。僕は暇ではないよ」

 「俺を、また雇ってくれ」

 潮波は予想外といった風で

 「それは…てっきり殴りにきたかと思ったよ」

 「西宮も言ってたぞ」

 「ははは…そうか」

 「それで?お返事は如何様で?」

 「構わないよ。しかし、なぜそんな思考になったんだ」

 「手紙を…遺品を読んだ」

 「そうか…やはりあれは君に啓蒙を渡すためのものだったのか」

 「あんた、あいつを助けてくれたんだってな、ありがとう」

 「ああ、礼には及ばない。…君は僕を恨んでないのかい?」

 「そういうあんたは?あいつが能力を手放したのってある意味俺がいたからだろ?友達を失ったようなもんだ」

 「そんなことはない。あの子がしたくてしたんだ。それにあの子の君への想いを否定すると言うのはあの子を否定するようなものだ。僕がどうこうできる話じゃない」

 「それもそうだな」

 「ぼくの質問には答えてくれないのかい?」

 「ん、いや、俺もお前と同じだよ。あいつがそれを認めてたんだろ?それに、お前があいつを倒してなけりゃあいつはさらに人殺しをしてただろうな。それはあいつにとって辛いはずだから、いまはありがたく思っているよ」

 「そんなものか…似たものというわけだな、僕と君は」

 「同じ括りではないけどな」

 「では、本日付けで君を対概局員として認めよう。西宮にでもつけておくかね。なに、業務は勝手にしておくさ」

 「また事務員さんの仕事が…俺が言える立場じゃないが」

 「違いないな」

 冗談を言える程度には俺は復活になった

 「それで、君が能力を誰かに譲渡したときは…」

 「そのときは俺の首を刎ねてくれ。下手な迷惑はかけたくない」

 「そうか、わかったよ」

 「じゃあ俺は帰る、ありがとうな」

 「僕こそまた君が働こうとしてくれることに感謝したい」

 潮波は基本的にこっちを向いていなかったが、振り向いて俺にそう話した

 「それもだけど…あいつの友達でいてくれてありがとうな」

 潮波はハッとして、また正面を向き、少し時間を置いて、4階から飛び降りてどっかに行った

 やっぱ化け物だな、あいつら

 

 「才貴、どうやら成功みたいだね」

 「ん、そうだな。てかお前いつからいたんだ」

 「初めから…と言いたいが隊長が飛び降りたのを見てこっちに来た」

 「あそ、そういえば俺、お前の下につくらしいぜ」

 「そうか、それは…ありがたいものだな」

 「西宮、まだ飯食いに行ってないな」

 「ふむ」

 「さすがにファミレスに行けるほど暇じゃないだろうからコンビニで買い食いしようぜ」

 「…いいよ、僕おにぎりとかあまり食べたことないんだ」



 そうやって、俺のかけがえのない日常はもう帰ってこないが、また別の日常が始まった

 俺は、いつまでも有恵を愛してる

飯食って風呂入ってテレビ見て、寝る

そんな毎日をこの上なく愛しく思ったりしませんか

ぼくは…たまにあります

また次回でお会いしましょ

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