表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日常が一変すると日常になる  作者: 起臥黎明
5/7

感謝の対象•ありがとうの対価

特にないです

早速読んでいただけると幸いです

 「さて、才貴。きみの活躍は少なくともある程度の被害を抑えたわけだ。ゆえにぼくからのお礼はすでに終わったということでいい、ときみは言ったけれど、国概局からのお礼はまだだからね。いましばらく待って欲しい。」

 「いや、だから礼なんて」

 「こちらとしてもお礼を受けてくれた方が都合がいいんだ。申し訳ないけれど」

 そういって、困らせた顔をした西宮は少しはにかんだ

 これ以上断ると機嫌を損ねそうなので

 「わかった。仕方ないから受けてやるよ」

 西宮は感謝しているといった顔で

 「ありがとう」

 と言った

 手の炭がポロポロと落ちていったのを感じた



それからしばらくして

 国概局の役員が来た

 「君が例の櫛喰才貴くんだね。今回はどうもありがとう。」

 「…どうもっす」

 事務的な人間だ…が、高圧的ではない…かな?

 「今回のきみの功績は、概物の発見および駆除。私たちはあなたにこれと見合うだけの報酬を渡さなければなりません。」

 「個人的にはそういうのいらないっすけど、もらった方がいいんですよね。」

 「話が早くて助かるよ」

 西宮の方を見ると、苦笑いしたようにしていたが、どんな報酬なのだろうか

 「それで、報酬というとどういうのですか?」

 「そうですね…とりあえず日本円にしてこれくらいを渡すことになっているのですが…」

 金なのか…と思いつつもどれどれと拝見すると

 そこには一般高校生が三年間バイトしたくらいじゃ稼げないくらいの値段がついた小切手があった

 「いや、さすがに受け取れないですよ」

 「とは言ってもね…われわれは概物を駆逐した者にはこれと同じかそれ以上を渡すようにしているんだよ」

 うーむ。例えばこの額の金を受け取ったとして、その金をどこに仕舞うか…母さんに教えるにしても説明が面倒くさいの極みだ

 ……ん?

 「そういえばですけど、この概物ってどうやって運ぶんですか?」

 「…機密的な部分があるためお応えすることはできません」

 急に真剣な顔になって役員としての顔を出してきた

 なるほど…

 「だったら、その金の代わりに」

 少し間を置いて

 「おれを西宮と一緒に概物退治する役目をください」

 西宮は驚いた…が、口角がわずかにあがり、目をつむった

 役員の人は、どうしたものかと考えている様子だ

 「あー、無理言っちゃいましたかね」

 と、さすがに行きすぎたかと疑問に思うと


 「僕が許す。櫛喰才貴は西宮蒼治郎直属の外部助手とする」


 役員の人の後ろから聞こえたのは透き通ってはいるが活気のある、聞いたことがない声がした。

 「…なぜ、あなたがここに」

 西宮は整った顔で眉を寄せ、疑問と不機嫌をほんのわずかだけ表に出したような表情でそう言った

 「僕は見に来たんだよ。櫛喰とやらがどんなやつか、をね」

 だれだ…見たことも聞いたこともない…

 真っ白なロングストレートの髪はまるで雪のカーテンのようで、紫色と緑色の、宝石のように光を反射する瞳と、スカートを履いているためおそらく女性でありながら、少しばかり露出した部分からわかる筋肉のついた柔らかそうな肉体は、努力と才能のかたまりであることを思わせる。

 「ああ、自己紹介が遅れたな。櫛喰よ。僕は潮波永香という。国概局戦闘処理部門二番隊隊長。そこにいる西宮の上司だ。よろしく願う。」

 ひどく上からで、自信によって構成された文脈

 こんな人間は、どのようにしたら生まれてしまうのだろう、とすら思ってしまう

 役員の人が唖然としていたが、すぐに正気をとりもどし、少し早口で

 「潮波様?!なんてことをおっしゃるのですか?!そういった手続きは、行うだけでも相当の時間や行程が…」

 「僕が言った。それだけで上には通じる。無茶のツケは僕が給料として払おう。気にするな。」

 豪語された役員は、言い返す余地なく決定された

 頭を悩ませてはいたが、開き直ったようにふっきれて、渋々了承していた

 「それより、櫛喰。貴様どうやってこの概物を倒した?見たところ概度は1ではあるが、常人で対処するにはいささか手に余ろう。まさか貴様はもとから能力が使える、もしくは存在力の概念を知っていたというのか?」

 「いや、それは…」

 睨みつけられて、概物や西宮の放った気配とはまた別の、本能から感じる恐怖があった

 横目で西宮を見やると

 軽くうなずき、全て任せると言った様子だ

 「ああ、俺の能力は昨日発現した。その所以とか原因とかはわからないけど、存在力とかいう考え方を知ったのも、そのときだ。西宮…から教えてもらった」

 西宮にすまないと思いつつ、本当のことを話した

 「…」

 眼光の鋭さは鈍らず、針地獄を味わっている気分だが、その静けさを壊したのは潮波の声で

 「なるほど。報告通りだ。貴様が嘘をついているということはないようだ。西宮が貴様を半殺しにしたというのは知っていたのだよ。貴様は嘘偽りなく説明した。信用する最低限の条件は達成されたわけだ。」

 「つまり…?」

 「貴様を…改め君を試したわけだ。僕は報告だけで他人を信用できたいタチでね。」

 「は、はは…ご納得いただけたなら本望ですよ」

 そんな、笑いともいえない笑い声をあげて、わずかに虚勢を張る。

 「てか、なんでうちの制服を?」

 「ん?ああ、僕はこの学校の、君と同じ学年の生徒さ。」

 「え?」

 いや、こんなやつ知らない…他の学年ならともかく、同じ学年…?

 「分からなくとも無理ない。僕は特別修学制を享受しているのだよ。故に学校には来ておらず僕のことを知っている者の方が少ない。」

 つまり、この潮波というやつは超ハイスペック型JKってわけか…

 「さて、君こと櫛喰才貴の管理は西宮に任せよう。いいかな、副隊長。」

 「…もちろんです」

 「では、僕はお暇しようか。」

 そう言って潮波は窓から上に飛んでどこかへ消えていった

 どうなってんだよ国概局…

 

 「で、では、櫛喰様の対応はほとんど確定したも同然です。残りの雑務等は私たちが行いますので西宮様はどうぞごゆるりとしてください。また、櫛喰様はすでに関係者であるため、先ほどの質問についてお答えすることができますが、いかがしましょうか?」

 「あーいや、別にいいですよ。深く気になってたことはないし…」

 先ほどというとこの概物をどうするかって話かな

 「承りました。では、私はこのあたりで」


 「それで…西宮はどうするんだ?」

 「どうするって?」

 「これからだよ。」

 「これから…特にないな…」

 「そっか、じゃあ祝杯をあげにいこうぜ」

 「?」

 どうやらよくわかってないみたいだ

 「どっかのファミレスにでも行って飯食おうぜ。かるーく」

 「…」

 黙りこくっている西宮は、どこか羨ましく見ている感じがしたが、なんとなく悲しそうに感じている気がした

 「あー、なんかあるなら別にいいよ。すまなかったな」

 「こちらこそ申し訳ない…いずれ埋め合わせはしよう」

 「じゃあ楽しみにしとくよ、ありがとう」

 俺が教室から去る時、西宮の顔は見えなかった

 が、最後に見たあの顔はごめん、と心から訴えてるようにも思われた





 西宮は疑問に思う。友人と一緒にいてもいい理由を

 「隊長、なぜ彼を認めたのですか?」

 「僕の気分次第という答えでいいかい?」

 「質問に質問で返すとは、いささか無理がありますよ」

 「ははは、別に構わないだろうに。今度飯を奢ろう」

 「結構です。友人との予約が先にあるので」

 「君は堅いね。相変わらず」

 「あなたはどこまでもいい加減ですよ」

 「上司は敬うものだよ」

 「上司は正しくあるものです」

 「減らず口だなあ」

 「あなたが饒舌なだけですよ」

 「それはそうだ。僕は意識しなかったら2時間くらい話し尽くしてしまうからね」

 「それで、真剣に答えてはもらえないのですか?」

 「…」

 「なにか、あるのでしたらひとこと願います」

 「彼の能力、炭と言ったね。炭というのは恋慕からなる能力の頂点とされるものと同様だ。愛憎の…」

 「そういうことですか。彼が暴走したのならば、ぼくが対処しろというご指示ですね」

 「ご明察の通りさ。彼の監視、任せたよ」

 西宮は心配する

 自分の初めての友人が、いずれ自身の手で殺してしまわないかと

 「ああ、そうだ。」

 隊長は思い出したように吹っ掛けた

 「君が彼の殺害を躊躇するのであれば、僕が殺してあげるから、頼りにしたまえ。されたくないなら君が彼を律せよ」

 西宮は命令を頭で4度反芻して答える

 「そのときは、ご助力していただけるとありがたいです」

 そんなことがないように、命令を確実に果たそうと決めた。

 「君は堅いくせに素直じゃないね」

 破壊の権化はしずかに嫌味を言った

 西宮は、この言葉を聞き流すことにしたのだった

 だってそれを受け入れるということは父の意向に逆らうということと同義であるからだ

 静かに、天災は目を閉じた





 俺はあいつのあんな切ない顔を想像できていなかった

 あいつがどんな人生を歩んできたのか

 まだ2日…いや、ちょい前に見たことはあるが、関わりをもったのは昨日…そんなやつのことを知り尽くすなんて無理だろうけど、あいつの事情とかってどんな感じなんだろうか

 俺の友達は芦上とか田中とか、悪びるおふざけができるやつらが多いけど、西宮みたいな生粋の優等生とは初めて友人と呼びあったかもしれない

 友達ってなんだろう

 一緒に笑い合う?なにかと共に悪戦苦闘する?飯を食う?

 それは仲間の定義じゃないか?もしくは家族

 じゃあ、友達っていえるのはどこからなんだ

 もっと、根本的な…こう、だれであってもこいつならば友達になれるってわかるような…

 「んー?才貴だー」

 聞き慣れた声がする

 それも明るく元気だ

 「有恵…」

 そこにいたのはどこかの帰りと見られる有恵だ

 なんの用だったかは知らんが、会えたことは嬉しい限りだ

 「なあ……」

 話しかける

 有恵はきょとんとして聞き始めた

 「友達ってなんだろうな」

 しばらく、有恵は聞き入っていたが少し驚いたようにして

 ちょっと考え

 「そうだなーなんでそんなこと聞いてきたのかしらないけど」

 一拍だけ間を置いて

 「多分、『コイツのためなら命をかけられる!』って強く思えるんだったらそれは友達なんじゃないかな」

 …有恵はつづける

 「でも、それって仲間とか家族、恋人愛人とかでもいえるよね。だとしても、お互いが『友達だ』って思えてるなら、友達でもなんでも、仲良しっていえると思うよ」

 じゃあ、俺があいつのためにしてやれるとしたら、有恵の理論だと命をかけるってことか…

 いや、命をかけるってのは比喩か

 つまり何でもしてあげられるってわけだ

 余計に何をしてやれるかわからなくなった

 「もし才貴がその友達にしてあげられるとしたら、友達になっておくことだよ。深く考えるのも複雑に想うことも、たぶんその人にとっては嬉しいだろうけど、ただの友達っていうのも頼もしいはずだよ」

 「…!」

 友達でいてやる…いてもらう…

 「なるほどな、ありがとう」

 「どういたしましてー」

 「お礼にアイスか飲み物でも買うよ、ちょいと付き合えるか?」

 「いいのー?じゃあ甘えるー」



買ったアイスコーヒーは冷えていたが、悩みをぶちまけた心は、なんだか暖かかった。

一回データが吹き飛んでちょっとだけ落ち込んでましたが、なんとか書けたので載せます

ここまで読んでくださり、ありがとございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ