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日常が一変すると日常になる  作者: 起臥黎明
4/7

友好条約締結の乱

腰痛くて歩けない

そろそろなんとかせんとなあ


それよりお寿司美味しい

赤身で満足できるの偉いぞぼく

 さて、目の前の爽やかくんとの協定が結ばれたわけだが

 俺自身ができることなんて何かあるだろうか

 「とりあえず校内をいろいろ回ってみようか。概念というのは人の思いが深く関係しているからね。強い思いが必要なんだ」

そういって、俺らは徘徊に向かう



科学室

 科学部がいろいろしている

 物理•化学•生物•地学それぞれに実験室、講義室、準備室、研究室があり、うちの学校だとかなりお金がかかっているところといえる

 科学部にいるやつらの人数は全部活中2番目に多い

 ゆえにわちゃわちゃ度が高い

 そして幽霊部員が1番多い部活動でもある

 「科学室というと、どういう概念があるんだ?」

 「例えば…実験とかかな」

 実験か…実験といえばガスバーナーの使い方、だれも覚えてないよな。そのくせテストには出しやがるし

 水圧も高いよな、理科室って。

 たしか指についた薬品を簡単に洗い落とすためだったか

 「……他のところへ連れて行ってもらっても?」

 「わかった」


家庭科室

 被服室、調理室、準備室で構成されたところ

 裁縫をするなどして、ファッショナビリティを鍛えるところ、といえる

 「こういうところは学習内容的に針や包丁を扱うため、少しばかり怖い思いをする場所だね」

 「なら、ここも候補といえるのか」


社会科室

 日本史•世界史•地理•倫政(倫理政経など)それぞれに講義室、準備室があり、全てをまとめた大きい資料室がある

 こういうところって古いインクの渋い匂いがするよなあ

 「………」

 「無言だな、なんだ?考えごとか?」

 「ああ、こういったところというのは歴史があるから、昔からある思いとかが残りやすいんだよ」

 なるほど。たしかに土偶とか埴輪ってのは人の思いがあったってよく聞くもんな

 

図書室

 別棟の三階建で歴史小説だったり史記だったりといったかなり古いものから新書やライトノベル等もある。利用数がどんなものかはわからないが、記名簿を用いた貸し出しによると数十年前に借りられてそれ以降一切触られていないものもあるだろう

 ハムレットとかを読んだ人はわかるが外国の劇作を日本語訳にすると独特な言い回しがあって面白かったりする

 「図書室では静かにするのがマナーだから小声にするが、こういったところも歴史があるからね、でも人通りが少ない分、概念が溜まるようなことも少ないだろうね」



その他、色々な場所を回ったが、西宮が納得するには至らなかった


 「なあ、やっぱいないんじゃないか?」

 「ふむ……」

 そんな筈は…といった顔だな

 「あ」

 ふとした表情で西宮が顔を上げる

 「どうした」

 「そうだ、廃教室。いまだと使われることがない教室はあるかい?」

 廃教室…あるとすれば旧校舎か…?いや、あそこはたまに使われるとかなんとかあったからな…人の思いがあるとしてもたまにだから強みがあるのか…?

 ……あっ

 「ある」

 「ほんとかい!」

 そうだ、ある。

 3階別棟の7組。

 あそこは十数年前にいじめが原因で死人が出たため、妙に忌み嫌われ、このクラスはハズレという気持ちが生徒の間で流行ったというのを聞いた

 「なるほど、向かってみるか」


移動中

 「そういえばだが、きみと詩条さんはどういった関係なのかな?幼馴染みたいだが」

 「ん?ああ、800字くらい必要だが聞くか?」

 「なんだか具体的だね」

 そうだな、どこから話すべきか

 でも長話するには時間もないからある程度割愛するか

 「俺が小坊のころ、1人で人形持ってたあいつに話しかけただけだよ。そこからは腐れ縁というか近所のよしみというか、幼馴染ってのは概ね正解だよ」

 「…そうか、よくわかったよ」

 「よくわかる要素あったか?」

 「詩条さんがきみを好く理由のもとが、ね」

 「?」

 あいつが俺についてくる理由なんて言葉で表せるものなのか?俺はできないと思うが

 と、そんなところで


 「着いたぞ」

 「…なるほど。やっぱりいるね」

 「は?」

 「さっき4階から景色を見ていた時、なんとなく気配がしたんだよ。ここら辺とは思ってなかったけどね」

 「そうか…」

 あの渡り廊下は学校で西側にあり、科学室も西側にある

 だからあのとき科学室には概物がいないと早々に決定したのか

 「それじゃあ、始めるよ」

 「えっ」

 鳥肌が立った

 だって、それは昨日感じた悪寒だったから

 と同時に

 埃が激しく宙に舞う


 「なっ」

 なにが起こった

 「下がっていてもいいよ。いま、こいつのテリトリーにぼくの存在力を撒いた。ナワバリに入られて怒ったんだろうね」

 「じゃ、じゃあお前が原因なのかよ!」

 教室から放たれる明らかな敵意

 こんなにも鋭いのか

 この前の概物が俺に向けたのは猛獣が餌を屠るときの、食い意地みたいなもので

 西宮が俺に向けたのは殺意だった

 どちらも、棘が刺さったようなものだったが、今回はデカい刃物を首元に突きつけられたような感覚だ

 

 今回の概物は、なんだ?花瓶みたいな感じだ

 まずデカい

 こんな大きさを普通に作るなら名匠でも数ヶ月はかかるだろう

 そして花が活けどられている

 あれは…ピンクと白の花弁…シクラメンか

 なるほど、シクラメンといえば死と苦を連想させるとかあったな

 オカルトか?

 その花の中央に目玉が一つだけあり、こちらを睨みつけている

 そして花の根が蔓のように伸びており、血のような液体が滴っている

 「どうやら、いじめの概物らしいね。学校らしい」

 「なんか、ヤな感じ…だな」

 「違いない」

 「どうすんだよ、この前みたく倒すのか?」

 「まあ、そうだね」

 「でも、こいつっていじめられたってのが原因で生まれたんだろ?」

 それをただ倒すってのは少し酷じゃないか?

 「いや、あれはいじめたという概念からも来ている。また、あれを倒さなければ、たとえぼくが触発せずともいずれ負の感情が溜まって起きていただろうよ。早めに見つかってよかった」

 「そうか…じゃあ、この前やったみたく頼むよ」

 「……少し難しい」

 「は?」

 なんだよ、出し惜しみでもしてんのか?

 「あれは、ぼくが能力を使っていたからできたんだ。なによりあれをここで使えば校舎の半分が消し飛ぶよ。そうなったらぼくの記憶操作も効かなくなる」

 「へ?それじゃあどうするんだよ」

 「ぼくは…これで君を守るよ」

 そういって西宮は上着を脱いで右手に巻きつけた

 いや、それよりもいま守るって言ったか?

 「攻撃は、君に任せる」

 「はあ?」

 「一度殴り合ったからわかるが、きみの炭には相手の存在力による防御を無効化する能力がある」

 「なにいって────

 「来るよ」

 蔓が打たれる

 それは鞭のようにしなり、俺の命を奪おうと飛んでくる

 それを西宮は右手で受け止め、弾き返す

 そのとき金属と金属がかち合ったときのような音がしたが、鉄でも仕込んでんのかよ

 「……」

 そこからも飛んでくる無数の蔓を全て西宮は弾き返す

 攻撃しろってもどう近づくんだよ

 「なあ!」

 「なんだい?」

 「なんでお前は攻撃できないんだよ!」

 「ぼくの攻撃は基本的に派手なんだ。ゆえに周りの被害が甚大になりやすいんだよ」

 「じゃあお前をここに派遣したの失敗だろ!」

 「ははは、言えてるね」

 笑ってるっ場合じゃっないっだろっ

 西宮のやつ、おれの歩幅に合わせて防御の仕方変えてやがるのか?

 右に出れば西宮も右に出るし、左なら左、後ろなら後ろ

 「じゃあ、お前が合わせろよ!」

 コクっと頷くことなく歩幅を合わせ続けていることから、この命令には肯定で返しているのだろう

 ならば、と一歩前に出て、目前の化け物に近づく

 どんどん、ジリジリと、ゆっくりと歩いていく

 あと3歩というところで一度止まる

 そしてどのタイミングで行くべきか悩むところ

 その考えを破ったのか、西宮が思いっきり蔓を天井に弾き返す

 くそ、今だ行けってことかよ

 「うおおおおおおお」

 そう言って俺は駆けた

 右で拳を作り、西宮がかつて概物を倒したように殴りつける

 瞬間、反作用の力により拳が傷つくが、その傷が黒鉛に囚われ、出血することなく傷が塞がる

 「殴れ!」

 そう言った西宮は、普段の丁寧な口調を一変させ、興奮したかのようにしていた

 「んんんラッ!!」

 そうして右腕で殴られた概物は粘土みたいにぐにゃりと凹んで後ろへ飛ぶ

 さらに右腕で思いっきり殴り直す

 さらに殴る

 この繰り返し

 俺の右腕は永遠に傷つくが、その傷もすぐに塞がり、また殴る

 西宮は概物のする悪あがきが無駄に俺の方へ来ないよう弾き返し続けている

 体力の限界を感じたころ、西宮が

 「もういい、ラスト一発頼むよ!」

 そう言って俺に概物の最期を託す

 「わかった!成仏しやがれ!」

 ゴンっと大きい音を鳴らして概物の気力が事切れる

 すると、概物の花瓶が割れ、中に入っていたであろう血の水が、ドロドロと流れて明らかに死んだということがわかった


 「…ふぅ」

 「お疲れ様。」

 「いや、お前もおつかれさんだぜ」

 そうやって、お互いの功績を労った

 「お前は俺と有恵を殺そうとした。それは許せないし、なんなら今からでも殴りたい。けど、お前にもお前の理由があって、なにか事情があると思う。何より、これでお前が平和…日常を守ろうとしてるってのがわかったから、認めるよ」

 「…ありがとう」

 「んで、こいつはどうするんだ?」

 「ああ、それなら任せてくれ。こちらで対処しよう。」

 「そうか。そういえばお前ってなんなんだ?なんで概物を駆除してんだよ」

 「…」

 「だんまりでも別にいいぜ、話しにくいならそれでいい。じゃあ俺は」

 「話してもいいよ」

 「じゃあ、頼む」

 「ぼくはね、国家対概物対応局戦闘処理部門2番隊副隊長、西宮蒼治郎。よろしく頼む。」

 なんか…漢字が多くてようわからんかった

 けど、副隊長ってことはそこそこすごいんだろうな

 「なんか、すごいんだろうな」

 「ははは、まあその解釈でも構わないよ」

 「話は変わるというか戻すけど、この事件はもう解決ってことでいいんだよな」

 「もちろんだとも。いずれ礼を贈ろう」

 「いや、いらねえよ、んなもんのためにやったわけでもあるまいし」

 「しかし…」

 「なら、友だちになってもらうか」

 「…!」

 整った顔立ちがくずれた

 俺はつづける

 「お前を許すことはないけど、友だちとして認めてやるって言ってんだよ」

 「…ふ…ふふふ」

 笑いを堪えているようだ

 「ははははは」

 笑った。はちゃめちゃに。

 「すまないが、ぼくはきみのことを友人だと思っていたよ。殺し殺されの関係だったとはいえ、共に戦ったんだ。そりゃあもう戦友と言わずしてなんとするんだ。でも、きみの申し出、ありがたく頂こう。よろしく、友人くん」

 「ああ、天災戦友」



協定は、永久条約となって2人の国土をひとつに為した



天災は、いずれ俺の最も信用できる友人になるだろう

とりあえず寝ようと思います

(追記.ここまで読んでくださりありがとうございます)

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