明日の顔はどんな色
暇になったので書きました
うーむ、なにをしたいかについて考えてみたけど
フグを飼ってみたいです
ただ、フグって凶暴で、歯が鋭くて顎が強いので危ないんですよね
飼ってみたいなあ
先日のいざこざで、世界の異質さの一端を知った
まるで魔法、いや概物という科学の通用が薄い存在がいるのに、道理を求めるのは少し違うか
しかし、人間が概物のような能力が使えるなんて…
「才貴ー?どうしたのー?」
明るい声がする
「あーいや、考えごと」
思考の邪魔をしたのはかわいい小悪魔といったところだ。
「考えごとぉ?珍しいねー、いつも小難しい顔してるけど、今日は一層その色が強いよ」
「俺はいつもどんな顔してんだよ」
「それはねー」
「おーい才貴ー!」
芦上だ。
なぜだか久しぶりな気がするな
「今日さ、予習しないといけないとこあったっけ?」
「予習?あー英語の文法がどうたらとかあったなー」
「んで、やってきたか?見せて欲し」
「言わなくてもいいだろ」
ですよねーといった表情ではにかんだ
「一応聞いとくけど有恵は…?」
有恵は笑った。
無邪気という言葉が似合う笑い方だ
そして「わかってるよね?」という圧を感じる
ですよねーといった表情で芦上ははにかんだ
前にもこんな会話があったが、俺と芦上は課題とかを学校でやるタイプだ
対して有恵だが、うちの学校には特別修学制というものがあり、考査•模試等の試験の点数で全て9割を超えるという条件で評定が全て5になるというものがある
ちなみに学年で4人しかいないらしい
彼女がその1人だ。
ゆえに彼女は課題を提出する必要はないし、なんなら学校に来るのはテストを受ける日だけでいい
進学コースですら9割というのはそう取れるものではないため、それだけで彼女自身の学力の高さが見て取れるだろう
噂では学力四天王だかなんだか言われている
しかし彼女は進学コースには行かないと担任に宣言しているらしいが、その理由は謎である
「そういえば何の話してたんだ?」
「んぇ、ああ、俺の顔がどうって話だな」
「どんな話だよ」
笑いながらツッコミをいれる芦上
日常って感じだ
「ん?あれは…イケメン転校生くんじゃん」
背筋が凍った
命を刈り取る腕
何にも屈しない脚
見るだけで怯まされる両目
殺されかけた俺だからわかる、あの静かな佇まい
そこから発せられるのは一種の殺気といえる
「…。」
「む、お前の顔、小難しい感じがするな」
「……どんな顔だよ」
教室の、なんとはなしに感じる生温い感覚に鬱屈を感じ、わずかにうるさい声に日常を感じる
「やあ、才貴くん」
昨日聞き慣れてしまった声がした
「…」
無言で返すかどうか、ほんの少しだけ考える
結論は
「ああ、おはよう西宮」
返事をした。理由はない
すると
「また放課後、同じ場所で」
他人には聞こえない、小さくも爽やかな声がした
「…」
こちらには無言で返す
さて、昨日言ってた謝罪とやらか、はたまた攻撃してくるのか
後ろの2人は西宮に挨拶をされ、笑いながら話をしてる
今度は俺の顔を気にするやつがいなかった
おれはいま、どんな顔をしているのだろうか
昼休み
「英語のセンセーすーぐ怒るよなあ。やってない方が悪いんだろうけど」
「たしかに口うるさいのが過ぎるよな、とくにお前」
「まあ、おれってテストの点数軒並み悪いからなー」
「自覚はあるのか」
「ないやついるの?テストの点数への意識」
箸片手に芦上はツッコミをいれる
「なー有恵ー、勉強教えてくれよー」
「いいよ、じゃあ放課後一緒にする?10時間くらい」
「おっと、用事思い出したからやっぱキャンセルで」
「キャンセル料いるけどどうする?」
「今度ジュース奢るんで許してください」
それは見事な土下座だった。
箸は机の上でバツ印を作っていた。
「じゃあ才貴はどうするー?」
「あー俺は放課後用事あるからいいかな」
「そう、残念。わたしも付いてきたいけど、ちょっと厳しそうかなあ」
「お前も用事あったのかよ」
つまり芦上への脅し(お勉強会への招待)はジュース券を獲得するためだったというわけだ
芦上は苦笑いが止まらない
だったら俺に誘ったってのもなにか意図があったのか…?
そんな談笑をしてたら短い休みは予鈴とともに薄れていった
「じゃあ教科書94ページ」
事務的な授業
いまの俺の顔はどんな感じだろうか
課後
そうやって1日の疲労で足が重いなか、階段をひとつ上るごとに重力に憂いていた
4階の渡り廊下
そこで天災は眺めを静観していた
「……来たぞ」
沈黙を破ったのは俺だった
「うん」
「それで?何の用だよ。殴り合いならもう結構だぜ」
「まさか、きみらに関してのいざこざはもう終了した。それに、あんな血みどろなやつは後処理が面倒なんでね」
そう言って、天災は冗談のように言った
加えて妙にかしこまり
「…改めて失礼する。先日の君への暴行、そしてここにいない詩条さんへの無礼、今さらながら謝らせていただく。ごめんなさい。」
「俺への謝罪はどうでもいい」
「では詩条さんに謝りに行ったほうがいいかい?」
俺の、有恵を巻き込みたくないという心中を見透かされたような皮肉だった
癪なやつだなあ
「じゃあ、俺帰ってもいいか?」
別に用事もないしな
「いや、それだけのためにきみを呼んだわけではない」
なに?
「きみはこの学校の生徒たちについて、どの程度の理解がある?」
「…なんなのかよくわからないが同学年の名前とか性格とかある程度の成績ならなんとなく知ってるぞ」
「? この学年は500人いると聞いているが、その全てかい?」
「まあな」
驚愕の顔を露わにした
一般的にこういうものは知っていたりしないのか?
「ふむ…ならばありがたい」
「ありがたい?」
「少し話をしよう、時間は?」
「べつに。完全下校時刻までならいつまでも。」
「そうか、ならば話そう。実はこの学校に概物がいる」
?!
概物…概念を具現化した怪物。
俺たちが少し前に遭遇した災害。
「なにを…」
「あてずっぽうとかではない。根拠はある。最近、ここ周辺でいくつもの概物が確認されている。その調査の一環としてぼくが派遣された。ぼくは他の捜査員より戦闘が少しばかり得意だからね。調査に来た者はあと数人いるが、目立たないために基本的には表立って現れることはない」
「概物が…とりあえずその根拠とやらを聞いてもいいか?」
「ぼくの異能力が記憶操作だって言うのは知ってるよね。それと同じように、概物を探知する能力がある。その能力でここにいるということがわかったんだよ」
「…」
唾を飲むしかない
「そこで、最近動きが怪しい生徒がいないかを調べようと思ったんだ。周りの生徒に聞くとどうやらきみがそういうのに精通してるって聞いてね。しかしきみにはぼくの能力が通用していなかったからね。もしや、と思ったんだよ」
そうやって、目を閉じながら喋っていたのを、話し終わりあたりで軽く開けて、疑問を吹きかけるようにして俺の目を見た
「納得はしないが理解はした」
だからあんな早い段階で聞いてきた、のか。少し考えなしじゃないか?いや、叩くなら早めの方が被害の規模も小さくなるって寸法だったわけだ
「そうだな、動きが怪しいというと………うーむ、いないと思うぞ」
「ふむ……ああ、そうだ。そういえばきみにも能力があったね。なんだい?あの黒いのは」
「すまんが俺にもわからない」
俺自身疑問が残る
「…詩条さんが言っていたね。わたしがやったって」
「───あいつを怪しむなら悪いけど俺はお前を殴るぞ。あいつだけはそんなことしない。」
「そうか…彼女に能力の自覚はあるんだろうか…他人に力を与える能力なんてかなり珍しいからね…」
「そういえば学校にいる概物ってどんなやつなのかとか見当はついてるのか?」
そうして別の疑問を聞いてみる
「あまりこういうことを言うのはよくないかもだが能力が通用しない以上、隠すというのも少し無下というものか……実はなにもわかっていないんだ。」
「え?」
なにもわかってないって、どういう冗談だよ
「その、概物を探知する人──仮に彼とするか。彼の能力は多くの概物の位置情報を把握することに特化しているからね。残念ながらその概物一つひとつの情報量はさして多くないし、彼自身もよくわかっていないようだ。」
「じゃ、じゃあゼロから探すってのかよ」
そんな砂漠で米粒を探すみたいな話…
「あ、ただ、学校という場所にいる以上、おそらく学校でよく抱く感情に起因しているものだと考えられている」
なるほど。例えば勉強とか部活とかか。
「と、いうわけで付き合ってくれないか?」
「????」
文脈のつながり崩壊してないか?
「もちろん、きみの協力がなければなんとかしはするが、概物が暴れればこの学校にいる生徒は危険な目に遭う。脅しのようで悪いが、手伝ってくれるなら事前に事件を解決することができるかもしれない。ぼくとしてはきみのような周りからの信頼が厚く、人思いな者が協力してくれるとありがたい」
…たしかに概物の脅威は知っている
しかし、俺を殺そうとしたやつに協力なんて…
『わたしはね、才貴のためならなんでもできるよ』
そこで思い浮かぶのは、有恵のかわいい顔と、勇気をくれる言葉だった。最近聞いた言葉じゃない。でもいつも言ってくれる言葉で、いつか聞いた言葉だ。
なら、俺も有恵のためになるならなんでもしないといけない、と決心したところで
「わかった。協力しよう」
「ありがとう」
ここに、天災との協定が結ばれた
俺の日常を壊させないためなら、俺はなんでもしてやるよ
天災は静かに笑い、俺はから元気を張るようにして笑い飛ばしてやった
きっといまの俺は、見栄っ張りな笑顔を貼り付けたような晴れやかな顔をしているんだろう。
ここまで読んでくれたきみ!
重大発表だ!
腰痛すぎて歩けない!
以上!
(追記.読んでくださりありがとうございます)




