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7. 決戦開始

「オラぁ!!」


 バァンが威勢の良い声と、スケルトンの頭部が砕ける音が荒野に響く。

 だが押し寄せるスケルトンの数は尋常ではない。


「兄貴!本当に倒し方合ってるのか?むしろ増えていってる気がするぞ!?」


「馬鹿言え、骨が跡形も無く消えているのが見えないのか?単純に数が途方もないだけだ」


 バァンがボヤきたくなるのも無理は無い。本当にそう思える程のスケルトンが、その真っ暗な眼窩をこちらに向けてくる。まるで巨大な蜂の巣穴がこちらを見ているかのようだ。


「うう……ここで足止めされるのは……」


「魔法を使ってみよう!!ラティエ合わせてくれ!!」


「え?ちょ……」


 ルークはラティエの返事を待たずに詠唱を始める。


「ルーク様、待って――」


「サンダーストーム!!」


「きゃあぁぁぁぁーーー!!」


 詠唱を止めようとラティエが近付いた瞬間、眼の前で雷撃が炸裂。ラティエは衝撃でひっくり返ってしまった。


 ルークの雷魔法は空へ舞い上がったかと思うと、四方八方へ何重にも枝分かれし、轟音と共にスケルトンの海へと降り注ぐ。


 ガシャガシャと耳障りな音を立て、スケルトンが崩れていく。ルークは手応えを感じ、拳をグッと握ったのも束の間、カタカタと震えたかと思うとスケルトン達が次々と組み上がっていく。


「く……ダメか……!ラティエ、どうした――」


「あ、ああああ、危ねーですわねルーク様!!!

 それに、マルディシオーネの魔力があんなにゴッツくまとわり付いてるんですのよ!?魔法なんて効くわけねーですわよ!!」


「ご、ごめんなさい……」


 ラティエの崩れた言葉遣いに恐れをなしたルークは、消え入りそうな声で謝罪の言葉を絞り出す。


「その娘の言う通りだ。魔力を無駄に消費すると後が辛いぞ」


「ラティエですわ!!早く覚えてくださいまし!!」


 すると後方から突然、何かが破裂したような大きな音がしたので、皆一斉にその方を向く。

 マルディシオーネが横殴りの雨のように魔弾を飛ばし、リレーミアの封印修復を妨害していた。


「リレーミア!!大丈夫か!!」


 ルークが叫ぶが、爆音にかき消されているのか、余裕が無いのか、リレーミアは返事をする事なく防御魔法を黙々と展開している。

 加勢したいが、スケルトンに囲まれた今の状況ではリレーミアの元へ駆け付ける事もできない。このままではいずれリレーミアの魔力は底を尽く。


「は、早くしないとリレーミアさんが!!」


「ラティエ!!次は俺に合わせろ!!」


「は、はい!!」


 バァンはそう言うと、ラティエと共にスケルトンの壁へ突っ込んでいき、その後ろをルークとヴォーマが追いかける。文字通り掘り進むようにして、四人はマルディシオーネへと距離を詰めていく。


「確実に進んじゃいるが、このスピードじゃ不味くないか?」


「ルーク様、このままでは間に合いません!!飛んでいってくださいまし!!」


「兄貴と一緒に先に行っててくれ!こっちの相手は俺達で何とかする!」


「わ、分かった!」


 ルークはそう言って回復魔法を二人にふりかけた。


「おお、サンキューな!頼んだぞルーク!」


「ルーク様、撃ち落とされないように気を付けてくださいまし!」


「そっちこそ、無理するなよ!」


 三人は顔を見合わせ、うんと頷くと飛行魔法でルークはふわりと浮き上がる。


「よし、ヴォーマ行くぞ!」


 ルークはヴォーマの方へ振り返ると、ヴォーマは下瞼をヒクヒクさせながらルークを見ていた。


「な、何でお前のような奴がそんな高等魔法を……!!」


「あ、そうか。ちょっと失礼」


 ルークはスゥと滑るようにヴォーマへ近づくと、腰周りにガッチリと抱き着き、そのまま抱えて飛び上がる。


 すると杖を手に持つスケルトン達がカタカタと関節を鳴らしながら杖を掲げ、あるものは雷を落とし、あるものは氷の塊を飛ばしてくる。


「うわあ!?」


 危うく当たりそうになりながらも、どうにか避けていくが、その度にヴォーマは全身を大きく揺さぶられる。


「うおお!?」


 墜落寸前の羽虫のような動きで攻撃をかい潜り、二人はどうにかマルディシオーネの後ろ姿がどうにか確認できる位置に着地する。


「さあ、ここからどうする?」


 ルークが話し掛けるが返事が無い。見るとヴォーマは膝をついたまま地面を見つめ状態で固まっている。


「立てるか?」


 ルークは手を差し出す。


「ああ……すまな……」


 ヴォーマは素直に、差し出された手を握り立ち上がる。

 同時に、自分より小柄な少女が重厚な鎧を着込んだ成人男性を軽々と抱えて飛んでいた事に気付き戦慄する。


「き、協力してやるが、私はお前を完全に信用しているわけではない!」


 ルークの手を振り払い慌てて距離を取る。

 だが一時とはいえ、好意を抱いた女性と密着していた状況であったのも思い出し、多少の気恥かしさを感じているのも事実だった。

 だがそこは軍人、すぐに冷静さを取り戻す。


「……行くぞ、貴様は適当に魔法を撃って奴の気を散らせ」


「分かったけど……アイツに魔法は……」


「最初は様子見だ。私も今は避けられる前提で仕掛ける。相手の動き、攻撃方法を把握し、そこから反撃していくぞ」


「なるべく早く決着したいけど、まあ確実にやるならそれしかないよな」


 ルークは腕を大きく広げ、青白く光る珠を周囲に浮び上がらせると、それをマルディシオーネの不気味に白く輝く背中に向かって不規則なリズムと軌道で放つ。

 一部は地面に着弾し、大きな音と共に土煙が舞い上がる。

 その黄土色のカーテン紛れるようにして、ヴォーマが大剣を掲げて走り出した。


 ルークからもヴォーマの姿がほぼ見えないが、中でぼんやりと何かが光る。ヴォーマが何か仕掛けたのだという事は分かった。

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