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17. 試験合格そして

 バァンとラティエは、気が付くと海原の間に戻されていた。


 リレーミアが二人に近付くと、


「マルディシオーネと戦うには心許ないからな。勝手で申し訳ないが、少し武具を弄らせてもらった」


 そう言って手を翳す。

 バァンとラティエの身体が柔らかな光に包まれ、やがてその輝きが失せてくると、竜の紋章が入った鎧が着せられていた。


 シルエットはほぼそのままだが、装飾に関しては、前と比べるとどちらかといえばシンプルである。

 しかし、ラティエの左手には新しく、青い宝玉が印象的な籠手が装着されていた。


 装飾代わりに紋章が描かれ、見るからに魔法が関係するのだと分かる。


 キラキラと透き通る青空のような宝玉に、ラティエは目を輝かせる。


 ラティエが籠手に見とれている間に、リレーミアはバァンに斧を手渡した。


「あん?少し小さくなってねぇか?」


「バァンの戦法を生かす為だ」


 バァンは、自分自身と触れる物を、魔力で強化する事が得意だとわかった。


 本来ならば、普段はグリップ部分だけの状態で、戦闘時に魔力で刃部分を作り出すのが理想だが、バァンの負担と、万が一魔法を封じられた時の事を考えての事らしい。


「へえ!軽くて振りやすいし、良いじゃねぇか!」


 バァンは斧を掲げて浮かれる。


 次はラティエの番だ。

 彼女に手渡されたのは、ハルバードではなく、金属製の重みのある杖(?)であった。


「魔法使い用の杖と、片手鎚メイスを合体させた特製の武器だ。ワンドメイス……とでも呼ぼうか。

 ラティエの戦い方には、おあつらえ向きだろう」


「あの……ラティエのハルバードは……?」


 ラティエはてっきり、ハルバードが強化されて返ってくるのだとばかり思っていたため、手元の武器を見つめて固まっている。


「安心しろ、それは生まれ変わって今お前の手元にある。色々と付け足しはさせてもらったがな」


 ラティエは、頭を金槌で思い切り殴られたような気分になった。

 虚ろな目で悲しそうに笑うラティエを見て、リレーミアは不思議そうな顔をしている。


「どうした?お前は今までその武器よりも、魔法を使う事が多かったじゃないか」


 確かにふざけているバァンを殴り付ける以外では、そんなに役立っていなかったかもしれない。だが、ここまで苦楽を共にしている相棒のような存在だ。

 突然そんな大事な相棒の姿が変わってしまい、ラティエは動揺が隠しきれない。


「ラティエ、何も言わずに相棒の姿を変えたのはすまなかった。だが、これには理由があるんだ」


 見るからにショックで凹んでいるラティエを見て、リレーミアが少し気まずそうに言う。





 魔法使いがよく持つ印象の杖は魔力が籠められた特殊な素材が使われ、術式の効果を補助する力がある。

 しかし、魔法使いには非力な者が多く、杖にも軽さが求められる為に、武器として使うには不向きである。


 ところがラティエは剣士科での訓練のお陰もあり、ハルバードを軽々と振り回す程武器の扱いに長けている為、杖自体に攻撃力を持たせても何の問題も無い。


 普段は魔法メインで戦いつつも、距離を詰められた時は鎚部分で殴り付けてしまえばいい。

 また、ルークが剣、バァンが斧と、両者とも斬る攻撃の為、それが効かない相手だとラティエの打撃が頼りになるのだ。


「ラティエにしかできない事……ですの?」


 リレーミアが頷くと、ラティエの口元が無意識に弛む。






「ラティエ、左手の宝玉に魔力を集めてみてくれないか」


 何の意味があるのか分からないが、とりあえずリレーミアの言うとおりにしてみる。


 すると左手の甲に、ラティエの上半身を覆う程の、魔力でできた透明な丸い板が現れた。バリアである。

 魔力が流れると、自動的にバリアの魔法が発動する仕組みらしい。


「きちんと機能してよかった。コツを掴めば大きさも自由自在だし、魔法自体も防げる」


「すげぇなあ。リレーミア、俺のにはなにかそういう特別な機能は付いてないのかよ?」


 羨ましそうに尋ねるバァンに、リレーミアは冷淡に言う。


「バァンはそういう機能を付けた所で、結局使わずに持て余すのが目に見えてる。

 危なくなったら、自分の身体や武器を硬質化して防げばいい」


 ぐうの音も出なかった。


 バァンが次に言う言葉をあれこれ考えているが、声を発したのはラティエの方が早かった。


「あ、あの……ラティエ達はメガルダンド様の試験は合格ですのよね?

 加護はいつ授けて頂けますの?」


「既に与えた」


 頭の中に響くような声が聞こえたかと思うと、水面が大きくうねり、リレーミアの真横にメガルダンドが現れた。

 加護はもうバァンとラティエに与えたと言うが、二人はそんな感覚が無い。


「実際に戦ってみればわかる。メガルダンド様の加護は目に見えないんだ」


 納得が行かないような苦々しい顔の二人に、リレーミアがイラついたように言った。



「それにしてもよ、ルークはまだ戻ってないのか?」


 バァンがキョロキョロしてルークを探している。バァン、ラティエ、リレーミア、そしてメガルダンド。

 何処を見てもルークは戻っていない。


「まだかかりそうだな。リレーミアよ、二人に加護の実感を持たせる為だ。ルークを待つ間、少し相手をしてやりなさい」


 リレーミアはメガルダンドへ胸に手を当てて頭を下げると、二人へ向き直った。


 バァンとラティエは、緊張感からたまらず武器を構える。


「新しい武器と戦法のいい練習になるだろう。お互い遠慮せずに戦うのだ」


 こうして、いきなりだがメガルダンドの最終試験のようなものが始まった。

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