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8.問題発生

 村の異変を解決したとして、テオとイルマは二人を褒め称えた。

 そして、再び旅立つ事を知ると、イルマはまた大量の食糧を持たせてくれた。


「ルーク、村長が呼んでいるから、旅立つ前に寄ってほしいんだ。

 俺が事情を話したら、是非お礼がしたいとよ」


 テオに言われて、皆で村長の家に向かった。

 メディナだけは、面倒そうだからとついてはこなかった。


 村で一番大きな家に向かうと、軒先で壮年の小綺麗な見た目の男性が立っていた。

 彼はルーク達に近付くと、深々と頭を下げた。


「ルーク君ありがとう。村の流行り病を解決してくれたとか……。

 しかし、こんな時までそんな格好とは……」


 村長は可愛らしい女の子の格好のルークを、怪訝な顔で見た。


「村長、ルークは学校の事で心に深い傷を負ってるんだ。今は理解してやっちゃくれねぇかな?」


「そうだよ!この子なりの心のケアなんだ」


 テオとイルマが、ルークを守るように前に出た。

 それをルークは、戸惑いながら見ていた。


「まあそうだな、君は村の英雄。大変失礼だった、すまなかったね。このとおり。


 それで、その英雄を称えて、あの像の代わりに君達の石像を作ろうと思ってるんだ」


 そう言って村長はルークとバァンに、石像の設計図を見せた。

 ずいぶん昔から壊れている、エテルナの像に代わって、置くつもりらしい。


 そこには、まるで恋人同士のように寄り添う、ルークとバァンがモチーフの男女が描かれていた。

 ルークは無言で設計図を奪い取ると、そのまま破り捨てた。


「ああ!頑張って描いたのに!」


 嘆く村長を無視して、ルークはバァンを引っ張り村を出ていった。





 次に二人は、王都に向かった。

 呪いの消えた王都は、行き交う人々に満ち溢れ、とても賑やかだった。

 事件が解決したのだと、改めて実感できた。


 そのまま城に入ろうとしたが、事情を知らない兵士に止められてしまった為、大臣が慌てて取り成した。

 そして、再び王の元までやって来た。


「ルーク、バァンよ。

 城下の様子を見ると、やり遂げてくれたのだな」


 二人が頷くと、王と大臣は二人を褒め称えた。


「そなた達、是非とも褒美を与えたい。

 何でも申してみよ」


 二人は顔を見合わせた。

 突然言われても、急には出てこない。

 悩んだルークは、事情を説明し、とりあえずフィグゼーヌとの関所を通る為の許可証がほしい事を伝えた。


 しかし、王はそれに難色を示した。


「望みはできる限り叶えてやりたいのだが、フィグゼーヌ王国とは10年程前の戦争以来、冷戦状態が続いている。

 今はもう許可証の新規発行をしていないのだ」


「そんな……、王様の権限でどうにか出来ねぇのか!?」


 バァンが声を上げた。

 大臣が何か言いたそうにバァンの所へ行こうとしたが、王がそれを止めた。


「許可証には我がアクストゥアとフィグゼーヌ両方の印が必要。

 こちらが特別に許可を出したとしても、事情を知らぬフィグゼーヌは印を押さぬだろう」


「偽造をするとかは?」


「それを防ぐ為の魔法を使った特別な印だ。すぐにバレてしまうぞ」


 ルークはなんとか方法を考えていた。

 王は申し訳無さそうな顔で、それをただ見ていた。

 すると、バァンが真剣な面持ちで口を開いた。


「なあ、既に許可証がある場合は通っても大丈夫なのかよ?」


「……?

 ああ、既に発行しているものなら問題無く通る事が可能だ」


 バァンはそれを聞くと、嫌そうでかつ安心したような複雑な顔をしていた。

 バァンに何か考えがあるようだ。


 バァンは何かを決心したようにルークを見ると、真剣な面持ちで口を開く。

 普段とは違うバァンの様子に、ルークは動揺する。


「……ルーク、俺の親父に会ってほしい」


「ええ!?俺達そんな関係じゃ……」


「違ぇっての!!

 つかお前もそのネタやるのかよ……」


 話を聞くと、なんとバァンの父親は商人で、取引の為に以前からフィグゼーヌ王国へ行っていたと言うのだ。その父親から許可証を借りれば、関所を通る事ができるというのが、バァンの考えらしい。

 しかし、前に家族は居ないと聞いていた為、ルークは訳が分からなかった。


「わかったわかった、今日の宿でちゃんと話すから。ほら、もう行こうぜ」


 頭から『?』を沢山飛ばしているルークを落ち着かせ、引きずりながら、バァンはその場を去ろうとした。

 それを王と大臣が慌てて引き留めた。


「二人とも待って欲しい。せめてこれを受け取ってくれぬか?国の英雄に対して何も出来ないのは心苦しいのだ」


 王が合図をすると、従者の男達がルークとバァンにそれぞれ武器を渡してきた。

 どちらも立派な装飾が施された長剣と斧だった。


「それは貴重なカースライト鉱石を、特別な技術で鍛えた武器だ。

 量産が難しい為、我が城の兵隊長クラスしか持つ事を許していないものだ」


 ルークとバァンは、それを聞いて驚き戸惑った。


「まあ慌てるな。そなた達はその価値に見合う充分な働きをしてくれた。

 フィグゼーヌ王国は魔法に長けた魔法国家。カースライトは魔法に強い。きっとその武器が役に立つ時が来るだろう。


 それに二人には、この旅が終わり、アクストゥア養成学校を卒業したら、是非とも私の近衛兵として迎えたいと思っているのでな」


 二人はまたさらに驚いた。卒業後の進路が急に決まってしまった。

 しかも、一般兵ではなくいきなり近衛兵である。

 他の国ではどうか分からないが、ここでは近衛兵は安定した職務で、なれれば一生安泰と言われている。


「やったよ、ばあちゃん!」


 その為にも、早く元に戻らなければ。ルーク達は決意を新たに、王に手配してもらった宿へ向かった。

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