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第1話 プロローグ

 はじめまして、の人も、そうでない方も、この物語にアクセスしてくださいましてありがとうございます。

 現代、というか近未来ものです。

 暗いです。

 とくに主人公。

 主人公は美人です。男です。不老不死です。引きこもりです。でもって、かなり愛されていますが、本人気づいてないので、ずっといじめられてるって思ってます(いじめのレベルではないのですが・・・)。


 なんでこんなことになった、は、本編読んで貰うとして、のんびりとお話しは進みます。


 暗いだけじゃなくて、喜怒哀楽をてんこ盛りにする予定なので、気長に読んでもらえれば嬉しいです。


 主人公が痛い目に遭うのが苦手な方以外は、是非ともお付き合いください。



 L'an mil neuf cens nonate neuf sept mois.

 Du ciel viendra un grand Roi deffraieur.

 Resusciter le grand Roi d'Angolmois.

 Avant que Mars regner par bon heur.

  (ノストラダムス:諸世紀10章72編より)


 僕は、この四行詩を、雑踏を眺めながら、ぼんやりと思い浮かべていた。

 ふふ、あの頃はこれを原文で読めなかったなぁ。

 『1999年7の月、恐怖の大王が天より姿を現すだろう。復活したアンゴルモアの大王が、軍神(マルス)の名の下に支配する』だっけか?

 詩だし、外国語だし、古語だし、切り方や解釈で全然違うものもあったけど、大体そんな感じ。20世紀の末には、この具体的な月日を捉え、多いに騒ぎになったもんだ。

 結局、何事もなく、無事21世紀はやってきて、昨日と同じように今日は流れ、明日の約束をする、そんな日常が続いているように見える。


 けど・・・




 僕は、ぼんやりと、目の先に見える富士山を眺めていた。今日もきれいだ、とでも言えば満足かい?僕はフン、と鼻で笑った。相変わらず神々しいことで・・・

 富士の裾野には樹海、と言われる森が広がっている。ここからはさすがに見えないが、樹海が年々形を変え、旧世紀時代とは全然違っていることに気づいている者はほとんどいないだろう。


 ここは、富士城市ふじしろし

 憲法が変えられて、軍隊を正々堂々持てるようになってから出来た新しい市だ。ちなみに富士山を囲むように一つの県が設置されたのは、憲法改正の一番の目玉だったか。その余波、という形で、いくつかの県も統廃合され、名前は残るものの行政区は昔で言う「地方」ごとに統合された。つまり東京でいうと、都庁がやっていた仕事を関東地方庁が行い、区役所がやっていた仕事を都庁が行い、区役所は町内会程度の規模の仕事をすることになった、という感じかな。当然人員も削減されたけど、政府推奨の電子政府がとっくに軌道に乗っているから問題は無い。


 富士城市は、特別行政区だ。

 昔から「特別行政区」という名称はあったけど、ここは少々趣が異なる。

 日本国日本府(ひのもとふ)富士城市。正式な住所だ。

 わざわざ、新しい県を作ったのは、もちろん政府側の狙いがあってのこと。ちなみに「県」ではなく、「府」にしたのは、大阪の都構想がこの行政区の繰り上げという発想の基礎になったため、ご褒美として「大阪都」を設置したのだけれど、府が減ることに難色を示した知識人と呼ばれる層に対する代替案として、特別感を出すために「府」にした、と言われている。正直名前に興味は無いし、これが本当かどうかは知らない。


 富士城市が特別だ、というのには、当然ワケがある。

 富士城市には、すべての国の省庁の支部が置かれ、独立したコンピューターの中には、その省庁のデータがコピーされている。また地方区レベルのデータも同様に保管されている。つまり、首都を含め、どこかの都市機能が麻痺したときに、スペアとして機動する、それが望まれて作られた人口都市、それが一般的な認識ということだ。

当然、一般的、ではない機能も持ってはいるのだが・・・まぁ、それは置いておこう。

 さすがに、視線がうざくなってきた。


 今、僕はJR富士城駅と一体化した商業ビル、そこから伸びる、歩道橋の上にいる。駅には隣接して大きなロータリーがあり、また、ロータリーには片面3車線の道路が面している。僕はロータリーを見る形で、人で賑わう歩道橋の上で人を待っているのだが・・・・


 チラチラと見て噂されるのはいつものこと。仕方ない。

 僕の容姿は、少々特殊だから。

 身長は160センチ、と聞かれれば言い張ってる。けど、正直に言うと、ちょっとばかりそこには足りない。

 僕の名前は、直江飛鳥なおえあすか。男。断じて女ではない。この飛鳥という名前は、死んだ母がつけたという。病弱だった母は、出産に耐えられないと言われていたのに、どうしても、と僕を産んだ。産んだ、というよりは、死体から生きている僕をサルベージした、という方が正解か。

 母は、男女が分からない生まれてくる子に、どちらでも良い名前、としてあすか、とつけたんだという。おんなっぽい名前だと思ったけど、どうやらそういう名の男の歌手がいたんだから、仕方ない。


 男か、女か、と、名前だけじゃなく、首を傾げられることには、残念だけど慣れている。だけど、みんながチラチラ見ているのは、この忌々しい髪だろう。僕の髪は、日が差すと赤にも見える茶髪で、しかも、()()を隠すぐらいに長い。

 長いのがイヤなら切れば良い、普通ならそうだ。そう普通なら。

 が、しかし、これを坊主頭にしたって、次の朝には元通り。ハハ。笑うしかない。これは、呪いだから。ハハハ。


 そう僕は呪われている。


 神に逆らった罰として、この身は変わらず・・・そう髪の毛1本たりとも損なわれることはない、という不朽の呪いを、僕は60年前の今日、1999年7月7日に受けたんだ。その日、奇しくも、僕の18歳の誕生日、だった。


読んでいただきありがとうございます。


新規執筆のモチベに繋がりますので、

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