戦闘
二人は武器を構えた。
妖樹の枝がぐんぐんと伸び、ぐるぐるとうねり、二人に襲いかかった。
レックスは思いっきり体をひねった。しかし、かわしきれず、妖樹の枝がレックスの頬をかすれた。
「どうする?メリッサ、これじゃかわしきれないぞ」
「わからない、どうしよう!」
たくさんの妖樹の枝が伸びてくる。襲いかかる枝を短剣で切っていくが、きりがない。それに、短剣では攻撃範囲が狭すぎて反撃できない。攻撃を跳ね返すだけで精いっぱいだ。
「メリッサ!この前の【瞬間移動魔法 テレポート】で脱出できないか?」
襲ってくる枝をかわし、切り裂きながら、答えた。
「無理よ。あの魔法、集中力を極限まで高めないと使えないの!」
攻防を繰り返し、だんだん息が苦しくなってきた。
どうする?どうする?これじゃあ俺たちはもたない。松明で火をつけるか?いや、そんなことしたら、俺たちまで巻き込まれて死ぬ。でも、魔法の炎なら、燃え移らない。
「メリッサ、炎の【攻撃魔法】使えるか?はぁはぁ」やっとの思いで喋った。
「攻撃が、はぁはぁ、速すぎて余裕がない!」
クソ、せめて、動きが鈍くなってくれれば……。そう、スローモーションみたいに、ゆっくりと。
「そうだ、ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり。スロウ、スロウ、スロウ、スロウ!」
そうつぶやくと、不思議なことに、だんだんとゆっくりになっていき、最後には、全ての妖樹の動きが止まってしまった!
「メリッサァ!!!やれーーーーーーーーーーー!!!!」
メリッサは少し戸惑った。なぜなら、時を止めたうえ、レックスの目が、血のように赤黒く、光っていたからだ。
いろんな思いを一度振り払い、魔法を使った。
「【攻撃魔法 ファイアー】」
メリッサの放った炎は、葉っぱから根っこの先まで焼き尽くした。
「た、倒した!」
思いっきり叫び、跳びあがった。
時が動き出し、風が吹きはじめた。
レックスは満面の笑みを浮かべていたが、その一方でメリッサは、何かを思い詰めるような顔をしていた。