妖樹
二時間くらい歩いて、ようやく森の前に着いた。長距離を歩くのは慣れていたからあまり疲れなかったが。
話には聞いていたが、この森、物凄く大きい。前に立ってると飲み込まれそうなくらい。「人間なんか通さないぞ」とでも言うように、木々がみっちりと隙間なく生えている。森自体が人間を拒絶しているようで、少し恐ろしい。しかし、深く暗い森からは、なぜか少しだけ、神秘的な気配がしていて、とても不思議だ。
二人は森へ入っていった。
森の中は思ってた以上に暗かった。巨大な針葉樹の木の葉っぱがもくもくと茂っていて、ほとんど光を通さない。
なんだか不安になってきた。
「明かり、持ってきた?俺、何にも持ってないよ」
いきなり旅をすることになったから、必要な道具なんて持っていない。
「松明が二本だけ」
なにも問題なさそうに言っている。
「それで足りるの?」
「日が沈むまであと6時間はあるし、大丈夫よ、近いから。せいぜい5㎞くらいよ」
そんな会話を交わしながら、ただ黙々と歩き続けた。
しかし…………。
5時間くらい歩いただろうか、全然森から出られない。メリッサ、5㎞って言ったじゃないか!
「おい、いつ出られるんだよ?」
だんだん歩き疲れて、イライラしてきた。よーし、まずは落ち着こうなー俺。冷静に、冷静に。出られる、出られる、ここから出られる。レックスは思いっきり深呼吸をした。ふーーぅ。
すると、メリッサは今にも泣きそうな顔でレックスに助けを求めてきた。
「レックス、どうしよう!迷っちゃったかも!!!」
「はぁぁぁぁーー?!迷ったぁ?」
レックスが怒鳴ると、メリッサはうつむいた。
「もうすぐ夜になるぞ!ヨ・ル・ニ!!!」
思いっきり怒鳴ったせいで、鳥たちがバサバサと音を立てて逃げていった。
あたりは薄気味悪い静けさに包まれた。
ザワザワと風が吹いていて少し肌寒い。
刻一刻と暗くなっていく……。
ガサガサ、ガサガサ。
「……?なんだ?」
「……!!レックス、後ろ!」メリッサは即座に剣を構えた。
後ろを見ると、なんと木が動いていた。
「ば、化け物ーーー!!!」
その場にあったエクスカリバーを手に取ろうとする。しかし、鉛のように重くて、なかなか持ち上げられなかった。こんなんじゃまともに戦えないと思ったので地面に突き刺しておいた。そしていつも持ち歩いている、鋼のナイフを手に取り、身構えた。
これは、モンスターか?殺気も感じる。
メリッサは何か思い出したのか、「あっ」と叫んだ。
「レックス、これ、きっと『妖樹』だわ!」
「ヨウジュ?」
「何らかの理由で闇の魔力がこもったんだわ」
「どうする?逃げる?」
妖樹はいきなり小さな波動を放った。
すると、共鳴するように、他の木も動き出した。
しまった。囲まれた。
「これ、倒すしかないわ!」
レックス「この話、面白い?」
アカツキ「わかりませーん!」
レックス「……おいっ」