聖剣
くそっあの女速い!ハァハァ、だんだん息が苦しくなってきた。もっと速く、もっと速く走れ。あとおよそ5mくらいか?4m、3m、2m、あともう少し……。そして腰のところにある剣に手が届いた。すぐに握りしめて奪い取る。
「あっ!その剣返してよ!」
あれっ思ってたより小さい。俺と同じくらいか?まあそんなことはどうでもいいや。とりあえず逃げろ!
レックスは走りだした。すると同時に女は高くジャンプして、レックスの前に立ちはだかった。
その瞬間、俺はしくじったと思った。こいつ、おそらく俺よりも強い。しまった。盗む相手を間違えた。
「返して、返さないなら力ずくでも……」
女はレックスを見て固まった。俺の顔を凝視している。
「ま、魔族?勇者?」
「はいっ?」意味が分からなかった。確かに俺は魔族の血を引いている。みんな一目見れば魔族の子孫だってわかる。なぜなら、目の色が赤いからだ。でもこいつはバカなのか?なんで俺が勇者なんだ?勇者はなんとなく話を聞いたことがある。勇者とはたしか、悪を滅ぼす者だ。きっとこいつ、脳みそが頭に詰まってないんだな。
「剣が光ってる」女は俺が盗んだ剣を指さした。
「えっほんとだ!なんで?」
「もしかして、あなた勇者なんじゃない?!私、メリッサよ。勇者を探してたの」いきなり明るい顔になった。眩しい、太陽を見てるみたいだ。
「いや、なにがなんだかわかんないんだけど。それにさ、お前俺が怖くないの?」
「別に。それより、名前は?」
「……レックス」
「へ~いいね、その名前。あの、いきなりすぎてよくわかんないと思うけど、あなたは勇者なのよ、きっと」
「は、はぁ」
「その剣は、聖剣『エクスカリバー』っていうの。その剣は勇者が手にすると光るのよ」
「せせ聖剣エクスカリバー!!?ででで伝説の!……でもさ、そんなすごいもんなんでお前なんかが持ってるんだ」
「えっと、それは……」
「姫さまーおとなしく剣を返してください。姫さまー」お城の兵隊の声が聞こえる。
「!!!!」メリッサの表情が一瞬で変わった。とても動揺しているように見える。
「レックス!話は後、逃げるよ!【瞬間移動魔法 テレポート】!」
メリッサは魔法を使ってレックスと共に姿を消した。