始まり
始まったぞ!
俺は町の厄介者だ。魔族の血を引いているというだけで、みんな俺から逃げていく。
父さんはいい人だった。優しくて、かっこよくて、強くて、俺はそんな父さんのことが大好きだったんだ。
だけど、町の人たちは冷たかった。魔族の子孫である父さんを殺したんだ。父さんは悪いことなんて一つもしてないのに。そのせいで、母さんは自殺した。俺はその町から逃げ出した。必死で逃げた。わき腹が痛くなったけど、そんなもの、父さんと母さんを失った悲しみに比べればなんてことなかった。
その日から、俺は一人になった。
気づけば、あの日からもう五年の月日がたっていた。現在俺は15歳だ。
子供一人でどうやって生きてきたのか?簡単なことさ、人から金を盗めばいいんだ。
俺はレックス・アルノという名前だ。まあ、今じゃ俺の名前を呼んでくれる人なんていないけど。でも、もうなれちゃったから寂しくはない。
レックスはサンディア王国の城下町のボロボロな空き家に住んでいる。いつも人ごみに入っては、金持ちそうな人から財布を盗んで暮らしてる。レックスは今日も人ごみの中。
「カ ネ モ チ、カ ネ モ チ、金持ちはどこかな~」
きょろきょろと周りを見てみる。むむっあの金髪サラサラヘアのおっさんゴージャスな服着てるな。なかなかよさそうだな。おっあの果物買ってるじいさんもい……。
タッタッタッタッ。足音が聞こえてくる。どうやら走っているようだ。
女か?よく見ると、剣を持っている。しかもピカピカに輝いていて、大きな青い宝石もはまっている。
ラッキー!絶対高く売れるぞ!よし、盗んでやろう。
レックスは走り出した。すきを狙ってすぐに奪い取る、つもりだったが、なんとかわされた。レックスは相当速いはずなのに。今まで一度もこんなことはなかったのに。
「あいつ、きっとただ者じゃないぞ」
レックスは謎の女を追いかけて行った。