奴隷4
9話 奴隷4
バルコニーから城内に侵入した俺は、何個もある部屋の中で大きないびきが聞こえる部屋を発見した。恐らく昼間の成金貴族だろう。さっきの女は戦闘を長引かせたくなかったためすぐ殺してしまったが、こいつにはたっぷりと苦しみを味合わってから死んでもらおう。
部屋の扉を開けると、中ではベッドの上で昼間の成金貴族が爆睡していた。さて、夜が明けるまであまり時間もない。この城の中の者を全員殺す事を考えれば、ペースはかなり早めなければならない。どうして殺してやろうか......考えながら部屋を見回してみると、宝石のネックレスや指輪など高級品であろう物が大量に飾ってあった。奴隷に付けるのであろう、まだ使われていない首輪も。
そうだ。この城の者達にはあのオーガ達と同じ苦しみを味合わせよう。
処刑法を思いついた俺は早速準備に取り掛かる。男の口を常備していた包帯で包み声を出さないようにし、首輪を取り付けた。
さすがに息苦しかったのか、男は目を覚まし暴れ始めたが、足と手を縛って動けなくした。鼻は塞いでいないから息はできるだろう。取りあえず他の奴らの所にも行かなければならないため、上から布団を被せてそのまま放置して部屋を出た。首輪の鎖をベッドに繋いでおいたため、脱出は不可能だろう。
時計を見ると、針は3時半を指していた。この調子で城の中のやつを全員行動不能にするには、時間が掛かりすぎる。なので俺は一旦オーガ達を救出しに行くことにした。
階段を使って一階に下り、オーガ達の囚われていそうな場所を探す。すると、すぐに地下への階段を発見した。
その階段を下りていくと、とても広い空間にオーガを入れるためであろう大きな檻が10個あった。その中には、首輪で繋がれ弱りきったオーガ達が眠りについている。
一つの檻につき一体収容されていたため、数は10体だ。急いで彼らを起こし、擬態を使って硬度を高めた腕で鍵を壊して全員を檻から出した。中には恐怖に怯える者、怒りに我を忘れそうになっている者など様々だったが、ひとまずは落ち着かせて故郷へ帰るよう促した。
このオーガ達にも、家族がいる。仲間がいる。きっと皆帰りを待っているはずだ。それに今ここを出れば、道中で勇者達に襲われる事もないだろう。こんな夜中に魔族を狩りに行くバカは、そういないはずだ。
「あ……りがと…う……」
「ああ。気をつけてな」
そうして声を震わせながら俺に一礼したオーガ達を見送り、もぬけの殻になった地下空間を見渡す。一番近い牢屋の中にもう一度入ると、そこにはここでどれだけあいつらが酷い生活をさせられていたかが分かる痕跡が、大量に残されていた。
少し血が滲んで錆び付いている手錠、食事を入れられていたのであろう動物用の飯入れ、壁にこべりついた血の跡。そのどれもが俺の中の怒りを増幅させるとともに、俺のこれからやるべき事を示してくれた。
「よし、やるか」
この城での、最後の大仕事だ。俺はしっかりと体に力を入れ直し、地上へと上がった。




