奴隷1
6話 奴隷1
勇者達の処刑を終えた俺は、再び勇者の姿に擬態して村へと戻ることにした。
そうやって昨日泊まった宿に向けて歩いていると、村の商店街に着いた。宿へはそこを抜けていくのが一番近かったため、人間が多いからあまり通りたくはなかったが、仕方なく通ることにした。
そして俺は、そこでとてつもないものを目撃する。
オーガ達が首輪をつけられ、人間の尻に敷かれて四つん這いで歩いていたのだ。
この光景には憤りを隠せなかった。目立つ事をするべきではないのは分かっていたが、俺の体は咄嗟に動き出してしまっていた。
「おい!お前ら何してる!!オーガ達を離せ!!」
気づけば俺は、オーガにまたがりながら進む人間達の前に出て、そんな事を大声で口走っていた。商店街を行き来している周りの連中の視線が、全て俺の元へと集まる。
すると、あたり一面からは大量の笑いが起こった。目の前には、何も面白い光景など広がってはいない。
(何だ?何がおかしいんだ?)
そう思っていると、オーガの上から人間達が笑いながら話しかけてきた。
「ああ、そうか。さてはお前さん召喚されたてでまだ奴隷を見たことが無かったのか。安心しろ。こいつはもう調教済みだから襲ってきたりはせんよ」
奴隷…だと?
力の入った自分の額に、血管が浮き上がってきているのが分かる。こいつらは俺達を殺し回るだけでは飽き足らず、生け捕りにして強調し、奴隷にしていた。やはり、異世界勇者が来たことによって、人間達の魔族への意識も変わっている。もうこいつらは、俺たちのことを完全に自分達より下だと、本気でそう思っているのだ。
殺す。絶対に。
だが、冷静さを欠いてはならない。あの人間達はやたらキラキラした宝石の指輪やネックレスを身につけている。恐らく、貴族か何かなのだろう。そんな奴らを今人が大勢いる前で殺してしまっては、俺は確実に捕らえられ、正体がバレてしまう。こいつらにはまだ俺の姿は勇者に見えている。であれば、後をつけて夜に奇襲をするのが一番得策だろう。
(すまない。もう少しだけ耐えてくれ。後で必ず…必ず助ける。)
俺はそう心の中でオーガ達に誓い、その場を離れた。
そしてその後俺は3時間ほどそいつらの後をつけ、住処を突き止めることが出来た。隠れてオーガ達の様子を見ていることしかできない自分に何度も腹が立ったが、もうそれもここで終わり。後は夜を待って、あいつらを皆殺しにするだけだ。
そう心の中で自分に気合を入れつつ、俺はそいつらの住処である城の近くの茂みで息を潜め、長い夜の始まりを静かに待った。




