初処刑3
5話 初処刑3
洞窟から出て女を捕らえた湖へと戻ると、予想通り男勇者二人は女を探し回っていた。まあ女の衣服や鎧はその場に置いてきたわけだから、誰かに女が襲われたのは一目瞭然だろう。ここから洞窟までの距離はあまり離れていないため、このまま野放しにしておくとゴブリン達のいる洞窟に行ってしまう可能性がある。そうなるとまたゴブリン側に被害が出てしまう可能性があるため、出来れば早めに仕留めたい。
「くそっ!!こっちもいないぞ!!」
「早く見つけて助け出さないと!!」
男勇者二人は、あの女がもう廃人となっていることも知らずに必死で茂みの中や岩影などを探し回っている。ちょうど二人ともほどよく離れた位置にいるため、一人一人狩らせてもらおう。
だが相手はさっきと違い武装していて、しかも力も女より強い。恐らく同じ方法では無理だろう。気づかれないうちに殺すのは簡単だが、それでは意味がない。それでは、あのゴブリン達の苦しみは味合わせられない。
だから、俺はあいつらをすぐ殺さず、かつ戦闘は出来ない状態にする必要がある。よし、決めた。目と脚を潰そう。一人をそうしておけば、その声に気付いてもう一人も寄ってくるだろう。それまで、そいつは木にでも縛り付けておればいい。ちょうど使えそうな縄があったから、さっきゴブリン達から貰っておいて正解だった。
そして木の上で片方の男勇者を待ち伏せた俺は、隙を見計らって上から小型ナイフを投げて男の両眼を潰した。
男はすぐに声をあげようとしたため、そのまま目の前に飛び降りて後ろに回り、脚の腱を切り取る。すぐに男は足から崩れ落ちたため、そのまま縄で木にくくりつけさせてもらった。男がすごい悲鳴をあげたため、思惑通りもう一人もすぐに寄ってきた。
すぐさま木の上に戻り、くくりつけられている仲間に気を取られて隙だらけだったそいつも、同じ方法で隣の木にくくりつけた。
「うぅ、くそ、目が…足がぁぁ……」
やっぱり二人ともうるさいな。まだ殺す準備をするには時間がかかるし、少し眠っていてもらうか。
そう思い睡眠薬を飲ませようと思ったが、目を潰され、脚の腱を切り取られているのだ。痛みで眠れるはずもない。なので、ゴブリンのやり方を見習って頭を石で殴りつけて気絶させてから準備に取り掛かった。少し強く殴りすぎた気もするが…まあ大丈夫だろう。
その後、男たちが目覚めたのは準備が完了してから30分ほど経ってからだった。準備と言っても大したものではない。二人を木から外して縄を結び直した後、足に人間の力では持ち上げられないであろう重さの石を縄で取り付けただけだ。
目覚めた男達は足と目と頭の痛みで悶えていたが、縄で縛られて何もすることは出来ない。そんな彼らにこれから待っているのは、湖での「溺死」だ。こいつらには見えていないだろうが、俺たちはもう湖に飛び込める位置の大きな岩の上にいる。あとはこいつらを湖に捨てるだけだ。
だが人間というのは面白いもので、自分が今から殺されると分かればすぐに命乞いを始める。この男達も例外ではなかった。あの女と同様すぐに「命だけは」と言い始めた。
まあ助ける気はこれっぽっちもないのだが、そうやって命乞いしながら暴れ、自ら湖に、即ち死に近づいていく様は滑稽で、見ていて愉快なものであった。
でもこいつらが何も分からずただ溺れ死ぬだけでは、この殺しに意味はない。殺された者たちも浮かばれない。こいつらには、もっと恐怖を刻み込まれた中で苦しんでから死んでもらわなければならない。
なので暴れるのを一旦やめさせる為に、俺はそいつらの両肩にナイフを刺してその場に二人を抑え付けた。男達は痛みで気を失うギリギリといったところで、体をビクビクと軽く痙攣させながら目からは血涙を流し続けている。きっとこの状態で最後に溺れさせて殺せば、こいつらを最大限に痛めつけながら殺せるはずだ。
「じゃあな。せいぜい、もがき苦しめよ」
そう言い放ち、俺は早々と男達を湖の中に突き落とした。ザパァンと激しく水面が波立ち、その足に括り付けられた岩と共に、男達はゆっくりと水中へ沈んでいく。口から泡を吹き出ながらも痛みで腕は上げられないようで、やがて少しの抵抗も見せないまま、その姿は深い暗闇の中へと消えていった。