初処刑2
4話 初処刑2
女が奥に連れて行かれてから1時間ほどが経過した。
あの後洞窟の中でチャンピオンに貰った食事を食べた俺は、女の様子を見に行くことにした。元々は拷問してから殺すつもりだったのだから、生温いことをしていたらもっと過激にしてやろうと思ったのだ。
だが、ゴブリン達の女への報復は、想像を絶するほどのものだった。
女はゴブリンたちに犯され、もう一言も言葉を発しない廃人となっていた。目は開いているから意識はある。だが、あるだけだ。ほんの1時間の間にこの女がどれほどの数のゴブリンに犯されたのかは知らないが、ここまでなるものかと思ってよく見てみると、女の片腕はもぎ取られて無くなっていた。
人間の骨を断ち切られる痛みはそのショックで死んでしまうほどのものだと聞いたことがある。つまり、あれの意識はもうないのだ。ただ目を開いた状態で気絶し、その間も犯され続けていたのだろう。恐らくあの女には体の痛覚などほとんど残ってはいまい。あれだけの数のゴブリンに犯されている最中でも、顔色一つ変わらなくなってしまっている。きっと、この後も昼夜問わずゴブリン達から全ての穴を犯され続け、やがて孕まされてゴブリンを生み出す排卵装置となるのだろう。
だが、かわいそうなどとは思わない。思う必要もない。こいつはこれくらいのことをされて当然のことをしたのだ。数多くの魔族達の将来を奪ったのだから、むしろこいつ一人の将来を奪われるだけでは釣り合わないというものだ。殺した魔族達の数、いや、それ以上の数のゴブリンを孕み懺悔する日々を送ってもらおう。
まあ、そんな事を考える頭があの女にまだ残っているかは分からないが。
そんなことを考えながら呆然と女が犯されているところを眺めていると、後ろからチャンピオンが歩いてきた。どうやら犯していたのは部下たちだけで、こいつはまだ参加していなかったらしい。
その手には棍棒が握られ、未だ表情は怒りの色に染め上げられている。
そして、俺の隣を素通りして女の目の前へとゆっくりと足を進めたチャンピオンは、握り締められた棍棒を縦に構え、女の腹へと突き立てた。
「ぐ、ごぼ…」
頭のあまりか、虚になっていた目が一瞬開き、口からは透明な粘質のある液体が溢れる。もう、俺がくる前に散々吐き切ったのだろうか。その口からは、もはや胃酸と唾液を混ぜたような、そんなものしか出てこない。
そしてその瞬間、ほんの一瞬であったが、女が意識を取り戻した。棍棒がゆっくりとどけられたとともに、最後の声を振り絞る。
「も…ころ…して……」
女の最後の一言は、命乞いでも謝罪でもなく、ただひたすらの「死にたい」という言葉の具現化だった。死ぬことによる救済。それだけを求めていた。恐らく、もう自分が助からないことは、しっかりと自覚しているのだろう。確かにこの状況であれば、一番楽なのは死ぬことだ。それをさせてもらえればの話だが。
だがここで、女は最後の抵抗に出た。口を開け、前に舌を伸ばす。間違いない。アイツは、舌を噛み切って死ぬ気だ。
しかし、そこで最後の手段はせき止められた。女の開いた口に、チャンピオンが指を突っ込んだのだ。
およそ全長2メートル半はあるであろう巨体の、太く硬い筋肉質な指。それは、今の弱り切った女の顎の力では、到底噛み切れるものではなかった。
そして、気を利かせたのか、後ろから1匹のゴブリンが、薄汚い布のようなものを持ってきた。チャンピオンはすぐさまそれを受け取り、指を引き抜いて女の口に巻く。
「ふぐ…ご……」
体を拘束され、口を閉じることをも禁じられた女には、もはや抵抗する手段は、一つも残ってはいなかった。これで本当に、終わりだ。
さて、もういいか。
俺はそのまま別れを告げず、洞窟を出た。俺には、まだやるべき事があるからだ。今頃、この女を探して、あの男勇者達が走り回っている頃のはず。俺もあいつらを見習って、残り2人をしっかりと地獄へ叩き落としに行くとしよう。




