表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/36

壊された安寧4

35話 壊された安寧4



 欲しい。力が。お父さんとお母さんを殺したあいつを……殺せるだけの、力が……


 本来、魔族の魔力というのは誰にでも宿る物じゃない。それは、力を激しく求めた者にのみ、呼応するように発生する。今までどおりの日常を繰り返すなかでは、絶対に生まれる事はない力だ。


 だが私のその殺意は、とある魔力を発生させた。


 発生した能力の詳細は、まるで元から体の中にあったかのようにはっきりと分かった。


「……よし」


 男は、まだ隣の部屋にいる。不意をつけば、今の私なら簡単に男を殺せるはずだ。


 私はベッドの下から出て、男の鎧から落ちた血に手を触れた。


 すると、その血は床から剥がれ、空中に浮き上がった。


 それを使い、窓から見ていたナツの首を跳ね飛ばした者の剣を、血で形作っていく。だが、それには下に落ちていた血の量では足りず、まだ、柄の部分しか出来ていない。


「もっと……血を、足さないと……」


 私は部屋にあったカッターで、自分の腕を切り裂いた。


「……」


 腕からは血が流れ、血管がドクドクと波打っているのが、より鮮明に分かった。


 でも、不思議と痛みは感じない。この時の私には、そんな痛みを感じられるほどの余裕はなかった。


「これで……」


 自分の血で足りない部分を足し、一つの剣を作成することに成功した。きっと、これならあの男の鎧も上から貫けるはずだ。


 私は音を立てないよう部屋を出て、扉が空いている隣の部屋を覗いた。


 男は、こちらに背を向けている。背後からこの剣を飛ばせば、気づかれずに殺せる。


 私は部屋の前から、男の心臓を目掛けて剣を飛ばした。


 あと、30センチ、20センチ。男までの距離が近づいて行く。こちらには、まだ気づいていない。


「やった……」


 もう、剣が男の体に触れる。絶対に殺せた。そう思った瞬間、男は右に跳んだ。


 すんでのところで私の剣を避け、獣のような眼光で、こちらを向く。


「おお。そこにいたのか。中々可愛いじゃねえか。貴族のとこに売り飛ばせば、いい金になりそうだ」


 男は咄嗟に腰に付けていた剣を抜き、こちらに向けて構えた。


 当然私は、応戦する。壁に突き刺さった剣を手元に戻し、その場に浮かせて臨戦態勢をとった。


「触れたものを操る。おおかたそんな感じの能力か。中々エグい能力だが、所詮は不意打ち特化のネタ能力だ。ネタが割れてしまえば、大したもんじゃねえ」


 男に視線を向けられてから、体の震えが止まらない。それは恐怖心か、それとも憎しみ故か、分からない。ただお父さんとお母さんが勝てなかった相手に、自分が勝てるとは、到底思えなかった。


(でも……)


 だがそれでも、負けるわけにはいかない。お父さんを、お母さんを、そしてナツを。私から全てを奪ったこの男にだけは、絶対に……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ