初処刑1
3話 初処刑1
昼頃目覚めた俺はすぐに村を出て、勇者たちが魔族を狩りに行っているであろう森の中へと向かうことにした。
「でやぁぁぁぁ!!」
人間の叫び声が聞こえる。恐らく、仲間が襲われているのだろう。急いで助けに向かわねば。きっと人間の姿をした今の俺なら、不意をついてすぐに殺せるはずだ。
森の中を全力疾走し、声のしたほうへと急ぐ。だが、俺が着いた時には既に手遅れだった。
そこではゴブリンの群れが皆殺しにされ、あたり一面に血に塗れた死体がいくつも転がっていた。無残に斬殺された死体たちには、首や腕が欠損しているものもいくつも見れらた。もう少し、あとほんのちょっとでも俺が早く駆けつけていれば、こんなことにはなっていなかったかもしれない。そう思うと、とても胸が苦しくなった。
(すまない、必ずお前達の仇はとる。)
ゴブリン達を救えなかった自分を恥じながら、俺はせめてもの贖罪にとこいつらの仇を探すことにした。声を聞いてからそう時間は経っていないから、まだすぐ近くにいるはずだ。
そして辺りを探すこと数分。俺は、ゴブリン達の返り血で真っ赤な鎧に身を包んだ3人組を発見した。
間違いなくあいつらがゴブリン達の仇だろう。あんなに残虐な殺し方をしたのだ。ゴブリン達はきっと痛かったろう。辛かったろう。殺すだけでは生温い。四肢を切り取った後、木へ貼りつけ痛めつけてから殺してやる。
俺は一旦身を潜め、隙を見せるのを待ちながらしばらく後をつけた。すると、3人のうちの1人の女が水浴びをしたいと言い出した。当然だろう。全身が真っ赤になるような返り血を浴びているのだ。女がそれに耐えられるはずがない。
これは絶好のチャンスだ。残りの男二人を警戒する必要もなく、装備を外した無防備なやつを殺ることができる。
当然この処刑に男か女かなどは関係ない。容赦なく殺させてもらう。
そのまま近くの湖にたどり着き、男二人を別の場所へ退けた女勇者は、鎧を脱ぎ裸で水浴びを始めた。
近くの茂みで身を隠し、確実に殺れる隙を狙う。声を出されて残りの男を呼ばれては面倒だから、一度眠らせて場所を移動してからじっくりと殺ろう。
そして女が顔を洗うために水面に顔をつけた瞬間、俺は背後から飛びかかった。ハンカチに睡眠薬を入れ、それを女の口に当てて飲ませる。即効性のあるもののため、女はすぐに眠りへと落ちていった。まだ残りの男勇者は気付いていなかったため、俺はそのままその女を抱えて近くの洞窟へと移動した。
さて、この女どうやって殺してくれよう。俺の同胞達をあれだけの数殺したのだ。かなりキツい殺し方をしなければ、殺されたゴブリンたちが浮かばれない。何より、俺の気が済まない。
そうやってぐっすりと眠っている女を縄で縛りながら処刑方法考えていると、洞窟の奥から物音がした。
まずい。他の人間がいるのか。いや、むしろ好都合だ。この女と共に処刑してやろう。
そう企みながらダガーを構えると、奥から出てきたのはゴブリン達の王である、「ゴブリンチャンピオン」だった。
初めてみるチャンピオンの図体のデカさに一瞬驚きはしたが、これが同じ種族であり仲間だというのだから、むしろ心強い。同じ魔族だと気付いてもらうため、俺は急いで擬態を解いて話しかけた。
「紛らわしくてすまない。俺は魔族だ」
すると、ゴブリンチャンピオンは意外にも俺のことをすぐに受け入れた。何故この女を連れているのかなどを話していると、殺されたのがこいつの部下のゴブリン達であることが分かった。こいつも、いつまでも帰ってこない部下を心配して、探しに行こうとしていたらしい。
チャンピオンは酷く怒り、涙を流していた。当然だ。この女と残りの二人の勇者に、自分の部下を半分も殺されてしまったのだから。
その姿を見て、俺の考えはすぐに決まった。この女の処刑はこいつらに任せよう。きっと、俺が殺るよりもその方がいいはずだ。
そう思い、俺は女をチャンピオンに差し出した。
するとその瞬間、女が目を覚ました。一瞬周りを見渡し、自分の置かれている状況をすぐに理解した女は、全力で叫び始める。
「いやぁぁぁぁぁ!!助けて!!お願い!!命だけは、命だけは助けて!!」
チャンピオンに向かって、女はそう命乞いを繰り返した。だが、繰り返すたびにチャンピオンの顔色は怒りに染まっていくのが目に見てとれる。どうやら、女をどうするかは決めたらしい。そしてただ一言
「連れていけ」
そうチャンピオンが言うと、後ろで控えていたゴブリン達が女を洞窟の奥へと連れて行った。女は連れて行かれる間もずっと命乞いを止めなかったが、うるさい声に耐えかねたゴブリンが頭を石で殴り付けてからは言葉を発しなくなった。その頭からは血が流れ、女は意識を失ったようだが、恐らく殺してはいないだろう。
だが、これであの女の「命だけは助けて欲しい」という願いは叶ったわけだ。きっと文句は言うまい。
たとえこの後、命以外の全てが奪われたとしても。