複合する能力
29話 複合する能力
戦いを終えて家に帰った俺たちは、軽く朝食を取りながらお互いの能力について詳しく話し合った。
「私の付与は、自分自身、もしくは周りの物などに自分が触れたことのある物体の姿や性質を付与したり、それを操ったり出来る能力です。物体は可能ですが、生物は不可能です。操れる範囲は、自分から50メートルくらい。離れた物質も操れます」
ふむ……。やはり、とても強い能力だ。そして、俺の能力との相性がとても良い。
「俺の能力、擬態は逆に、生物のみの姿や性質を俺の身体にコピーする。擬態した生物が魔族なら、そいつの魔力も宿す事が出来る」
「それで、さっきは私の付与を宿したんですね......」
ルナは、納得するように言った。
「そう言う事だ。そして、本題はここからだ。さっき俺がしたように、二人の能力をうまく掛け合わせて出来ることを増やしていきたい」
俺たちの能力で一番相性がいい点は、お互いの苦手な点をカバーし合えることにある。そして、おそらく俺の予想が正しければ……
「どうやら付与の能力を持った状態なら、俺の擬態で得た生物の姿を武器に移す事も可能らしい。つまり、これを応用すれば、俺の擬態をルナが使えるようになるかもしれない」
そう言うと、ルナはとても驚いていた。
「本当ですか!!ロイ様の能力、ぜひ使ってみたいです!!!」
想像以上に喜んでくれているな。早速、試してみるか。
「分かった。じゃあ、手を貸してくれ。俺の右腕を擬態でルナのものにして、付与の能力で擬態をルナに移植する」
そう言い、俺はルナの前に自分の右腕を差し出した。
「て、手を、繋ぐのですか......?」
ルナは、少し顔を赤くしながらそう聞いて来た。少し馴れ馴れしかっただろうか……嫌だと言うのなら、別の方法を考えなければならない。
「すまない。嫌、だったか?」
てっきり嫌がっているのだろうと思ったのだが、ルナは全力で否定してきた。
「い、いえ!そうじゃありません!!ただ、急だったので少し驚いただけです!!ぜひ、ぜひお願いします!!!」
ルナは、俺の右手を両手でガッチリと掴んだ。
「そ、そうか。じゃあ、早速始めよう」
「擬態!」
俺は右腕をルナのものに擬態し、付与の能力を手に入れる。
「な、なんか自分の手を自分で握ってるのって、凄い違和感です......」
まあ、自分の手を両手で握る機会なんて、普通は無いからな。
「よし、じゃあ行くぞ。付与!」
俺は合図とともに、繋いだ手から擬態をルナに流していく。だがどれどけ続けても、目に見える変化は起こらなかった。
「失敗……か。特に何も起こらないな。」
ため息混じりに呟きながら隣を見る。するとルナは、ルナではなくなっていた。
ルナがいたはずの俺の隣には、もう一人、俺がいたのだ。
「擬態、出来ちゃいました……」
「お、おお……」
どうやら、実験は大成功のようだ。しかし、隣にもう一人自分がいるって中々怖いな……。ルナが嫌がっていたのも分かる。
「元の姿には戻れるか?」
俺がそう問いかけると、ルナはすぐにルナに戻った。
「はい。何というか、もう少し慣れが必要だと思いますけど、多分扱えると思います」
「じゃあ、今日は擬態を使う訓練だ。俺にも、もっと詳しく付与の使い方を教えてくれ」
きっと、この能力をルナが使いこなせるようになれば、かなりの戦力アップに繋がるはずだ。レオパルドを殺しに行くのは、それからでも遅くはない。




