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闘技会6

21話 闘技会6



 一戦目は、ツバキの試合だった。


 一回戦、二回戦で見せた突きの速さは会場の全員の印象に深く残っていたため、初撃の突きで終了といった展開にはならなかったが、敵の攻撃を避け続ける動きのキレと、持ち前の突きを巧みに操り勝利した。


 二戦目は、ドレッドという名の男と、シズクという名の女が対決。かなりの接戦だったが、一瞬の隙をつき、シズクが勝利。


 そしていよいよ三戦目。俺とルカの試合である。


 俺は擬態に頼らず、技量だけでこの男を超えられるのか……


『さあ!五回戦最後の試合はこの二人!!どちらも圧倒的な強さを見せつけて来た彼らはどのような試合を見せてくれるのか!!それでは、第三試合、開始です!!!』


「行くぞ!!」


 試合開始とともにルカは距離を詰めて来た。木刀を俺の体に向けて何度も振り下ろし、その剣速の速さを見せつける。


「っ……」


 何とか反応してギリギリで直撃は避けているものの、何度か体を木刀が掠める。このままではいつかは攻撃を喰らう。そう思い少し距離をとった。


 だが、ルカはそれを許さない。俺が離れた分だけ距離を一瞬で詰め直し、攻撃を続ける。


「どうした!逃げているだけでは勝てないぞ!!」


 何とか木刀で受け止めたり避けたり出来てはいるが、正直かなり危ない。少しでも体勢を崩したりすれば、その瞬間を突かれて終わりだ。普段のダガーや飛び道具があれば攻略法はいくらでもあるかもしれないが、木刀一本となるとかなりキツい。


 そしてジリジリと後ろへ追い詰められて行った俺は、あと1、2歩も下がればリングから出されてしまう所まで追い込まれていた。


(このままではまずい。何とか隙でも見つけられないか……)


 そう思い攻撃を避けつつも、ルカを観察し続けたが、中々隙のようなものは見つからない。そもそも、反撃に転ずるような余裕がない。


 一瞬、負けるのを覚悟してしまった。


 だが、ここで俺は男の明確な弱点に気付いた。


(もしかして、こいつ……)


 やはりそうか。剣を振る直前、こいつは一瞬だが狙う場所に向けて視線を向けているのだ。つまり、こいつの視線を見れば、狙ってくる場所を少しだけ早く読むことが出来る。


 恐らく、人間の目が相手なら気づかれる事なく、剣速でのゴリ押しが可能だっただろう。だが、人間より遥かに優れた俺の魔族の目には、その一瞬は確実に捕らえられた。


「これで、とどめだァァ!!」


 ルカはそう叫んだ瞬間、俺の右脇腹付近に一瞬視線を向けた。


(よし……!)


 そして予想通り、ルカの木刀は俺の右側から脇腹に向けて振り下ろされた。向けられた視線と、全く同じ場所。俺の考えは正しかったようだ。


 俺はそれを左に大きく避け、ルカの後ろに回り込んで距離をとり、リング中央まで戻った。


「何......だと?」


 明らかに攻撃を読んでいなければ出来ない回避に、ルカは困惑した。自分の癖には気付いていないのだろう。当然だ。人間の目では捕らえられないのだから、こいつにその癖を教えることが出来る相手はいない。


「ふ、ちょっとはやるじゃないか。だが、これならどうだ!!」


 再びルカが距離を詰めて来るが、その攻撃が俺に当たる事はない。いくらこいつに剣速があろうと、先に攻撃が読まれている相手に当てるのは不可能だ。


「な、なんで!なんで当たらないんだ!!」


 俺は全ての攻撃を避け、反撃に出た。


 さっきまで当たっていた自分の攻撃が全くかすりもしなくなり動揺したルカには、いくつもの隙が生まれた。


「くそ、何がっ……」


 やがて少しずつ俺の攻撃回数が増え、防戦一方になっていくルカ。攻撃しても当たらないのだから、その状況を覆すことは出来ない。


 そのまま攻撃をたたみ掛け、ルカの服の上から胴にとどめの一撃と言わんばかりの攻撃がめり込む。すると、息が止まったかのような一瞬の呻きと共に、ルカはその部分を抑えながら降参した。


 こうして、シードの一人を含め、準決勝に進む四人が決定した。

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