闘技会4
19話 闘技会4
2回戦は、1回戦で勝ち上がった計54人の参加者の27試合が行われる。順番で49試合目の勝者が50試合目の勝者と当たるといったシステムではなく、1回戦ごとに再抽選を行うらしい。俺は、第二試合を引いた。
特に変哲のない1試合目を見終わり、俺の番が来たが、相手はモーガンよりもはるかに弱く、一瞬で試合は終わってしまった。まあ、あいつは前回のベスト8だったわけだし、当然と言えば当然なのだが。
第14試合、レインも相手を余裕で負かし勝ち上がっていた。あいつ、勇者達より普通に強いな......
そして第24試合目、前回大会優勝者のルカの試合が始まった。
相手は前回ベスト4まで勝ち上がった強者だったらしいが、一回戦と何ら変わらず涼しい顔ですぐにのしてしまった。
やっぱり注意すべき人物はルカ、そして一応レインも、といった感じだろう。ちなみにレインは前回大会準決勝で負けたらしい。注意人物が二人いる時点で決勝までいけば必ずどちらかとは当たるが、まあ多分ルカと当たるだろう。
そんな事を考えながら適当に試合を見続け、最後の27試合目が始まった。
全く見た事のない顔だった為、恐らくはレインと話していたせいで見ることが出来ていなかった最後の2試合のどちらかの勝者だろう。実況者のアナウンスによると、俺と同じく今回初参加で、名はツバキというらしい。女らしい名前に、細身な体をして青色の服装に身を包んだその男には、妙な違和感を感じた。
そして試合が始まると、俺は一瞬で感じた違和感の正体に気づくこととなる。
開始の合図と共に構えた木刀を前に向けたツバキは、それで相手の男の胴を一突きし、10メートルほど吹き飛ばして一瞬で倒してしまった。その試合時間は、ほんの一、二秒だったと思う。
あまりに速すぎてほとんどの者がその瞬間を見ることが出来ず、会場は一瞬静まり返った。が、すぐに歓声が上がり、気づけば会場は再び熱気に包まれた。
あの突きの速度は、明らかに人間の域を超えている。ルカの剣速もかなり化け物じみていたが、あれはそれ以上だ。
全身に鳥肌が立つ。何回、何十回と思考を繰り返しても、自分があれと対峙した時に勝てるイメージが全く湧かない。
それに、今の俺にはハンデもある。いくら一番体格が近そうな者を選んで擬態しているとはいえ、所詮は人間の勇者の体。自分の体を使っている時とは勿論使用感が異なる。普通の奴相手なら気にしなくても良いほどのものだが、あのバケモノが相手なら話は別だ。その少しの変化で、一気に戦況が変わってしまう。
(さて、どうしたもんか……)
この一戦で、ツバキという男の名は、俺の今まで見て来た勇者の中で1番の危険人物として深く刻まれた。