闘技会2
17話 闘技会2
「では、まずルール説明をさせて頂きます。今回参加者は108名のため、この全員でのトーナメント戦となります。一対一で、武器はこちらから支給した木刀のみとさせて頂きます。服装は自由で構いません。鎧の着用も許可いたします。相手を降参させるか、戦闘不能にする、もしくはリングの外に出せば勝利となります。また、木刀以外の武器を使うなどの反則行為が行われた場合は即失格となりますのでご注意下さい」
使用人の丁寧な説明が終わると、全員レオパルドの所有している闘技場へと移動させられた。
その闘技場の大きさは面積だけで言えば一つの城ほどのものがあり、客席は既に観客で埋め尽くされていた。
円形の客席に囲まれた中央には、真四角の縦横約2、30メートルのリングがあった。試合はそこで行われる。
トーナメントの組み合わせのため、参加者全員がくじを引いた。一回戦は54試合あるが、俺はそのうちの50番目とかなり後の方となった。まあせっかくの機会なので勇者達の実力をしっかりと見させてもらおう。強い者がいるのなら、それも確認しておきたい。
そして観客の大熱狂の中、一回戦が始まった。
普段戦闘を見慣れない観客達からすればかなり面白いものなのだろうが、その試合のほとんどは俺にとっては見ていても退屈なものばかりだった。
遅く浅い太刀筋の者同士が戦ってどちらかが勝つ。ただそれだけの試合が20戦ほど続いた。
だが、22戦目に中々興味深い男がいた。いちいちリングに上がってくる者の名前と紹介を丁寧にする実況者によると、名前はルカというらしい。
何でもその男は第一回大会の優勝者らしく、リングに出てきただけで観客の空気が変わり、かなりの歓声が送られていた。
相手もまたそこそこ名前の通った有名な者だったらしいが、流石第一回優勝者の実力はかなりのもので、わずか数秒でのされてしまった。
ルカの剣速は今まで見た勇者の中で1番のものだった。あの弓兵やリアという女とは非にならず、俺ですらギリギリ目で追えるかどうかの速度だった。
本来なら魔族の動体視力は人間の2、3倍はあるため、ある程度、いや、かなりの実力者が相手であったとしても、太刀筋を見切れるほどの動体視力はあるはずなのだ。それでも尚ほぼ見えないとなると、かなり厄介だな。初戦で当たらなくて本当に良かった。
その後もまた10戦ほど普通の試合が続き、32戦目でレインが出てきた。
(あいつも参加していたのか。正直、そんな強そうには見えないがな……)
試合が始まるまではそう思っていたが、あのコワモテな外観から放たれる一撃一撃は強烈で、気づけば対戦相手は木刀を吹き飛ばされ、降参していた。実に脳筋な戦い方だが、意外と馬鹿には出来ないかもしれない。
その後は2、3人は気になる者もいたが、まあ負ける事は無いだろうといった感じだった。
そして50戦目。俺の番が来た。
対戦相手の男はレインよりもいっそう筋肉量が多く、一目見ただけで日頃よく鍛錬しているのが分かるほどのものだった。
木刀など使い慣れてはいないので殺さないように手加減出来るか不安だが、まあ出来るだけ善処しよう。