休息
11話 休息
城を出て、人間の村に戻った頃にはもう9時をまわっていた。丸一日ほど睡眠を取れていないため、俺は宿に戻って少し仮眠をとることにした。
3時間ほどで起きるつもりどったのだが、起きて時計を見ると夕方の5時をを少し過ぎていた。きっと体に疲れが溜まっていたのだろう。夕方にもなれば魔物を狩りに行っている勇者達もそろそろ村に帰って来てしまう時間だ。あいつらを殺るなら、出来るだけ村から離れている方がいい。今日はもう諦め、次の日の朝に備えてしっかりと睡眠をとっておくことに決めた。
◇◆◇◆
「ん……」
次の日の朝、7時くらいに目を覚ました俺は、戦闘に使う道具が残りわずかしかないことに気づき、商店街へと調達に行くことにした。つい2日前に嫌な思いをしたばかりの場所だが、武具屋は商店街の中にしかないし、何よりあの成金貴族達はもういない。あんなおぞましい光景を見ることもないだろう。俺は足早に商店街へと向かった。
商店街では、人溜りが出来て軽く騒ぎになっていた。どうやら、掲示板の前に群がっているらしい。
俺も寄ってみようかと思いその方向に足を向けると、突然後ろから声を掛けられた。この前のレインとかいう男である。
「おう!あんちゃん久しぶりだな!!」
ちょうどいいので、何で騒ぎになっているのか聞いてみた。
「あー、あれか?何でも、貴族の奴の城から人っ子一人居なくなってたらしいぜ?しかも城の中の金目の物や服とかは全部そのままで、人だけが消えてるんだと。あそこは護衛としてかなり強い勇者を雇ってたらしいんだが、そいつもいないときた。ほんと、変な話だよなあ......」
「ああ、そうだな」
恐らく、俺が殺した城の連中の事を言っているのだろう。念のためあの女の死体も片付けておいてよかった。
「あそこの連中は闇取引とか黒い噂も多かったからな。もしかしたら、全員で夜逃げでもしたのかもしれないぜ」
まあ、そいつらは今頃地下で悶えてるだろうけどな。そんな事はこいつには想像もつかないか。見つかって救出でもされたら水の泡になるところだったが、この調子だと見つかったとしても全員死んだ後だろう。
「ま、最近は色々と物騒だからな。あんちゃんも気をつけろよ!じゃっ!」
「ああ。またな」
レインとの会話を終えた俺は、再び武具屋に向けて歩き出した。
「いらっしゃいませー!」
武具屋に入るとレジの方から女が元気よくそう叫んだ。そしてそれと同時に、こちらへと急いで駆け寄ってくる。
「何かお探しですか?見ない顔の方ですが、新米の勇者さんですかね?」
「ああ」
女の案内のもと、必要な物を買い足し、10分ほどで俺は店を出た。時計を見ると、時刻は9時30分。そろそろ、勇者どもが森にいてもなんらおかしくない時間だ。
そして足早に商店街を抜けた俺は、急いで森へと向かった。