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  作者: ひじきとコロッケ
魔族領へ向けて
51/55

砂漠超えの準備

「なるほど、勇者召喚と……生贄……ですか」

「はい」

「さすがに、エドガーでしたか、その魔術師についての記録は残っていないと思います」

「状況的に記録を抹消しているでしょうねぇ」

「そして、今回の召喚ですが」

「はい」

「儀式を行う数日前から城内の一部区画が立ち入り禁止にすると、通達が出ていました」

「へ?」

「通達?」

「その区画で壁が老朽化して崩れたため修理すると。その間は危険だから近寄らないように、と言うことでしたが……召喚を行った地下室までのルートを全て封鎖していたとも言えますね」

「人数が多いから通路ごと隠す必要があったというのが、自然な解釈かな」

「秘密を知る者は出来るだけ少なくする、と……」

「そうでしょうね」

「前回の勇者の時には?」

「うーん……その時は私もまだ働き始めたばかりでしたので、あまりよく覚えていませんが、そう言うことは無かったと思います」

「でもよお……そのエドガーって奴の予想じゃ二百人近くの人間だろ?どこから連れてきたんだ?」

「それな」


 中山の指摘にティアがフム、と考え込む。


「バタバタしてあまり情報が集められていないのですが、大半が奴隷でしょう。あとは……罪人……政治的に対立している派閥の貴族の関係者とか」

「うわ」

「えげつねえ」

「はっきり確認出来ていないのですが、数名の貴族を見かけなくなっていましたから、確度は高いかと」


 罪人なら何をしても良いとは言い難いがあの国の法律なら文句をつけるのは筋違いだろう。だが、ただ単に政治的に対立しているだけで生贄にされてはたまった物ではない。


「村田君、前回召喚された勇者候補を見つけたとしても、そのあとどうするんだい?」

「いきなり俺に振られても……」

「だって、君が一番強いじゃないか。ぶっちゃけ世界一なんじゃないの?って位に」

「それは認めるけど……」


 認めるのかい!と全員が突っ込みを入れる中、塚本が続ける。


「正直なところ、君なら王国の騎士団全員くらい、簡単にぶっ飛ばせると思うんだよね」


 うんうん、と幹隆以外の全員がうなずく。


「アレだ、王国の所業を世に知らしめて、国家転覆!とか出来るんじゃないかな?」

「いやいや、さすがに無理でしょ」

「いえ、出来ると思いますよ」

「え?」


 現代地球において、国家の権力構造が入れ替わるというのはなかなか無い。武力による国家転覆を謀ってもだいたいは国連を始めとする国外からの介入があり、平和的な解決(・・・・・・)で落ち着かせることが多いからだ。ましてや民主的な国家の場合、選挙によってトップが入れ替われば良いだけの話なので政権交代で血が流れることはないと言っていい。

 だが、この世界では大半の国が王や皇帝と言った権力を掌握したトップがいて、そのまわりを権力者に従う者が囲む構造になっているため、トップを物理的(・・・)に排除してしまえば、国家そのものが変わることになる。


「ステータスだけで言えば騎士数十人分ですからね。一度にまわりを囲める人数なんてせいぜい五、六人。鼻歌交じりで騎士団が全滅するでしょう」

「……そう言われると、出来そうな気がするけど、国家転覆ってそのあとその国を治めるんだろ?さすがにそれは無理だぞ。つーか、召喚されてきた俺ら全員でも国家運営なんて出来ないだろ」

「それはそうだね」

「ですが、国王死亡の(しら)せが大陸中に知れ渡れば……隣接する国家が攻め入って国土を割取(かっしゅ)していくでしょう」

「それでいいや」

「……その場合でも、かなり揉めると思いますけど」

「正直どうでも良いです」

「だよねぇ」


 なかなかに物騒な話も出てきたが、とりあえずそれ以上の情報は今のところ無いため、話は終了。明日からの二日間の予定を確認し、解散となった。


「ねえ、ミキくん」

「なんだい、茜?」

「さすがにもうこのパターンは飽きられると思うんだけど」

「飽きる、飽きないの問題じゃないんだ」

「ぶーぶー」

「さ、寝るぞ」


 茜も一応は盗賊、斥候であり、縄抜けなんかの技術もあるのだが、幹隆の力で「普通ならその形に縛るのは無理だよね」という縛り方でガチガチに固められてしまうと身動きが取れなくなる。結果、ベッドの上でピチピチと魚のように跳ねるだけ。


「はっはっは……茜、明日も早いんだからさっさと寝るんだぞ」

「(ふごーっ!ふごーっ!)」


 大声を出すと迷惑なので口に布も巻いた。これで朝まで安心だ。




「質問」

「はい、越智君」

「砂漠と言ったらラクダでは?」

「いい質問ですね。川合先生、解説を」

「はい、塚本さん。簡単に言うと、この世界にラクダはいません」

「「「えーっ」」」

「お前ら何やってんの?」


 おかしな小芝居が始まったところで幹隆が突っ込みを入れた。


「いや……だって……なあ?」

「ラクダ、いないんだぜ?」

「ちょっと憧れてたんだよな。ラクダに乗って砂漠を旅するとか」

「うんうん」

「まあ……気持ちはわかるが……」


 何だかな、と言う目で一同を見渡す。


「だろ?村田もわかるよな?!」

「ちょっと待て松島!その前に村田のジト目!もう一回やってくれ!」

「うわ、俺見逃した!」

「……はあ……付き合いきれん」


 砂漠を越えるために必要な物リストをティアから受け取り、手分けして買いに行こうとしたのだが、この世界にラクダがいないというだけでこれだ。他にも色々違うと思うんだが……


「ラクダ?って何です?」

「ああ、ティアさん。ラクダというのはですね……俺たちのいた世界では砂漠に住む動物なんです。砂漠の近くでは飼い慣らして砂漠を旅する足にしてたみたいです」

「へえ……なかなか過酷なところに暮らしてたんですね」

「いえ、俺たちのいた国には砂漠はありませんでしたから、ラクダも少し飼われてた程度でしたよ?」

「ん?砂漠に住む動物で、砂漠がない国なのに、そんな動物を飼っていた?何のために?」

「ああ……えーと……主に観光目的?」

「観光?砂漠がない国で、砂漠に住む動物を飼育するのが観光?」

「……そういう……なんていうか……うん、そう言うのがあるんですよ」

「はあ……なんだかよくわかりませんが……」

「と言うか、ティアさん、砂漠を越えるのに動物とか使ったりしないんですか?」

「使いませんね。気温も含めて過酷な環境ですから、良く飼い慣らした馬でも言うことを聞かなくなて逃げたりしますし、何より環境……つまり暑さに耐えられません」

「それで、こんなに色々と買い込むわけですか」

「ええ」


 水、食料、衣類などのカテゴリ別に分担して買い出しに行くグループと……


「では行きましょうか」

「ええ、お願いします」


 幹隆による、ティアの育成開始だ。

 一般的にいえば、ティアも充分に高レベルで一流冒険者と言えるのだが、このメンバーの中では見劣りするので、幹隆と共に少しゴブリン狩りでもしてこようということになった。


「うう……ミキくんとティアさんが二人きりとか……過ちが起こる未来しか見えないんだけど!」

「茜……過ちが起こる未来ってところが意味わからん」




 そんなやりとりもしながら、二日間の準備を終えた。


 ティア・バートン

 レンジャー レベル75 (63551/75000)

 HP 1211/1211

 MP 936/936

 STR  23

 INT  16

 AGI  38

 DEX  30

 VIT  12

 LUC  19


 稲垣健太

 槍聖 レベル76 (44352/76000)

 HP 1657/1657

 MP 1100/1100

 STR  49

 INT  14

 AGI  27

 DEX  26

 VIT  27

 LUC  11


 塚本幸子

 ビーストマスター レベル76 (3156/76000)

 HP 1098/1098

 MP 1409/1409

 STR  17

 INT  25

 AGI  24

 DEX  30

 VIT  17

 LUC  32


 中山徹

 猫獣人・斥候 レベル76 (21549/76000)

 HP 1264/1264

 MP 1259/1259

 STR  23

 INT  18

 AGI  61

 DEX  45

 VIT  15

 LUC  23


 松島浩平

 剣士 レベル76 (25331/76000)

 HP 1584/1584

 MP 1046/1046

 STR  43

 INT  16

 AGI  24

 DEX  21

 VIT  29

 LUC  16


 日野のどか

 治癒術士 レベル76 (23009/76000)

 HP 1306/1306

 MP 1476/1476

 STR  17

 INT  35

 AGI  20

 DEX  19

 VIT  24

 LUC  18


 越智香緒里

 猫獣人・格闘家 レベル76 (24581/76000)

 HP 1517/1517

 MP 1041/1041

 STR  42

 INT  11

 AGI  59

 DEX  34

 VIT  17

 LUC  17


 清水聡子

 ドワーフ・重戦士 レベル76 (20191/76000)

 HP 1706/1706

 MP 1085/1085

 STR  46

 INT  18

 AGI  18

 DEX  32

 VIT  31

 LUC  18



「すごいと言うのは聞いていましたが……」

「え?」

「これ……私だけで騎士団団長に勝てそうな気がします」

「あ、あはははは……」


 ここにいる中で一番戦闘向きでない日野でさえ、耐えるだけなら出来そうな時点で変な笑いしか出てこない。


「さて、それでは早速出発しましょう」

「「「はい!」」」


 荷物の確認を終えると早速街から出て東へ向かう。ティアが砂漠での注意点を全て伝えきっていなかったのと、いくつかの道具類の使い方を説明するため、歩いて移動。道なりに進んでいけば昼過ぎには砂漠に入る予定だ。

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