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  作者: ひじきとコロッケ
ミガル王国
37/55

冒険者登録

「ありがとうございました」

「おう、頑張れよ!」


 衛兵に冒険者ギルドの場所を聞き、いよいよミガルの街、ランプルに入る。ミガルでは王都に次ぐ第二の都市と言うことで街としても大きく、賑やかだ。


「通行料が高いのが難点だな」

「この許可証、一週間しか使えないのよね」


 幹隆たちはティアのアドバイス通り、「ド田舎の村から冒険者になるために街までやって来た幼なじみ同士」という設定で街に入った。戸籍のようなものは管理されていないので、密入国してきたかどうかなんて調べようもない。街の出入りを衛兵がいちいちチェックしていると言っても形だけで、余程のことが無い限りはスルー。


「冒険者になってランクを一つあげれば、この街の出入りは無料になるんだよな」

「もう一つ上のDランクになればミガル王国内は無料だったよね」


 まずはDランクを目指す。そう決めて、冒険者ギルドの前で立ち止まる。

 なかなか立派な建物で、衛兵の話だと狭い部屋だが宿もあるらしいので、しばらくはここで寝泊まりすることになる予定だ。


「冒険者ギルドで登録か……」

「女の子二人ってのは目立つよね」

「色々絡まれるパターンか?」

「絡まれたら守ってね、ミキくん」


 そう言う茜もかなり人外のレベルなんだけどな、とは口が裂けても言えない。


「ま、とにかく入ろうぜ」

「うん!」


 特に扉があるわけでも無い入り口から中に入ると、すぐ真正面が受付カウンターになっており、昼下がりという時間帯のせいか、五つある窓口には誰も並んでいなかった。と言うか、窓口にいるのも一人だけだったのでそのまま進んでいく。


「あの」

「あら、初めましてね。ようこそ、冒険者ギルド、ランプル支部へ。ご用件は何でしょうか?」

「えっと……」

「私たち、冒険者になりたいんです!」


 茜の目がらんらんと輝いているのは、受付が猫獣人だからだろう。カウンターから見える腕や首の辺りも毛皮に被われており、ぶっちゃけ顔の部分をくりぬいた猫の着ぐるみを着ているようにも見える。そう、簡単に言えばモフモフなのだ。


「あら、二人とも冒険者に?」

「はい!」

「わかりました。それでは手続きをしましょう。あ、申し遅れました、私はここの受付業務を担当しているニムです。よろしくね」


 そう言って、冒険者登録の用紙を二枚渡してきた。名前と出身地、生年月日に冒険者として役立ちそうな技能について描き込む欄があり、二人の手が止まる。


「えーと……」

「出身地、生年月日は書かなくてもいいわよ。ただ単にこの辺出身なら土地勘があるかなとか、他の冒険者に紹介するときに歳が近い方がいいかなとかそんな程度だから。あと技能もそんな感じね。前衛・後衛とか生産スキル持ちとか、ざっくりでいいわよ」


 改めて幹隆と茜が顔を見合わせる。


 出身地、日本?いや、通じないだろう。だからと言って、レクサム王国とは書けない。

 生年月日?この世界のカレンダーを知らないんだが、年齢だけでいいだろうか?

 技能?狐巫女と書けばいいのか?いやいや、ダメだろう。


 とりあえず出身地は空欄。生年月日は年齢。技能は前衛・後衛で物理攻撃主体とだけ書いて、登録料と共に提出する。


 ニムは「年齢だけしか書かない人も、よくいますから」とにこやかに受け取り、冒険者ギルドの説明を始めた。依頼の受け方、失敗時のペナルティ、ランク等々。幹隆たちにとって重要なのはランクをさっさと上げる方法なので聞いてみる。


「魔物討伐が一番手っ取り早いでしょうかね」

「魔物……」

「なりたての冒険者はゴブリン退治からですね。街を出てすぐの森を半日も歩けば二、三匹は遭遇すると思います」

「少ないんですね」

「ええ。たくさんの冒険者が間引いてますから」

「なるほど」

「もしも、たくさんのゴブリン……それこそゴブリンリーダーなどに率いられている群れや巣を見つけても手を出さないで下さいね」

「え?」

「速やかにギルドへ報告を。ゴブリンリーダー等の上位種がいるとCランク以上の冒険者数名で対処する必要がありますので」


 駆け出しには任せられないと言うことだ。


「その他に質問は?」

「えーと……」


 とりあえず宿に泊まりたいことと、この街でお薦めの武器や道具を扱っている店の場所を聞き、今日は色々と買いそろえるだけにして、明日から活動すると伝えておく。


「わかりました。宿の手続きはあちらになります。それでは頑張って下さいね」


 にこやかな笑顔に見送られ、とりあえず泊まる部屋を取って上がる。


「モフりたい、あの笑顔」

「唐突にどうした、茜?」

「いいわよねぇ……あの毛並み」

「人に迷惑をかけるなよ?」

「大丈夫よ。憧れるだけだから」

「ん?」

「こんなに近くに触り放題の尻尾が!」

「やめんか!」

「よいではないか~よいではないか~」

「お前、こっちに来て性格変わってないか?」




 とりあえず、荷物を下ろして街へ出る。ゴブリンを討伐して稼ぐとしても装備は調えたいところ。現状二人が持っている装備は……幹隆がすっかり馴染んでしまった棍と、オーガキングの剣、ゴブリンキングの剣だけである。棍は幹隆が使うとしても剣はどちらも茜が振り回すには少し大きすぎる。訳のわからん値になっているSTRのおかげで振り回すのは問題ないのだが、街中で持ち歩くにはあまりにも目立ち過ぎる。それっぽい装備を身につけてカモフラージュしなければならない。


「ここがギルドお薦めの武器と防具の店か」

「ちょっとワクワクするね」


 比較的大きな間口の店には様々な武器・防具が並べられており、実際に手に取って感触を確かめている物もチラホラいる。その(たたず)まいはベテランのそれで、この店の品がどれも質の良い物だと言うことを物語っていた。


「とりあえず二人の防具一揃いと、茜の弓矢、短剣だな」

「いい感じの、あるかなぁ?」


 期待に胸をふくらませて店に入っていった。




 ――五分後




「装備って高いんだな……」

「今の手持ちじゃ、籠手を買うだけで精一杯かも」


 さっきまで熱心に説明していた店員も、二人があまり金を持っていないようだとわかるとさりげなく去って行った。プロの動きである。


「どうするか」


 とりあえず何も買わずに出たのだが、これからどうしようか。


「もう一軒、教えてもらったお店があるよね?」

「あるな」

「そっち、行ってみる?」

「見るだけ見てみるか」


 ギルドを挟んで反対側へ向かう足取りはやや重い。




「安いな」

「安いね」


 さっきの店の十分の一どころかもっと安い。どうしてこんなに安いのか。


「中古品だからか」

「そだね」


 使い込んで所々がほつれた防具、刃が所々欠けた剣、完全に伸びきった弓……何らかの理由で手放された装備がそのまま並べられている店だった。とにかく雑多に並んだそれらの前には、真剣な顔つきで掘り出し物を探そうとする者達でごった返しており、コレはこれで繁盛しているようだ。


「とりあえずサイズだけ合えばいいよな?」

「そうね」


 サイズの合う中で色合いが近い物を選び、とりあえず防具を揃える。


「あとは短剣と弓矢」

「短剣はこれかな……」


 茜がヒョイと渡してきた短剣は、刃こぼれも無い新品同様なのだが、重心の位置がおかしい。両刃なのだから中心線に重心があるべきなのに、ズレている。ぶっちゃけ不良品だ。


「弓はこれ」


 これまた弦は張られているが、微妙にねじれている。ぶつけて(ゆが)んだのだろうか?


「ま、いいか」

「それっぽく見えればいいだけだしね」


 うなずき合って、金を払い店を出る。これで明日からの冒険者生活の準備は出来ただろうか。

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