第1部 4
「はあっふーん、姫!パラダイス姫さまあーん!ドンドンパフパフプー!ここにいらっしゃいますかあー?あれれー、いませんですねー?ドンツクドンツクドンツクドン!」
今度は誰ですか?変な歌を歌って、くるくる回って踊りながら登場したのは?頭にカボチャみたいな形のキンキらな王冠を載せて、縦じまの黄色と黒の長そでシャツ。ズボンもオレンジ色のカボチャみたいな横に膨らんでいる短パン。そして白いタイツ。靴だけは革の高そうなブーツ。うーん、格好は絵にかいたような王子様かチンドン屋ですね。ひょろりと背が高いですが金髪のロングヘヤー、顔立ちは整っていて百人中七十五人はイケメンと認定するような感じ。そして無駄に長すぎるまつ毛。もしかしてこの人が噂のマッシュ・デ・ポテト王子様?いやいやどう見ても変な人でしょう?
「オロロロンローン!姫がサウス帝国にいー、不法入国しているという情報があったから、ドンドンパフパフプー、探しに来たんですけどー!テレビでえー、絶賛放送中のアニメー『外反母趾の妖精 マジカルアンポンタン』の平安オカメちゃんみたいなカワイ子ちゃんだったら捕まえて無理やり僕のお嫁さんにしようと思ってたのにいー!ドンパフドンパフドンパフフ!不美人だったら国外追放か奴隷落ちですねー!中間だったらエッチなことをしてポイ捨てすればいいじゃないですかー!今晩のおー、舞踏会で踊った人が僕のお嫁さん候補に決まるんですよー、ポンポンポンピー!選択肢の一つとして、踊る相手を決める前に一目会っておきたかったですねー!まあほかにも美人さんがいたらそれでいいけどねー!パラッパパラッパパラッパキュー!」
うっわー、このマッシュ王子様って変な歌を歌うだけじゃなくってゲスだ!顔だけで女の価値を判断する人だ!パラダイス姫さま並みのゲスですよ!こんな人嫌ですよね!ね、姫さま?
あれ?
「なんてイケメンなんじゃ!スタイルもいかしてるのう!歌もうっとりするような素敵な音色なのじゃ!さすがサウス帝国はアパレルが沢山のおしゃれな最先端の国じゃ!クルス、決めたぞよ。わらわは今晩の舞踏会に行ってマッシュ王子さまと踊って婚約するぞよ!」
姫さまの目がハートになってる!
「姫さま、マッシュ王子様の独り言聞いてました?この人ヤバイですよ?いろいろ危ないですよ?」
「いいのじゃ。顔さえよければあとはなんとかなるのじゃ!ああ王子様、わらわは今すぐでもマッシュ王子様のお嫁さんになりに行くのじゃ!」
上手く行くわけないでしょ!こんなの絶対に破綻しますって!
ああ、ゲスで変な歌を歌うマッシュ王子様も去って行ってしまった。姫さまは相変わらずハートの目ですが。
「舞踏会に行くにしろ、行かないにしろ、この姿のままじゃ困りますね。国にも帰られませんし、わたしたちの声も人間にはキーキーとしか聞こえないようですし。姫さま、ハダカデバネズミにされるような恨みを買った覚えはありますか?だれかに呪術を掛けられた以外にないですよ?姫さま、どうされました?」
「う、な、なんでもないのじゃ・・・。わらわがハダカデバネズミの巣穴にホースで水を流し込んだから恨みを買ったなんてことはないのじゃ。ハダカデバネズミの呪いなんてことはないのじゃ・・・」
「うっわー、小学生ですか?わたくしの目を盗んでそんなことしてたなんて・・・。あの泥んこになって帰ってこられた日ですか?たしか先週でしたよね?」
「大丈夫じゃ!そもそもハダカデバネズミなんて下等な動物が呪術を使えるなんて話聞いたことがないのじゃ!水攻めで巣の中が水びだしになって迷惑しただけじゃろう?その程度でわらわをハダカデバネズミにするか?そ、それに呪いだったらクルスまでハダカデバネズミになった理由がわからないのじゃ!」
「あー、はいはい。わたくしはとばっちりだったってことですね?」
そういえば去年末に二人してウーパールーパーに変身させられたばっかりだったですね。ウーパールーパーの水槽の水をバシャバシャして迷惑かけたから呪われたんでしたっけ。この世界の動物は人間よりも呪力が強いですからね。簡単に人間に呪いを掛けちゃいますからね。またですか・・・。ああ、おととしもブロブフィッシュといってお団子みたいな魚に姿を変えられたっけ。あの時は陸の上でエラ呼吸ができなくて死ぬかと思いましたよ・・・。この人は懲りもせずまたですか・・・。