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パラダイス姫  作者: すけごろう
2/5

第1部 2

 お気づきのように、主人公は侍女のクルスです。そして宿屋の部屋の中だけで完結する舞台形式です。コントともいます。

 姫さまがわたくしにちょっかいをだしていると、いきなり部屋のドアが乱暴に開かれました!

そうして二人の男女が部屋へ突入してきました。一人は高級そうな空色のロングドレスを着たきれいで華やかな女性。もう一人は上下紺色の騎士服を着た男性。


「パラダイスはこの部屋にいるはずです!パラダイス、もう逃げられませんよ!隠れてないで出てらっしゃい!あなたがサウス帝国の王城での舞踏会に忍び込もうと、不法入国したことは判明しているのですよ!」


 この声はパラダイス姫さまのお姉さまのウエスト王国第一王女、アンジェリーナ姫さまのものです!どうしてパラダイス姫さまを追ってわざわざ隣国まで?きらびやかな水色のドレスに王女の証である王冠を頭に載せています。その恰好では目立ち過ぎじゃないですか!それではもう一人の男性は?

「パラダイス姫さまの行動パターンのプロファイリングと目撃者の証言から間違いなくこの宿屋のこの部屋に来ているはずなんですが・・・。この部屋からはパラダイス姫さまの臭い足の臭いがしますよ。それからもう一人、侍女のクルスの甘い匂いも。くんくん」


 きゃー!この男性は親衛隊のゲッツ様じゃないですか!わたくしたちを追いかけてこんな所まで!わたくしの臭いを甘いなんて!いやですわよー、うふふ!


 ゲッツ様は狼の獣人なので臭いに敏感なのです。ああ、あの牙で甘噛みしてほしい!長い舌で全身をベロベロ舐めまわしてほしい!なんてはしたないことは思っていませんからね!


ちなみにこの世界では人族、獣人族、魔族、その他いろんな種族がいるのです。動物たちも知能が高くて人族よりも賢かったりするのでいろいろ困っちゃうのです。ああ、姫様は人族ですよ。人族はなぜか貴族に多いのですが、手先が器用なだけで特に何の取柄もないとバカにされております。


「くそう、ストーカーのゲッツのヤツ。わらわの足の臭いでここまで追ってくるとは!嫌がらせで三日履いていた靴下の臭いを嗅がしたのがあだになったとは!」


 姫さま、そんなことしてたんですか!ゲッツ様に足の臭いを嗅がせるなんてことやめてくださいよ!ゲッツ様はあまりにも強烈な臭気で気絶してしまうんですから!それにゲッツ様はストーカーじゃありませんからね。ちょっとだいぶ鼻がいいので後を追跡してくるのがしつこすぎるだけなんですからね!決して性癖なんかじゃなくって、お仕事なんですからね!きっと!


「ゲッツ見なさい。ベッドの上にドレスが脱ぎ散らされていますよ。まったくあの子はなにをするにもやりっぱなしで。天真爛漫と言えば聞こえはいいですが、あの適当でいい加減で雑な頭の中お花畑パラダイスの性格はなんとかならないものでしょうかね。それにしても侍女のクルスにはお仕置きが必要ですね。パラダイスが脱ぎ散らかした服を直ぐにたたむべきあの子までが服を脱ぎ散らかして。いつの間にかパラダイスの悪い習慣に染まっていたのですね!朱に染まればシュッポッポということですね!」


ひいいー!矛先がわたしのほうへ!アンジェリーナ姫さま!わたくしはここで服をたためないサイズにさせられちゃったのです!なにとぞご容赦を!お仕置きだけはご勘弁を!ところでシュッポッポって何ですか?


「それにしても妙ですね。まるで服を脱いだというよりは服の中身がきれいに抜け落ちたかのようですわね。中の下着も着ていた形のままで。どれどれ、ああこのパラダイスが好むウサギさんのおパンツもそのままじゃないですか。脱ぎたてのようなぬくもりがまだありますね。ゲッツ、追跡のためにパラダイスのおパンツの臭いを嗅ぎますか?それともクルスのTバックのショーツの方がよいですか?」

「はあはあ、是非ともパラダイス姫さまの方で!ああっ、アンジェリーナ様お預けは止めてください!わんわん!」


 やめてくださいよ!どうしておパンツの臭いを嗅ぐ話になるんですか!まさかゲッツ様はヘンタイさんですか?わたくしよりもパラダイス姫さまの方がいいんですか?Tバックよりもウサギさんの方が好きなんですか?


「うーむ、わらわのおパンツの臭いを選択するとはヤツもドヘンタイ、いいやなかなかの通じゃな。よしわかったヤツに褒美を取らすときはおパンツにしてやるかの」

パラダイス姫さまも止めてくださいよ・・・。


それよりもせっかくアンジェリーナ姫さまたちが来られたんですから助けを求めないと!

「アンジェリーナさま!わたしたちはここです!助けてくださいー!」


「うーむ、二人とも服を脱ぎ散らかして裸のまま部屋から出て行ったということですか。部屋が荒らされていないから、強盗のような者に乱暴されたわけではなくて、自分から服を脱いでおとなしくついて行ったと。もしや自発的に裸になって往来を歩こうとしたのかもしれません!それに下着がまだほんのりと暖かいということは、まだあまり遠くまで行っていないということですね。おや?アンジェリーナ様、部屋のどこからかキーキーとネズミの声がしてきますね」


 姫さまのウサギさんおパンツに顔をスリスリしていたゲッツ様がわたしたちに気がついたみたいです!ゲッツ様、ここです、ここですよー!わたくしは必死でゲッツ様たちに大声と手を振ってアピールしました!ですが、わたくしたちの声はネズミの声にしか聞こえないようです。


「ゲッツ、ベッドの端になにか肌色のしわくちゃなハムのようなものが二つうごめいていますね。あれはなんですか?ウンコですか?」

「えーと、毛のないネズミですかね?まるで病気か何かで毛が全て抜け落ちたようですよ。可哀そうに。それにしてもやたら出っ歯でブサイクな顔をしていますね!アンジェリーナ様、感染症でも持っていると厄介です。あまり近寄られないようにしてください!」

「うむ、わかった。それにしても不憫な生き物ですね。パラダイスが見たら大喜びするでしょうに。きっとモミモミしますよ。それにしてもパラダイスはハダカでどこへ行ったんでしょうね?ストリートキングで舞踏会に行くようなヘンタイな妹に育てたつもりはなかったんですのに・・・」


 お二人はそう言い残すとお部屋から出て行ってしまわれました。

ハダカはハダカでもハダカデバネズミにされちゃったんですよー!見捨てないでくださいー!そういえばゲッツ様にハダカを見られてしまったじゃないですか!もうお嫁に行けません!ゲッツ様、責任取ってお嫁にもらってください!

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