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謎の家

 翌日、三人は出発した。ローゼンベルク家領は、サンドリヨン王国の東側にある。王都からはずっと離れているが、肥沃な土壌を持つローゼンベルク家の領地は緑が豊かだった。王都の屋敷の庭の土も、わざわざ自領から取り寄せたものを使っているほどだ。


 エリオットたちが領地の外れにある目的地に着いたときには、王都を出発してからもう何日も経っていた。馬車が着けられたのは、一軒の家の前だった。


「誰のお家?」

 長旅がやっと終わって安堵していたエルティシアだが、馬車から降りるなり、訝しげな顔になった。

   

 その家は、王都に立ち並ぶ貴族の屋敷と比べれば小さいが、ただの平民のものというには大きすぎた。凝った薔薇の装飾が施してある門や、赤い屋根が、どことなくローゼンベルクの屋敷を彷彿とさせる。外壁を珍しい色のレンガが彩り、複雑な形の木枠もつけられていた。その木枠を近くで見ると、そこにツタの彫刻が掘られていることが分かるだろう。

 

 だが庭の方は、造園の途中で職人が放り出してしまったかのような状態だった。花壇や水路は明らかに完成形とは程遠い中途半端な形をしており、地面には雑草が生い茂って、生垣らしきものからは好き勝手な方向に枝が伸びている。


「僕たちの、でしょうか」

 姉の問いかけにエリオットはそう返し、正面玄関の扉を開けて中へと入っていく。エルティシアは、今にも低木の陰からここの住民が飛び出して来て、突然の訪問者を叱責する言葉を吐くのではないかという風に、庭のあちこちを不安げに見回していたので、そんな弟の行動に仰天してしまった。


「か、勝手に入ったらまずいですよ!」

 ヘレナも慌てて止めようとしたが、「大丈夫だよ」とエリオットは返す。


「僕たちの家って言ったでしょ? さあ、入って」


 エルティシアとヘレナは顔を見合わせたが、エリオットがさっさと中へと入っていくので、仕方なさそうに後を追った。だが二人とも、自分たちは招かれざる客なのではないだろうかと内心思っているようだった。

 しかし、彼女たちの足は、玄関ホールに入ってすぐのところで止まってしまった。


 それは、屋敷が広いわりにガランとしているからでも、人が住んでいる気配がないかのように静まり返っているからでもなかった。二人の目は、正面に据えられた階段の踊り場にある、一枚の絵に釘付けになっていた。


 二人ともエリオットが促さない内から、その絵画に引き寄せられるように歩を進めた。今度は、エリオットがその後ろからついていく。

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