四人の密談
ミランダたちが品評会の結果発表会に招かれていた日、実はエリオットも王宮に来ていた。姉の婚約者のシャルル王子を上手いこと丸め込み、部屋を一つ貸してもらう許可を取り付けて、そこである三人と会っていたのだ。
一人はスミス新聞社の女社長、ユリア・フォン・スミス。二人目は宮内副大臣のハリス・フォン・ノストルダム。そして最後はクリアリー家の当主、ダニエル・フォン・クリアリーである。
三人とも、あらかじめエリオットが連絡して、今日のこの時間に会うことを約束していた相手だった。もちろん証拠を残さないように、この件はクロウの口から直接伝えさせた。まだ晩餐会が始まる前というだけでなく、会場には大勢の招待客がいるので、三人が一時的にいなくなっても、誰も気が付く者などいなかった。
――単刀直入に言います。これから皆さんには、ミランダさんとアイリスさんを陥れる手伝いをしてもらいたいのです。
三人が集まると、出し抜けにエリオットは口を開いた。あまりに率直な物言いに、三者三様の反応が返ってきた。
――あー、エリオット君?
ハリスは目をパチパチさせた。
――あの人たちは、君のお母さんと叔母さんでしょう? どうして陥れたりなんてするの?
――まあ、ノストルダムさん。あなたって、随分世間のことに疎いんですね。
ユリアが眉をひそめた。
――この子もそのお姉さんも、あの二人に虐待されているんですよ。少なくとも社交界の皆さんは、蔭でそう噂をしています。うちの新聞でも、いつか取り上げようと思っているんですけどね……。
ハリスが痛ましそうな目を向けてくる一方で、ユリアは恍惚とした表情になった。きっと、その記事は、素晴らしい売り上げを記録すると確信しているのだろう。しかし、とりあえず今はいつか出す記事よりも、目の前のスクープの方に関心を向けることにしたらしい。新鮮なゴシップの匂いを嗅ぎつけたユリアは、エリオットの方に身を乗り出した。
――それで、何か計画はあるんですか? 地味なのはダメですよ。うんと刺激的でないと。
――勝手に話を進めるな。
ダニエルがユリアを制した。