漫才【結婚】
ボケ=A(エー/小太り)
ツッコミ=B(ビー/細身)
A/B「よろしくお願いしますー」
A「俺さビーくん、思うのよ」 B「どうしたの急に」
A「誰もいない家に帰ってさ、安っすい発泡酒片手にコンビニの弁当食う。そんな生活は寂しすぎるって」
B「僕は平気ですけどね、全然」
A「かぁ~、これだもの。例えばよ? 家帰って可愛い奥さんが『先にごはん食べよ?』なんつってテーブルには2組分の茶碗とかが置いてあったらよ? もう疲れとか吹っ飛ぶと思わない?」
B「僕まずお風呂入りたいんで、別にそんなかな」
A「じゃあお風呂の後でいいよ。『今日どんなことしたの?』そんな話をしながらさ、奥さんの手料理に舌鼓、どうよこれ」
B「どんなことって、それエーくんと楽屋で話してるしなぁ。それに最近はコンビニの総菜も美味いですからね」
A「寝るときによ? こっちは先に横になってて、向こうは化粧水だなんだでちょっと寝室に来るのが遅くなる。そんで俺は寝てると思った奥さんが『今日もごくろうさま』で額にちゅ、ほらもう結婚したいよね」
B「僕寝るときには完璧に綺麗な状態でいたいんで、奥さんだろうが額に触れないで欲しいんですけど」
A「はぁ~っ!? え、はぁ~っ!?(混乱)」
B「いや僕に軽く潔癖のきらいがあるの知ってるでしょ」
A「お前絶っっ対結婚できないね!」
B「脇に汗染み作ったデブに言われてもね」
A「僕は結婚したいですよ。でもね、出会いがない」
B「気になる子とかもいないの?」
A「いてもどう話しかけたらいいのか分かんない。いない歴×年齢だから」
B「お前幾つだよ」
B「アプローチね。じゃ、ここにエーくんの気になるあの子がいるとして」
A「気づいてくれるまでミサイル打つかなぁ」
B「北の将軍かお前」
A「あっ、サイフを落とす!」 B「またベタだね」
A(立っているビーの前に、サイフを落とす)
B(エーが行ったのを確認し、中身を抜き取って立ち去る)
A「あのっすいません! そのお金あげるんで付き合ってくださいッ!」
B「結構入ってんなと思ったらこれ全部割引券じゃねえか」
A「出会いがないね。もういっそいいね嫁でもいたらよかったのに」
B「SNS受けでもいいのかな。許嫁ね」
A「いないかなぁ、美人で料理上手で資産家の父を持ち母親もギリ抱ける子」
B「つまり美人のヒモになって熟女にも手を出したいって? お前バーカ!」
A「ビーくん、俺は真面目に言っているんだよ?(真)」
B「気持ちが悪いよ」
A「よく合コンとか聞くけどさ、本当まったくないよね」
B「そうでも……」
A「はっ!? あるの? いつ? 俺も連れてって!」
B「いや誘われたことは何度かあるけど、僕そういうの行かないし……」
A「出たホントは行きたいのに『俺いいよ』とか言って駆け引き奴~」
A「そんで『あ、そう、じゃあいいや』って言われてから後悔奴~」
A「その夜『俺も行ってればこんな未来もあったのかな』夢想奴~」
A「奴~」
B「やかましいよ」
B「っていうか僕とエーくんじゃ、その、役割が違うっていうか」
A「誰がブサイクの数合わせだってんだッ!?」
B「おお立場を弁えている」
A「やっぱ運命的な出会い、これよね。そこで二人に立ちふさがる壁。こういうのがあってこそよ」
B「じゃあ出会う場所は?」 A「そうね~、病院なんてどう」
B「あ、不治の病的な?」 A「いや何言ってんの名前はまだ早いよ(照)」
B「藤野谷麻衣じゃねえよ。ふじのやまい! なおらないびょうき!」
A「あ、だ……、何だよもー! でも、うん、いいよ、藤野谷麻衣さん、か」
B「遠くを見るな。何いいよ、って実在もしないのに」
A『麻衣、車いすで廊下を移動。その顔には元気がない』
B「何か始まりましたよ」
A『それもそうだろう。家族は懸命に隠してはいるが、とうに麻衣は知っているのだ。自分の病が、決して治るものではないことを……』
B「悲しいですね」
A『しかしA男と出会い、麻衣は見違えるように変化した。二人が結ばれるのは、まだ、もう少し先の話である――』
B「それドラマ化してみ。クソだから」
A「でもいざ結婚となるとやることが多くてね、大変ですよ」
B「そうね、両親に挨拶行って結婚式して。そういうのも嫌だね僕は」
A「あー、それならお義父さん役やってくれる?」 B「頼み方が雑」
A『ここが麻衣さんの家か……、ピンポーン』
B『はいはい……、ん、何だね君は――ははぁ』
A『あ、どうも初めまして……』
B『フン、もしや君が娘――麻衣の言っていたA男か。何の用だ』
A『ハッ、貴方が彼女――麻衣さんの言っていたみきおか。入り用だ』
B「破談だよ! 対抗しなくていいから」
A『単刀直入に申し上げます! お嬢さんを僕にくださいっ!』
B『……やはりな。そういうことにもなろう……』
A『お、お義父さん……っ!?』
B『麻衣は近頃よく笑うようになったよ。聞けばある男が毎日見舞いに来ると言うではないか。もちろん私と妻は不審に思った。麻衣はあれでかなりの器量良しだ。見た目だけにつられた愚かな男が麻衣を誑かしているのでは、とな』
A『ぼ、僕は別にそんな――!』
B『彼は娘の病気を知っても一切態度を変えなかった。それが一番嬉しかったと娘は言っていたよ。そしていつしか彼が来るのを心待ちにしていた、ともな。ここにきて私たち夫婦は、彼を信じてもいいのではないかと、そう、思い始めていた』
A『お、お義父さん……』
B『A男くん……。君は娘を――麻衣を幸せにできるか?』
A『……無理、ですね』 B『んっ? A男くん?』
A『よく考えたら重すぎて僕の手に負えないというか……』
B『んっ? ん? いやもう、うん、完全に『幸せにします』の流れ――』
A『それじゃ失礼しました。麻衣さんのお父さん』
B『A男くーんッ! 麻ァー衣ッ!』
A/B「………………………………」
A「……まぁ、どっちも悪いとこあったよね」
B「いや、これは僕だ。ごめん。何か調子乗って役に入り過ぎた」
A「あ、分かってんだ?」 B「お前ふざけんな」
A「もうこうなったらね、婚活サイトに登録しようと思う(スマホ)」
B「マッチングってやつ? でもああいうのサクラとかいるんじゃない?」
A「やる前からそんなこと言ってたら、何もできないよ? って幼馴染に励まされたい」
B「何を言っているんでしょうか」
A「ここにしようかな。累計成婚数5万超だし。どう?」
B「ふーん、なかなかおしゃれだし運営もちゃんとしてそうじゃない。エーくんプロフィール作成だって」
A「あ、じゃあ俺答えるからビーくん聞いてよ」
B「まず、ニックネーム」
A「う~ん、ジョニーかデップで」
B「んなもんデップ一択じゃねえか」
B「年齢と居住地はいいよね……24で東京都と。職業フリーターで年収は――」
A「2千万くらいかな」 B「2百万と」
B「学歴は大卒で……エーくん身長いくつ?」
A「180ないくらい」 B「169センチと」
B「最後、体形! やせ・やややせ・ふつう・ややぽっちゃり・ぽっちゃり」
A「ふつう?」 B「ぽっちゃり。はい、できた!」
ニックネーム【デップさん】
年齢 【24歳】
居住地 【東京都】
職業 【フリーター】
年収 【200万】
最終学歴 【大卒】
身長 【169cm】
体形 【ぽっちゃり】
A「だめだめこれ! ぽっちゃりとデップさんが強すぎるよ!」
B「いやでもジョニーさんでも地雷臭半端ないからね!」
A「俺決めましたビーくん!」 B「何をですか」
A「まず痩せることにします!」
A/B「どうもありがとうございました」
(*^◯^*)明日からCSなんだ!