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定時退社の男  作者: 三箱
9/23

「カレーライス」

 ある日。

 会社の同い年の先輩が車を運転する中、助手席に座っていた私。

 そういやカレーのルーが余っているなとふと頭を過った。そしてしばらくして、ラジオで聴いたせいかパンって家で作れるのかという話になった。

 どうなんだろう。案外簡単にできるのではないかとか、時間がかかるとか話をしていた。


「パンって発酵するとかなんとかで時間がかかったような」


 私はおぼろげな知識を出してみる。


「え。そうなん? あー。何か菌とかあったよな。なんだっけ」

「えっと確かイースター菌とか」

「へえー」

「それ、イースト菌では?」


 ふと後ろから、耐えかねたようにツッコミを入れてきた後ろに座っていた会社の後輩。苦笑いしているのが声でわかる。


「あっ。ホンマや。イースターってモアイやん」

「ちょっ」


 私が訂正に気がついて自分にツッコミを入れると、運転していた彼がプッと吹き出した。

 笑いにはできたけど、自分の知識がいかに曖昧なのかわかった。


 という一幕があった後。

 今日はカレーライスを作ろうかと思った。

 流れが全く違うけど、残り物は早く消費しないといけない。

 早速冷蔵庫に残っている玉ねぎ一玉と人参を一本取り出し、常温で保存したジャガイモを二個をまな板の上に置く。と、その前に私は炊飯器に向かってピッとボタンを押す。

 だいたい作り始めのタイミングで炊き始めると、完成の時に出来上がる。

 再び戻りまな板の上にある野菜を捌いていく。

 人参とジャガイモはピーラーで皮をむく、そして人参は乱切りにし、ジャガイモは一個を四等分の計八個にする。

 玉ねぎはいつも半分だけ使う。半分を斜めに包丁を入れていき、八等分にする。

 ボールに刻んだ野菜を入れると、次に鶏肉を取り出して一口大の大きさに切っていく。

 材料は完成。

 そしてフライパンと鍋を用意する。

 フライパンに火をかけて、油を適量垂らす。そして肉から焼く。

 ジューッと油と肉のメロディーが流れる。黒ヘラを使って適当に炒めていく。そして肉の赤色が消えた辺りで野菜をザッと全部入れる。

 人参とか日が通りにくい固いものから入れるらしいが、そんなのめんどくさいので、全部入れて全部焼く。

 ヘラとフライパンを駆使して炒めていく。

 いい感じに焼き上がったら、鍋に具材をドサッと投入する。

 そして水の分量を、カレーのルーの箱の裏面を見て確認して鍋にドボドボと注ぎ、火をつけて蓋をする。

 そしてあとは待つのみ……。

 ではなくてアク取りを忘れてはいけない。 

 グツグツと沸騰した辺りで蓋を開き、白く浮いているアクを網杓子ですくって捨てる。これを数回繰り返して暫く待つ。いい煮込み具合になったところで……。


 ピー。ピー。ピー。


 炊飯器の音が鳴ってしまった。

 ガクッと首を曲げる私、ドンピシャでいきたかったのにと些細な部分で軽く落ち込むのであった。

 気を取り直して、最後の行程、一旦火を止めてルーを細かく割って入れる。そして弱火にして混ぜるのだが……。

 隠し味を加えたいな。

 変な欲が出る。

 お玉で混ぜながら考えると、ピンと閃く音が鳴った。冷蔵庫をガバッと空けて、大きめの容器に入っているあれを取り出す。

 味噌である。

 それを大さじ1ぐらいルーの中に放り込み、そして混ぜるのであった。

 数分混ぜ続けたところで完成である。

 大皿を取りだし、炊き上がった米を皿半分にのせ、残り半分にルーをかけて、スプーンと一緒にテーブルに置く。あとは冷蔵庫に置いている「なたまめ茶」をコップに注ぎ、準備完了。

 カレーとお茶というサイコーの組み合わせである。

 手をあわせて。


「いただきます」


 スプーンをカレーに突っ込みルーとご飯を半々になるようにすくうとそのままパクっと食べる。

 カレーの沸き立つ香り、舌を少し叩くような辛さ、その辛さを包むように和らげてくれる米、ホワッと柔らかく砕ける人参とジャガイモに、ツルッと甘味をくれる玉ねぎに、柔らかな脂身の鶏肉。味の音頭が口の中を充満し、仄かな熱だけを残してすっと喉の奥を通り抜ける。


「うめえー」


 バクバクとスプーンを止めずに食べていく。

 そして熱く辛さが中だるみしたところで、コップのお茶をぐいっと飲む。

 口の中が洗われていく。そしてカレーをたべる。


「うめえ」


 満足であった。

 そして二杯目に突入しようとした時、ピタッと手を止める。

 あれ。味噌の味したかな。

 隠し味をすっかり忘れていたので、今度は気を付けて食べてみる。

 ルーだけをパクっと食べてみて、舌でなぞるように味を確かめる。


「うーん。全くわからん」


 私の舌はそこまで敏感でなかったようだ。

 まあ隠し味だし。と細かいことは気にしなかったのであった。

 そして気にせずカレーを食べるそしてお茶を飲む。


「プハー」


 豪快にコップをテーブルの上に置いて、再度お茶を入れる。

 カレーにはお茶であった。


 今日ははお茶を飲まずには入られない。

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