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定時退社の男  作者: 三箱
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「アジのなめろう」(後編)

 アジのなめろうに挑戦する私。頭を切り取りに苦戦するも何とか強引にごり押した。果たして無事魚を捌けるのだろうか。


 次の行程。


 はらわたを出すらしい。


 腹に包丁を差し込んで尻の方に向かって切れ目を入れていくらしい。とりあえずやってみると、案外綺麗に刃が入ったからこれは何となくいけたと思った。

 だけど中から出した白いものにちょっとだけぎょっとした。

 魚の内臓ってこんなのなのか。何とも言えない気持ちのまま、速攻で内臓を新聞に包み、ポイっと生ごみ入れに突っ込んだ。


 次に二枚おろしにしてから、三枚おろしにするそうだ。


 えええ。一気に三枚おろしにできないのかと思ったが、冷静に考えたら二枚におろしてからでないと三枚にはおろせないよな。と純粋なる物理的法則を認識すると、静かに読みながらおろし始めた。

 背側から真ん中の骨あたりまで包丁を入れて頭の方までスライドさせて開く。今度は、腹側から差し込んで同様に開く。そして最後に骨の上をスライドさせながら切り離す。

 すっと包丁が外に抜けた、そして上の部分が綺麗に取れたのである。


「おお」


 意外とできるものだなと、少しだけ高揚感に浸りながら、もう一枚おろしにかかった。逆側を二枚おろしの時と同じようにしたら簡単におろせたのであった。


「おお!」


 三枚におろした魚を眺めて感動する。

 次。

 腹骨を取り出すらしい。


「腹骨どこ?」


 また画像とにらめっこするが、全くわからん。アジの身が全体的に同じようなピンク色しているから、わかりづらい。

 腹骨だから、腹の辺りだったよなと、探していると凹んでいるように見える薄い骨があった。

 分かりにくいと突っ込みつつも、何とか取れた。


 次に小骨を抜くらしい。


「こぼね?」


 スマホンのサイトの指示通りに小骨を探す。身の真ん中あたりに手を当てると確かに骨の感触がある。

 それを手で抜いてみるが、するっと指先から骨が抜ける。「えーっ」と思いつつ苦戦しつつ何とか粘って抜いていくけど、取れない。

 めんどくさくなった私は包丁で切れ込みを入れて、またしても強引に取り除いたのであった。

 最後に皮を剥ぐらしい。

 これはまだ簡単そうだ。皮をむけばいいんだな。

 私は何のためらいもなく魚の皮を右手で掴み、左手で身を抑えながらグイっと上に引っ張った。

 グニッ。


「あ!」


 そう。皮だけが綺麗に取れると思っていた。でもそんなことはなく、魚の身ごと皮を剥いだのであった。 身がボロボロになったのであった。

 いやまだもう一枚は生きている。これはミスすることはない。

 そう言い聞かせて再度挑戦する。

 グニッ。


「ああああああああ!」


 人生そう簡単に行くものではないと思ったのであった。


 傷心しつつも、今回は身を刻む料理なので、皮に引っ付いた身は包丁で剥いでなんとか身を取り出した。そして身を包丁で叩くように刻んでいった。

 次にネギ、生姜をみじん切りして加えてアジと混ぜていく、そして最後に醤油と味噌をかけて混ぜて具は完成。

 小鉢を用意し、そこに大葉を敷き、上から出来上がった具をのせてアジのなめろうは完成したのであった。

 おっとワサビを横に付け足す。

 ご飯を用意しようとしたら、冷凍室から出し忘れていたので、レンジで温める。

 待っている間、とりあえず……。待てずに実食した。

 箸を持ち、なめろうの上の部分を箸で摘まむ。そしてパクっと一口。


「んー」


 アジの少しプリっとした食感。ネギと醤油と生姜が混ざり味が口の中で踊る。

 また一口。また一口と食べ続ける。


「旨い。旨い」


 ご飯を温めていることを忘れ、バクバクと食べ続けていた。そしてあっという間に完食した。


「チーン!」


 レンジの音が鳴った。

 米を食べる前になめろうを食べきってしまった。

 うーん。今度はもう少し段取りよくしようと思った。

 料理の立ち回りも日々の訓練。


 この失敗を忘れないためにも、今日も飲まずにはやってられない。 

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