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定時退社の男  作者: 三箱
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「アジのなめろう」(前編)

少し長くなりましたので。今回は二話に分けました。

「むむ」


 私は今、新聞の上にある一本のアジとにらめっこしていた。

 理由はそう。人生で初めて魚を捌くから緊張しているのである。

 何故急にそんなことをすることになったのか、会社の同僚との会話した時である。サバの照り焼きをした話をすると、「アジのなめろうも旨いぞ」と言ったのである。

 それはたぶんまだ食べたことないなと、最近料理に凝り始めたので丁度いいなと思った結果、こうなったのである。

 話を聞いた数日後、食材を買いにスーパーにダッシュした。

 魚コーナーに行って、アジを二百円強で買い、生姜、ネギ、ニンニク、と籠に入れていく。そして下に敷く青じそを買おうとしたとき、ぴたっと足を止めた。


「青じそってどこ?」


 そもそも買わないから、どこにあるのか見当もつかない。しそって葉っぱだよな。だから野菜コーナーでいいのか。いや違う場所にあるのか。しばらく考えて、とりあえず野菜コーナーに戻る。自分のスマホンで青じその画像を確認しつつ野菜コーナーにあるものを睨みながら探し回る。なかなか見つからない。店員に訊けばいいのではないかと思ったけど、なんか負けた気がするからギリギリまで頼らない。しばらくの間どこどこと呟きながら歩き回っていた。

 するとある場所でぴたっと足を止める。

 青じそとそっくりなものを見つけた。

 ただしそっくりなものである。どうしてか。それは名前が違ったからである

 そう。大葉である。

 すかさずスマホンで調べる。青じそと大葉の違い。シソ科がどうかとか……。うーん。よくわからん。よくわからんけど同じとかどうとか……。

 ええい。買ってしまえ。

 大葉を掴んで籠に放り込んだのである。

 適当すぎる主人公であった。


 そして今に至る。

 スマホンを近くに置いて魚の捌き方についてのサイトを開き準備をして、私は包丁を手に取った。ちなみに魚用でも何でもない普通の包丁である。若干切れるか心配に思いつつも、私は包丁を動かした。


 まずは鱗取りだそうだ。


 包丁の先を使って頭から尾に向かって擦る様に鱗を取っていく。最初は身を傷つけるのではないかとちょこちょこやっていたが、案外アジは固くゴリゴリやっても全然切れる気配がなかったので、結構強めに擦った。そこそことれたので次に移る。


 せいごを取るそうだ。


「せいごってなんぞや」と言いながら、画像を確認する。尾の方から浮いている骨のような部分であった。「へえー」と納得しつつ、それを包丁の先の部分を入れてそぎ取る。意外と簡単に刃は入り取れたのであった。

 次に頭を切り落とす。

 胸びれの付け根のところに包丁を置いて、頭に向かって斜めに入れていくそうだが……。


「か、か、固い!」


 半分ぐらい刺さったところで、なんか骨か何なのか知らないけど、固い箇所に引っかかって切れない。力を入れ過ぎると指を切りそうだからあんまりしたくないし、だったら逆か。

 ということでひっくり返してから同様に刃を入れていくが同じ所で、包丁が止まってしまう。


「固い!」


 ぐりぐりと包丁を動かすが、動かない。

 埒が明かず痺れを切らした私は、もう強引に包丁を縦にしてアジの頭をぶった切った。ふーっと額の汗をぬぐう私。

 もうただのごり押しであった。

 若干の肝か内臓かわからない赤色の塊みたいなのが残ったが、もう気にすることもせず、何とか次に進むのであった。


 つづく。

 

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