表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
定時退社の男  作者: 三箱
3/23

「じゃがバター」

 スーパー。

 今日は何を買いに来たかというと、じゃがいもである。 

 今回のきっかけは旬の食べ物が何かという会話を会社の同僚と先輩と話したときにジャガイモが旬だったことと、私が見かけたジャガイモの商品名を思い出そうとしたとき。


「この前。店舗の前にじゃがいもあったっすよ。名前は確か……。えっと何クイーンでしたっけ?」

「『メークイン』だろうが! クインまで出てんのに。そこでないのか」


 と変な天然ボケをしてしまったところに先輩にツッコミ入れられたのもあって、買うことにしたのである。

 理由がかなり変なのは置いといて。

 ということで「メークイン」を買おうと思ってスーパーをフラッと回る。入って十秒で野菜コーナーに到着し「メークイン」を探すのだが……。


「あれ。ないな」


 いつも通り、当初の予定の物をすんなりと見つけられない私である。てくてくと籠を腕にかけて歩き回っていると、ぴたっと足を止めた。


「男爵芋」


 メークインのスマートな響きとは違うがっしりとした男っぽい響き。なんかいいな。ジャガイモも雰囲気的にごつごつしている感じだし。

 とまあ、当初の目的を完全無視して「男爵芋」を買うことにしたのである。単純な話、探すのが面倒になって妥協した私であった。

 そして次にバターを探す。

 バターはほぼ迷わず見つけられたので、小分けされた八個入りのバターを買った。


 家に帰ると、早速スマホンを取り出して調べる。

 あんまり時間をかけたくないので、ささっとできそうなのを見つけた。

 ジャガイモを一つ取り出し、ピーラーで手早く皮をむいていく。そして芽を包丁の角でえぐり取っていった。

 次にジャガイモをラップで包み、レンジに入れて温める。

 チンという音を聞いて、さっとレンジを開いて、じゃがいもをのラップをあけると、もこもこと上がる湯気にジャガイモのホクホクとした匂いが鼻をくすぐる。

 いい香りである。

 すぐにでも調理したいが、熱いので少し冷めるまで待つ。

 そして丁度良くなったと思ったら、じゃがいもを半分に包丁で切り分ける。そして上から塩と胡椒をふりかけ、バターを一つ二つの真ん中にのせる。

 少しずつバターがとろけ、じゃがいもを伝うように流れる。

 バターとジャガイモの香りが同時に私の嗅覚を攻め立てた。

 これはもう旨いとしか思えない。

 私はジャガイモを手でつかみ、がぶりと一かじりする。

 ジャガイモのホクホクする暖かさとバターの滑らかさと、胡椒の味が口の中に広がる。すぐさま二口目をかぶりつく。

 少し荒っぽい食べ方だ。でもそれがいい。一人で食べるのだから多少荒くてもいい。旨いのだから。


 飯が旨い日も飲まずにはやってられない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ