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定時退社の男  作者: 三箱
19/23

「目玉焼き」

 卵……。

 昔割るのに苦戦した記憶がある。

 子供の頃何回もグシャッと割って、何個卵を無駄にしたかは覚えていない。

 だけど今はもうそんなことはない。

 料理で卵を割るのは大丈夫である。

 今日も卵かけご飯用に卵を割る。


 コン。ガン。


「……あああああああああああああ!」


 一人部屋で悲痛の叫びが木霊したのであった。

 

「黄身が……。黄身があああ!」


 力を込めすぎで黄身だけが下に飛び出し、破裂して飛び散ったのであった。

 膝をガクッとついて、崩れ落ちる私であった。



 数日後。


 そんなことがあった中、懲りずに卵を買った私。

 若干のトラウマを持ちつつ、パックを開けた。

 ちなみに今日の料理は目玉焼きである。

 前に作ったのはいつだろう?

 少なくとも半年は作ってないはずだ。

 まあ。そんなことはどうでもいいか。


 フライパンをコンロにのせて火をかける。

 弱火にして、上からサラダ油を少量垂らす。頃合いで暖かくなったら卵を割る……。


「ふう」


 大きく深呼吸して気持ちを落ち着かせる。

 卵を割るだけで緊張するとか大袈裟だな。と自虐しながらもとりあえず割る。


 コンコン。パカッ。ジュワー。


 今回は黄身を外にぶちまけることなく、無事フライパンの上に卵をのせることができ、焼き音をしっかり聞くことができた。

 ほっと安堵の息を吐いた。

 あとは蓋をして待つだけだな。


 五分後。


 黄身が薄い黄色になりかけていた。

 私の好きな焼き加減は、半熟と丸焼きの中間。ちょうどそのタイミングだった。

「ドンピシャ!」と言いながらすぐに蓋を開けた。


 ジュワ~。


 いい焼き音が聞こえた。そして……。


 ボワッ。


 火が50cmほど上がったのだった!

 メラメラと伸びる炎。料理人がフライパンにワインか何かを入れた時にできるみたいな炎が突然あがったのだった。

 そして数秒してヒュッと消えた。

 私は息をするのすら忘れ茫然としていた。

 そして我にかえると、コンロの火をカチッと切りながら、へなへなと床に跪いた。


 目玉焼きってこんなに心臓に悪かったっけ。


 私は胸に手を当てて大きく呼吸をしたのであった。


 そして精神が疲弊した状態での夕食。

 目玉焼きとご飯、そして先に焼いたベーコン。何か朝食だな。

 何か悲しくなりつつも、手を合わせる。


「いただきます」


 ご飯をパクリと食べ、そのあと目玉焼きをパクッと一口。


「おー」


 黄身を確認すると、半熟と丸焼きの中間、明るいオレンジ色になっていた。

 とろけすぎず固くなりすぎない、丁度いい食間。これは上手くいったなと満足しながら食べた。

 ベーコンもご飯も進み、結局五分足らずで完食した。

 料理は苦戦したが、出来はよかったから、今日はプラスマイナスゼロだな。

 まあ、もうちょっと何事なく料理をしたいなとも思った。


 今日も飲まずにはやってられない。   

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